「姉さん、準備できた?」
「将汰はどうなの?」
「もう出来てるよ」
マンションの一室。
朝ごはんを食べ終え、急いで準備をする声が聞こえる。
一人は学校指定の制服を身に付け、もう一人はスーツを着ていた。
高校生と社会人の姉弟といったところだろう。
「じゃあ、俺先に行くから。行ってきます!」
「はーい。いってらっしゃーい」
学校に向かう弟を見送った後――――
「――――よかった。将汰、元気がもどって………」
――――そう優しく微笑んでいた。
「おーい! お一人さん!」
「ん?」
自分を呼ぶ声が聞こえ、振り返ると三人の少女が近付いて来ていた。
「こんな可愛い女の子が居るのに一人で先に行くとか、変わった奴だね~」
「朝少し早く家を出ただけだっつーの。後、本当に可愛い奴は自分のことを可愛いなんて言わねぇ。おはよ、まどか、杏子」
「おはよう、将汰君」
「よっす」
呼び掛けられた少年、桜庭将汰は軽くあしらい、声をかけると、大人しそうな雰囲気のピンク色の髪の少女、鹿目まどかと活発そうな長い髪を後ろで束ねた赤い髪の少女 、佐倉杏子が返す。
「ちょっと! さやかちゃんには何の挨拶もないの!」
「はいはい、おはようおはよう」
文句を言ってくる青い髪の少女、美樹さやかにも軽く挨拶をする。
すると、杏子がニコニコしながら将汰に声をかける。
「なぁなぁ、将汰。宿題やってきたか?」
「そりゃ、やってきたけど。それがどうかしたか?」
「見せてくれ」
「ダメ」
「見せてくれ♪」
「音符付けてもダメ」
どんなことを聞いてくるか大体分かっていたのですぐに断る。
「なんだよ~。まどかもダメって言うしさ~。なぁ、頼むよ。少しだけ! な?」
「コォラァーーーッ!! 毎度毎度宿題忘れてッ! 私だって面倒くさいけどちゃんとやってるんだからアンタもちゃんとやりなさいっつーの!」
「そもそもビートライダーズと学業の両立が無理だったんだよ。あ~あ、やっぱりダンスと歌を熱心にやったら宿題を忘れてもしょうがねぇよな~」
「アンタはただ宿題をするのが面倒なだけでしょうが!」
わざとらしい困り顔を作りながら逃げる杏子と右手に握りこぶしを作り、怒り顔で追いかけるさやか。
そんな二人のやり取りを将汰とまどかは苦笑いしながら見ていた。
「……あいつ等仲良いな」
「ははは……」
「皆さん、おはようございます」
「おはよう、仁美」
教室に入るとクラスメートの志筑仁美が挨拶してきたのでさやかが反応する。
「どうしましたさやかさん? なにやら少しお疲れの様ですが…」
「いやぁ…ちょっとね。杏子と一悶着あって…」
「まぁ、相変わらず仲がよろしいですね」
「仲良くないッ!」
仁美に言われて否定するさやかだが、むきになっているのが逆効果なんだよ、と思う将汰だった。
「そういえば今日変な夢見たんだ」
ふと何かを思い出したかのようにまどかが言った。
「変な夢? どんな?」
「う~ん、なんだったっけ…」
キーンコーンカーンコーン
思い出そうとするまどかだったが、チャイムが鳴り慌てて席に着く。
「みなさん、おはようございます!」
チャイムが終わると担任の早乙女和子が怒り顔で入ってくる。
クラスの大半が何事かと思ったが、何人かの人物はすぐに分かった。
「今日はみなさんに大事なお話があります! 心して聞くように! 目玉焼きとは固焼きですか! それとも半熟ですか! はい、中沢君!」
ビシィッ! と棒で指される中沢君。
「えっ!? えっと…ど、どっちでもいいんじゃないかと…」
「その通り! どっちでもよろしい! たかが玉子の焼き加減で女の魅力が決まると思ったら大間違いです!! 女子のみなさんはくれぐれも半熟じゃなきゃ食べられないとか抜かす男とは交際しないようにッ!」
「ダメだったか…」
「ダメだったんだね…」
早乙女先生には付き合っている男がいた。そろそろ3ヶ月になるがここからが分からないとまどかは母親から聞いていたが母親の予感が当たったということだろう。
全部言い終えたのか、早乙女がふぅ、と言った後、笑顔で顔を上げた。
「はい! 後、それから今日はみなさんに転校生を紹介します」
「そっちが後回しかよ…」
「じゃあ、暁美さん、いらっしゃい」
教室のドアが開き、一人の女子が入ってくる。
瞬間、教室の雰囲気が変わった。
流れるような長い黒い髪。力強い印象を受ける黒い瞳。綺麗という言葉が似合う少女だった。
「うわぁ…すげー美人…」
「……」
まどかは違和感を感じていた。
初対面のはずなのに、どこかで会ったことがあるような、そんな感覚だった。
「はい。それじゃ自己紹介いってみよう」
「暁美ほむらです。よろしくお願いします」
「? 続けて?」
先生が先を促すように言うと、ほむらはペンを手に取り、先生がホワイトボードに書いていた自分の名前の続きを書くと軽くお辞儀をした。
みんなはそれを見ると呆気にとられながらも拍手を送る。
「「…え?」」
一瞬、ほむらがこちらを見たような気がした将汰とまどかだった。
「ねぇ、まどか。あの子知り合い? 何かさっき思いっきりガン飛ばされてなかった?」
「いや…えっとぉ…」
ほむらがまどかを見たような気がするさやかはまどかに聞いてみる。
そのほむらはというと転校生の宿命とも言うべき質問攻めにあっていた。
「ごめんなさい。なんだか緊張しすぎたみたいで…ちょっと気分が…保健室に行かせてもらえるかしら?」
「あっ、じゃあ私が案内してあげる」
「私も行く行く!」
「いいえ。お構いなく。係りの人にお願いしますから」
そういうと、ほむらはこのクラスの保険係、まどかの下に来る。
「あっ…」
「鹿目まどかさん、あなたがこのクラスの保険係よね?」
「え? えと…あの…」
「連れて行ってもらえる? 保健室」
言葉にできない圧力を受けながらまどかはほむらと共に教室から出て行く。
ふと、将汰は疑問に思った。
「あれ? なんで案内するまどかが後ろなんだ…?」
まどかは困惑していた。
案内してほしいと言われて付いてきたがまるで“最初から知っていた”かの様に前を行くほむらに。
「あ、暁美さん…」
「ッ…ほむらでいいわ」
「ほむらちゃん…?」
「何かしら?」
「あ、えっと…その…変わった名前だよね?」
「……」
「あ、いや…だから、へ、変な意味じゃなくてね! そ、その…かっこいいな~なんて――――」
「ッ…鹿目まどか」
いきなり振り返ったかと思うと真剣な表情で問いかけてくる。
「あなたは自分の人生を尊いと思う?」
「家族や友達を大切にしている?」
「え――えっと…私は、た、大切だよ! 家族も友達のみんなも――大好きで、とっても大事な人たちだよ!」
「本当に?」
「本当だよ! 嘘な訳ないよ…」
「…そう。もしそれが本当なら、今とは違う自分になろうだなんて絶対に思わないことね。さもなければ―――――全てを失うことになる」
「……」
「あなたは鹿目まどかのままでいればいい。今まで通り、これからも――――」
それだけ言うと、ほむらは踵を返して行った。
後に残ったのは状況をうまく飲み込めないまどかと静寂だけだった。
第2話いかがだったでしょうか。
3月にはアーマードライダーのロックシードが、4月には鎧武の外伝のDVDが届く予定です。すごく楽しみです。
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