仮面ライダー鎧武 アナザーストーリー   作:佐々木 空

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復活のオンステージ

チーム鎧武の新たなアーマードライダー、龍玄とチームインヴィットとのインベスゲームで龍玄の活躍によって勝利を収めた翌日、チーム鎧武のメンバーたちはガレージにて自分たちが置かれている現状と着々と勢力を広げていっているバロン連合について話し合っていた。

 

「まず、今の僕たちの現状を説明するね?」

 

「うん、分かりやすく頼むよ?」

 

「大丈夫ですよ、さやかさん」

 

ホワイトボードには今の勢力図を表した組み合わせが用意されている。

 

「今バロン連合の傘下に収まっているのは『レイドワイルド』と『インヴィット』、それに『POP UP』。後、昨日の内に『蒼天』と『レッドホット』が加わって、分かっているだけでも五つのチームがバロンの下に集まっている」

 

そう言いながら、ホワイトボードに置かれているバロンのスペースに他のチームの名前を移動させてゆく。

 

「じゃあ、市内のビートライダーズの半分以上がバロンと手を組んだってこと?」

 

「うん。今までは何処もお互いのチームを牽制し合っていたおかげで比較的争いも少なかったけどこれからはそうもいかない」

 

「何で?」

 

「敵味方がはっきりしたからだよ。何処を襲えばいいのか、誰と共闘すればいいのか分かったからね。これからは衝突の頻度も一気に多くなっていく……」

 

「もうさ、いっそのこと私たちも連合に入ったら何処とも戦わなくてもいいんじゃないの?」

 

「そうだよ!」

 

「いや、それは止めたほうがいい。バロンの連合に入ったチームはダンスの上手い人が引き抜かれてバロンのバックで踊ることになる」

 

なるべく危険が少ない方法をメンバーのラットが提案するが、光実の言葉ですぐにそれが出来ないと知り顔を暗くする。

 

いや、彼だけではない。

 

他のメンバーもなんとなく分かっていた。結局、自分たちの居場所を守るためにはインベスゲームで勝つしかないのだと。

 

「今の僕たちには厳しいかもしれない。けど、今の僕たちには戦極ドライバーにインヴィットとのインベスゲームで手に入れたこのクラスAのロックシードがある」

 

そう言いながら机の上に自身の戦極ドライバーとイチゴのロックシードを置く。

 

「僕たちが自由に踊るためには戦って守るしかないんだ!」

 

確かに戦力としては圧倒的かもしれない。けど、チーム鎧武にも他のチームとも戦えるだけのアドバンテージが揃っている。そう簡単には負けない理由も負けられない理由も今のチームには存在していた。

 

 

ピピピッ! ピピピッ!

 

 

その時、光実のケータイが突然鳴り響く。

 

「? ちょっとごめん……」

 

そう言って光実はケータイに表示されている名前を見て驚く。そこに表示されていたのは――――

 

 

「将汰さん………?」

 

 

 

-------

 

 

「悪いなミッチ。昨日の今日で会わせる顔は無いのはずなんだけど……」

 

「いいえ、気にしないで下さい。それにしても将汰さんの方から呼び出しなんて珍しいですね?」

 

ガレージから少し離れた場所に移動した光実は待ち合わせていた将汰と合流する。昨日のことを思い出し申し訳ない顔をする将汰に気にしていない風に光実は話しかける。

 

「あ、あぁ………その、アーマードライダー龍玄ってのは―――」

 

「ええ、僕ですよ」

 

そう言いながら、自身のドライバーを将汰に見せる光実。

だが、将汰が気になったのはドライバーではなく今自分にドライバーを見せている光実の表情だった。まるで、最初にドライバーを手に入れて少しでも喜んでいた自分のような顔をしている。

 

だからこそ疑問に思った。

 

その怖さを話したのにどうしてそんなに嬉しそうな顔をしているのか、と。

 

「なぁミッチ、今の俺に言えた義理じゃないってのは分かってるんだけど……そのドライバーは危険なんだ。そいつを持っていると俺を襲ってきた奴がお前のところにも現れるかもしれない。だから――――」

 

「分かっていますよ、将汰さん」

 

捨てろ、そう言おうとした将汰の言葉を遮ったのは他でもない光実だった。まるでそう言うのが分かっていたかのように……。

 

「あなたは優しい人だから、僕のことを心配して言っているんだっていうのは分かっています」

 

でも、そう付け加えながら自身のドライバーを見つめる。先程までの嬉しそうな顔ではなく、何年も待ち焦がれたもの手に入れたような、そんな顔をしながら……。

 

「どんな力にだって危険は伴う……分かっています。それでも僕は決めたんです。ねぇ鉱汰さん、貴方には分からないかもしれない。何のしがらみも無く自分の人生を歩んできた貴方には。それがどれほど……幸せなことか」

 

えっ? と言う将汰を尻目に光実は語り続ける。

 

――――今まで自分が歩んできた道を。

 

「僕はいつも進む道を人に決められて、ただ流されてばっかりで……そんな自分が嫌で仕方なかった。でもこのベルトを手に入れて、初めて自分の意思で戦いをすることが出来たんです。これは……そんな僕にとって大切な宝物なんです」

 

今までに見たことが無いような顔をしながら語る光実。

 

そんな光実を見て将汰はなんとなく分かった。

 

自分と同じように光実も何かを背負っているということを。

 

そして、ドライバーを決して手放さないということを。

 

 

 

-------

 

 

チームインヴィットのリーダー、城乃内はイライラしていた。

連合チームの本拠地であるバロンの拠点で待っているがその間にもどんどんイライラは増してゆく。連合チームに入りクラスAのロックシードを持ってチーム鎧武に勝負を挑んだまではよかった。だが、まさか鎧武に新しいアーマードライダーがいることは予想外だった。その結果、惨敗したという事実が街に知れ渡ってしまっただけでなく、チーム鎧武の優位性も街に知れ渡らせることになってしまった。それらのことももちろんだが今の城乃内をイライラさせる主な原因は二つあった。

 

一つは、新しいアーマードライダー、龍玄の踏み台になったこと。

 

そして、もう一つは――――

 

「鎧武の新しいアーマードライダーにロックシードを奪われたんだって? 無様だな城乃内」

 

目の前のこの男、駆紋戒斗だった。

わざわざ知っていることを自分に聞いてくるだけでなく、自前のトランプをシャッフルしながらどこか馬鹿にしたような声で自分に話しかけてくる。今すぐにでも文句の一つぐらい言いたくなるがそこを堪えながら自分の用件を済まそうとする。

 

「悪いかよ。あんたの代わりにあいつらと戦ってきてやったんだ。感謝してくらいして欲しいなぁ……。それより代わりの錠前寄越せよ。いくらでも貸してくれるって約束だろ?」

 

戒斗への怒りを抑えながら何も気にしていないような笑顔を作りながら催促をする。まぁ、全然隠しきれていないのだが。

それを聞き、戒斗は机の上にクラスBのロックシードを置く。

 

 

「支配者か……なってみると大して面白いものでもないな」

 

さっさと用件を済まして帰ろうとする城乃内に戒斗の声が聞こえてくる。

面白くない、明らかに自分の失敗のことを言っているんだと分かった。

 

 

「ッ……だったら何で連合チームなんて作ったんだよ?!」

 

「そうだな……例えば―――」

 

そう言いながらトランプを持った手を机の上に持っていき――――

 

 

「こういう有様が嫌いなんだよ」

 

手を離した。机の上にはそれまで手に持っていたトランプが特定の所に落ちていくのではなくその全てがバラバラに落ちていく。

 

「弱い奴らが幅を利かせて誰が強いのかはっきりしない。最悪だ!見苦しくて虫唾が走る」

 

バラバラになったトランプを見つめながら再び集め始める。恐らく、ビートライダーズのことを言っているのだろう。

 

 

戒斗は壊すつもりなのだ。争うだけ争い、増えるだけ増えて、誰が一番強いのかはっきりしないこの現状を。その為に連合チームを作ったのだと城乃内は気付いた。

 

 

「弱い奴は消えろ……とまでは言わない。収まるべき場所に収まっていればそれでいい」 

 

そう言いながら再びトランプをシャッフルし始める戒斗。

 

「だが……」

 

そう言いながらトランプの中からハートの7をはじき出す。

 

「枠に収まらずはみ出した奴はただの弱者じゃない」

 

そのままダイヤの6、スペードの8と次々とカードをはじき出し並べる。

 

「今はただ弱いってだけだ。こいつらにはまだ先がある」 

 

そのままスペードの5、ダイヤの9とカードを並べ終える。恐らくチーム鎧武のことを言っているのだろう。戒斗の雰囲気から城乃内は気付いた。

 

――――ストレート。

 

ポーカーの組み合わせの一つが揃っていた。

 

「チーム鎧武……ああ、確かに見所のある連中だよ」

 

どこか忌々しそうにしながら言葉を続ける戒斗。沢芽市の初めてのアーマードライダー、一対一の戦いのときに使った戦法、今までの戦いから気付いた。鎧武はまだまだ強くなるということを。

 

「だからこそ―――俺と戦う羽目になる」

 

そう言うと、トランプを机の上に置き伏せながら横に広げる。伏せられているカードの中にダイヤの10、ジャック、クイーン、キング、そしてエースの五枚だけが伏せられずにその存在感を発していた。

 

――――ロイヤルストレートフラッシュ。

 

ポーカーの最強の組み合わせがそこに揃っていた。

 

 

 

-------

 

 

 

「で、錠前はどうなった?」

 

場所は代わってドルーパーズにて先に来てパフェを食べている初瀬の聞かれ、向かいに座りながらポケットからドングリのロックシードを机の上におきながら見せる。

 

「最初に連合チームのことを聞いたときはどうかと思ったけどよ、案外悪くないもんだな。他の奴にやられる心配も無いしよ」

 

はぁ? 何言ってんだこの馬鹿は? そう心の中だけで言いながら眼鏡を外し思ったこととは違う言葉を返す。

 

「はぁ……初瀬ちゃんまでそんな事言い出しちゃうんだ…正直がっかりだよねぇ~……」

 

言葉で言われたわけではないがどこか馬鹿にされたのだけは分かった初瀬はパフェを食べる手を止め、あ? と言いながら目の前の城乃内の睨む。

 

「ようは俺たち、バロンの戒斗になめられてるってだけじゃん? ロックシードさえ渡していれば飼い犬みたいに大人しくなるってさ」

 

「何……あの野郎…そんなつもりで嫌がるのか……!」

 

やっぱりこいつ馬鹿だわ、そう常日頃心の中で思っていることを改めて再確認する城乃内。

 

「俺たち揃いも揃って駆紋戒斗の可愛いペットってわけ。 ふふっ……初瀬ちゃんそれで満足かい?」

 

「いいわけないだろっ!!」

 

バンッ! と机を叩きながら立ち上がる初瀬。本当にこいつって扱いやすいなぁ、と思いながら城乃内は心の中だけで笑う。

 

「やっぱ俺たち、まずは戒斗のやつと対等に張り合えるだけの算段をつけないとやばいよね」

 

確かに初瀬は馬鹿だが現状を考えれば組まないわけにはいかない。そう言いながら共に現状を何とかする打開策を考える二人。

 

だがそう簡単にはいかないということも分かっていた。今アーマードライダーと言う強力なアドバンテージを持っているのはチーム鎧武とチームバロンの二つだけ。クラスAのロックシードを持って鎧武に勝負を挑んでもまたアーマードライダー龍玄に負けるということは一度経験した自分がよく分かっていた。ならば、複数用意すればいいという話だが今の自分たちには強力なインベスを複数操る技術は無かった。弱いインベスならまだしも強力なインベスならば制御しきれずに暴走するのがオチだろう。

 

自分たちにもアーマードライダーのような強力なアドバンテージがあれば、そう考える二人を錠前ディーラーであるシドが面白いものを見つけたような顔をして見ていた。

 

 

 

-------

 

 

 

「俺の鎧武に戒斗のバロン、そしてミッチの龍玄か…………」

 

光実と分かれた後、将汰は一人考えていた。光実に何があったのか分からないが恐らく自分がこれ以上言っても決してドライバーを手放さないことは分かった。

だからといって諦めた訳ではないが。

 

もしもドライバーを持ち続けていたら、きっと光実の前にあの白いアーマードライダーが現れるだろう。

 

全力を出せなかったとはいえ、ある程度の戦闘経験を持った自分でもまったく歯が立たなかったのだ。今の光実の前にあの白いアーマードライダーが現れたらひとたまりも無いだろう。インベスゲームだけで十分だ。必要以上の危険を背負って欲しくない。

 

かといってもどうすればいいのか方法が全く思いつかないのが現実なのだが。

 

「はあぁ……どうすればいいんだよぉ~………」

 

 

 

「人の目の前で盛大にため息を吐かないでもらえるかしら」

 

 

 

その時、将汰の背後から声が掛けられる。どこかで聞いたような声だなと思いながら後ろを振り返るとそこにいたのはあの奇妙な転校生、暁美ほむらだった。

 

 

「あ、ああ……悪い暁美――」

 

「ほむらでいいわ」

 

「え? あ、悪いほむら……」

 

名字で呼んだらすぐに名前で呼んで言いと言われ困惑しながらも訂正する。

 

正直、将汰はほむらのことがまだよく分からないでいた。転校してきてから何日か経っている。その間にも何度か注目もされている。例えば勉強。病院に長く居たというのに勉強に遅れるどころか上位の成績を取っているし、運動に関してはクラスの女子の中では一番良いという結果だ。

 

特に一番気になっているのは転校初日に聞いたまどかへと忠告とも言えるような言葉。まどかはまどかのままでいればいい、久しぶりに学校に登校して初対面の人間に対して言う言葉とは到底思えない。

 

基本的には名字で呼ばれているが、まどかや自分に対しては名前で呼んでいいと言う。その違いがまったくもって分からない。いや、気分の問題といわれればそこで終わりなのだが。

 

「そんなことよりも、チーム鎧武のアーマードライダーがこんなところで一体何をしているのかしら?」

 

「ああ、それな……。もうやめたんだよ、それ」

 

「やめた?」

 

「ああ。今はもう別の仲間がアーマードライダーをやってるし、俺も生活が厳しいからインベスゲームとかやる暇がなくてな。それに元々チームを抜けてる身だし、アーマードライダーやってる時も用心棒としてだったから正式にチームに戻っていなかったしな……」

 

「つまり、チームのことはもう自分には関係の無いことだ、と……そう言うことなのね」

 

「――――――ああ、もう関係ないんだ……」

 

「――そう。わかったわ」

 

その通り。もはや自分には関係のないことなのだ。

 

一度ならず二度も逃げ出した自分にはあのチームにいる資格などない。

 

そう、もはや気にしない――――――

 

 

「なら、今バロンの駆紋戒斗が連合チームを引き連れて鎧武にインベスゲームを仕掛けに行っててピンチだったとしても、もう貴方には関係の無いことね」

 

 

――――――はずだった。

 

「………………は? おい、それ……どういうことだよ………」

 

「どういうことって……言葉通りの意味よ。今、鎧武はバロン連合から勝負を挑まれている。そしてピンチに陥っている。ただそれだけのこと」

 

「それだけって問題じゃねえだろッ! 何でそんな事に……!」

 

「何でって……知らないの? 元々バロンが連合チームなんて作ったのは勢力を集めて他のチームを潰すこと。なら最初に潰すのは力をつけてきて勢力に加わらない鎧武なのは当然のことでしょう?」

 

「当然って!! ……ああもう!!」

 

急いでガレージの方へ向かおうとする。

 

「何処へ行こうというの?」

 

「そんなの決まっているだろ!! みんなの――――」

 

「みんなの所へ……とでも言いたいの? 何故? もう部外者である貴方には関係のないことじゃない」

 

「っ! それ、は………」

 

ほむらの言葉に将汰は何も言えなくなる。

 

そう。その通りだ。自分はもう用心棒を辞めた。一度ならず二度も背を向けたのだ。いまさら一体どういう顔をして自分がみんなのピンチに駆けつけるというのか。ロックシードも無い。戦極ドライバーも無い。戦うための力を何一つ持ち合わせていない自分が行こうと行かまいと結果は変わらないだろう。

 

 

そんな事は他でもない自分自身がよく分かっていた。

 

 

「別に鎧武が負けても貴方のせいではないし、貴方の友達も貴方のことを恨みはしないでしょうね。”自分たちの力不足だった”……そう言うだろうと思うけど?」

 

「……ああ。多分、みんなそう言うと思う………」

 

「でしょう? なら私はもう行くから」

 

「ああ。教えてくれてありがとうな」

 

用件が終わったのかほむらは立ち止まったままの将汰の横を通り過ぎて歩いていく。

 

「(ほむらの言う通りだ。俺が行っても何も出来ないし……また誰かが傷付くかもしれない)」

 

―――――なら、余計なことはしないほうがいいのかもしれない。

 

――これでよかったのだ。

 

 

「…………今から言うことは私の独り言よ」

 

「えっ……?」

 

去ろうとするほむらの声が聞こえて慌てて振り返る。こちらの方を向かずにほむらは話を続ける。

 

「例え……行く先が絶望しかなくても、明日が見えなくても………自分の信じた道を突き進む。私の知っている人にそういう人が居たわ」

 

 

「正しいのかどうかなんて誰にも分からない。それでも――――自分が進んだ道を決して後悔はしない。そんな人だったわ」

 

 

「自分の信じた道を…………」

 

 

『おっす将汰』

 

『よう、将汰』

 

『将汰さん!』

 

 

 

 

―――――約束だよ、将君。

 

 

 

 

「―――――っ!」

 

気が付けば体が勝手に動いていた。

 

自分は部外者だし行っても何が出来るのかは分かりもしない。

 

 

それでも……行かなくちゃいけない。

 

 

―――――――後悔しない為に

 

 

 

 

 

「…………行ったのね」

 

走り去っていく将汰の後姿を見つめながらほむらが呟く。だが、不思議にその言葉に驚きの感情は無かった。

 

不意に自身のポケットに手を入れ、入っていたものを取り出す。

 

 

「本当に………何処までも変わらないのね……………」

 

 

どこか嬉しそうな、それでいて悲しそうな顔をしながら――――その不自然に壊れたオレンジロックシードを見つめていた。

 

 

 

-------

 

 

気付けばガレージに向かって走り出していた。

何で無関係宣言をした自分が今更みんなの下に走っているのだとかドライバーを持っていない無力な自分が行っても何の解決にもならないだろうとか、様々な考えが今も頭の中に過ぎっている。確かにそうだ。一度のみならず二度も逃げ出した自分が行っても何の意味も無いのだとか、無力な自分が行っても何の役にも立たないのだとか、そんな事は他でもない自分自身がよく理解している。

 

分かっているはずなのに………

 

「何で走ってるんだよ俺ぇッ!!」

 

いやいや、理由は分かっているつもりだ。過去を振り返ってみるに知り合いどころか実の姉ですら自分に対して時々呆れたような視線を送る事があった。恐らくこういうことを気付かずにやっていたんだろうな。ああ、確かにそうだ。自分でも呆れるわこれは。

まぁ、長く疑問だったことが分かったところで止まるという選択肢は無いわけだけれども。

 

そろそろガレージに着くはずだ………そう思いながらガレージに着くとそこにはすでに龍玄とバロンが戦っているところだった。

 

「ミッチ!」

 

「!? 将汰さん?!」

 

こちらに気付き驚いたような声を上げるミッチ。その声でその場にいる鎧武のみんなやバロンの連中も俺のことに気付く。

 

状況から見てこっちは一人で向こうはバロンとインベス合わせて三人。近くに城乃内と初瀬もいるけどインベスを操っている素振りは無い。ってことはあいつが戦いながらインベスを二体も操っているっていうことになる。おいおい…器用にも程があんだろ!それに実体化してるのに暴走している風には全く見えない。ってことは、あれも戦極ドライバーの力なのか……?

 

「将汰あんたなんでここに…」

 

「聞いたんだよ! 鎧武とバロンがインベスゲームをしてるって…」

 

「聞いたって……いやおかしいよそれは?! だってまだ誰にも言ってないし始まったのだってついさっきだよ!?」

 

はぁ?! と可笑しな声を上げる。ちょっと待て。いくらなんでもおかしいだろそれ。

始まったのがついさっきって……俺がほむらから聞いてここに来るまで走っても五分ちょい掛かった計算になる。それにさやかの言うことが本当だとするとこの勝負はここに居るメンバー以外はまだ誰も知らないってことになる。

だったら何でほむらはこの勝負のことを知っていたんだ……?

 

「ぐああっ!」

 

「! ミッチ!」

 

そう考えている間にもミッチの状況は不利になっていた。

そりゃそうだ。いくらアーマードライダーになったといってもまだドライバーを手に入れたばっかりだし、何よりミッチは今まで戦っていなかったから圧倒的に経験が少ない。

 

戒斗はそんな俺に気付くとふん、と言う風に言葉を発した。

 

「今更のこのこやってくるとはな、桜庭将汰。そこで自分が何も出来ずに仲間がやられていく様を見てるがいい!」

 

そう言いながら攻撃の手を緩めずに逆にどんどん厳しくなっていく。

 

「うおおぉぉおおおっ!!」

 

黙ってみてるわけにもいかずにシールドに向かって突っ込むが、やはり生身では破れないのかまるで何てことも無いように弾かれる。やっぱり変身しなくちゃこのシールドは破れないのか…!

 

「逃げろミッチ! 一人じゃ勝ち目が無い!!」

 

「はぁ……はぁ……負けられない……僕は……はああっ!!」

 

尚を立ち上がりバロンに向かっていくけどインベスとの連携によってまるで歯が立たない。何度もやられてはその度に立ち上がっていく。

 

「何で逃げないんだよ……一人じゃ無理だってっ!」

 

「………きっと将君が見てるからだよ」

 

傷付いていくミッチを見ながら叫ぶ俺にまどかがその理由を述べた。

 

「俺が…見てるから………?」

 

「私…聞いたんだ。インベスに向かっていくのに怖くないのかって……そしたら光実君が―――」

 

 

『ねえ、光実君……怖くないの? インベスに向かって戦うのって……』

 

『怖い、ですか……全然怖くなんてありません! って言えば、嘘になります……。正直に言うとすごく怖いです』

 

『だったら!』

 

『でも、怖いと思うと同時に嬉しいんです僕』

 

『嬉しい……?』

 

『はい。今まで裕也さんや将汰さんが僕等を守るために戦ってくれてました。その、二人の気持ちが分かったような……二人にようやく肩を並べて歩けたような気がして!』

 

『僕をここに導いてくれたまどかさんや将汰さん。いつも元気がいいさやかさんにチャッキーやラット。それにリッカ。来るのは時々だけだけどなんやかんやみんなのことを気に掛けてくれる杏子さん。そして……僕らのことを守ってくれてた裕也さん。そんなみんなを守れるって……心の底から嬉しいんです』

 

『だから―――僕は戦います。あの人が……将汰さんが安心できるように……』

 

 

「ミッチが………」

 

俺が安心できるように………

 

何だよそれ……別にたいしたことなんて全然してないのに……。そんな理由で……?

いや違う。そんな理由なんかじゃない。あいつは俺やみんなを守る為に必死になってまで戦ってるんだ。

それに比べて俺は一体何だ。自分のせいで誰かが傷付くのが嫌だからって逃げて……なんとか振り切ろうとしてもまた怖くなって逃げて―――

 

「馬鹿か………俺は………!!」

 

何が変わりたいだ! 何が誰かを傷つけたくないだ! そんなの……そんなの単に自分の責任から逃げてるだけじゃないか!! そんな自分のことを守る為にああやって戦ってくれてるミッチのようが自分よりもすごいじゃないか。何度傷付いても立ち上がって、何度も向かっていって、たとえ歯が立たないのだとしても決して諦めない。

 

そんなあいつに俺は一体何がしてやれる。

 

ドライバーを手放して弱いままの自分になって見てるだけしかない自分に……?

 

 

 

「……まどかベルトは何処にある?」

 

「えっ……で、でも!」

 

「違う……誰かのためなんかじゃない。今度こそ俺のためだ」

 

「将君……」

 

「弱いままの自分じゃない……弱い自分の殻を破るための力! 俺にはその為の力が必要なんだ………だから!!」

 

「! うんっ!」

 

俺の返事を聞くとまどかは自分の鞄から戦極ドライバーとロックシードを取り出して俺に渡してくれた。

すぐに受け取り、ベルトをセットしてロックシードを構える。

 

「駄目だ…将汰さん!! 貴方にはもう……戦う理由なんて無い!!」

 

「あるさ! あのベルトは俺しか使えない! 俺にしか出来ないことをやり遂げるための力 俺はそいつを引き受ける!!」

 

それに―――

 

「それに俺は―――もう弱いままの俺じゃいられない!! 何でも出来る自分……俺はそんな自分に変身する!! そう決めたんだッ!!」

 

「将汰さん……」

 

「変身!」

 

『オレンジ!』『ロック・オン! ソイヤッ!』

 

『オレンジアームズ! 花道・オンステージ!!』

 

「はぁっ! うおおらああぁぁぁぁ!!」

 

変身し、そのまま助走をつけてシールドに向かって思いっきり殴りつける。最初はなんとも無いような反応だったが、殴られた箇所を基点に全体に向かって波紋が広がりガラスのようにシールドが砕け散った。

 

 

「ここからはおれのステージだ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで――――気付くべきだった。

 

他から見れば彼は誰かのために戦う……まさにヒーローのような存在。人を助けずにはいられないお人よし過ぎる人間に見えるだろう。

 

だが――違う。

 

 

彼が戦うのは……正義感とか人助けとかそんなものではない。

 

その奥底にあるのは………自分勝手な理由によって付けられた醜い呪い(・・)だけだ。

 

 




将汰が戦う理由は原作の鉱汰のような正義感ではありません。これが大きな違いです。まぁ気付く人はすぐに気付くと思うけど。

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