刀剣乱舞・審神者ちゃん戦記   作:いぇん

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刀剣乱舞の二次創作です。
捏造・独自設定が多いので苦手な方は回れ右でお願いします。


燃えよ審神者ちゃん

 刀。槍。薙刀。

 手にされた得物は各々違えど目的は同じ。

 それぞれの得物を手に、異形達は構えを取る。

 その数は五体。決して広いとは言えないこの部屋で、わたしの逃げ場をなくすには十分な数。

部屋の壁には、大量の刀剣が所狭しと並べられている。

 しかし、わたしに武器の心得などない。日本刀の類よりも包丁が転がっている方がまだ望みがあった。

 それでも、あの鋼の肉体を持った異形たちをどうにかできるとは思えないが。

 その異形達は早くその得物を振りぬきたいのか興奮した様子で息を荒げている。

 おそらく、背後にいる学生服の少年の指示がなければ動けないのだろう。

 その学生服の少年といえば、ただ落ち着いた様子で壁にもたれかかっている。

 

 「残念だな。君なら、と思ったんだけど」

 

 知らない。何を言っているのか、わからない。

 

「いや、本当に君のことは気に入っていたんだよ。殺すのは勿体ない」

 

 だったら、その異形達を止めてくれ。

 

 「でも、僕にもすべきことがあるんだよ。だから」

 

 彼はゆっくりと、言葉を紡いだ。

 

 「さよなら」

 

 異形達は叫びを上げ力強くこちらへ踏み出す。

 一歩、また一歩と、距離が縮められていく。

 死が迫ってくる。

 白刃の光は冷ややかだ。

 あれは何だ。彼は誰だ。

 何もわからない。何もわからないまま、わたしは死ぬのか。

 なぜ、なぜ死ななければならない。

 頬が熱くなる。手に力がこめられる。

 どうやらわたしは怒っているらしい。

 当然だ。こんな何もわからずに、理不尽に無遠慮に、殺されてなんてやるものか。

 何か一言言ってやる。いや、一言と言わずに、何か一矢報いても、文句はあるまい。

 刀をひっつかむ。飴色の鞘の、綺麗な刀。

 学生服が、何か言った気がするが、知ったことか。さっきまで散々一方的に喋りやがって。今度はこっちの番だ。

 わたしは鞘から刀を抜きー

 

 一閃。

 

 異形の叫び声。

 一体の首が弧を描いて飛んでいくのが見える。

 

 「まさか俺が呼ばれるとはな」

 

 目の前に、ひとりの青年が立っている。つい先ほど、わたしが抜いたはずの刀を握って。

 

 「わざわざ写しなんぞを呼ぶとは、よっぽど切羽詰まっていると見える」

 

 わたしに背中を向けたまま、そう語る。

 

 「化け物退治なんて、俺の仕事じゃないんだがな」

 

 血に濡れた刀を異形たちへと向ける。

 向けられた刀はそのまま流れるように斜め下に振り下ろされる。

 袈裟切りにされた異形はそのままぼろぼろと崩れながら、後ろへ倒れていく。

 異形たちは得物を青年へと突き出すが、彼は紙一重でかわしつつ、異形を突き崩す。

 続けること数回。

 残ったのは異形達の残骸とその得物だけだった。

 

 「さて、手下はいなくなったぜ」

 

 青年が学生服にその切っ先を向ける。

 いや、ちょっと待て。彼は人間だ。

 異形達と同じように、といくわけにはー

 

 「あんた、殺されかけただろうが」

 

 いや、そうは言っても。

 学生服が肩を震わせる。何が愉快だというんだ。自分の身が危ないというのに。

 

 「ふふふ、いや、君は面白いね」

 

 本当にこの少年の言うことは一から十までわからない。

 しかしどうやら、この事態には驚愕というよりは驚嘆を感じているようだ。

 

 「僕と一緒に来ないかい、と言いたいところだけど、邪魔者が来たみたいだ。また今度、ゆっくり話そう」

 

 学生服が踵を返す。

 青年が刀を握る手に力をこめる。

 しかし、その切っ先が学生服に届くことはなかった。

 

 「なぜ止めた」

 

 学生服の姿は消えていた。

 青年は眉根を寄せてこちらを見ている。

 先ほどまでは背中を向けていて見えなかったが、こちらを見据えている目は冬空のような青だ。

 なぜか頭から布を被っているため、金の髪は前髪が軽く覗くのみだ。

 わたしの右手は彼の腕を掴んでいた。

 彼が刀を振るのを、咄嗟に止めてしまったようだ。

 わたしは口を開こうとしたが、力が入らなかった。

 腰も抜けてしまったようだ。ああ、情けない。

 そこまで考えたところで、意識はプッツリと途絶えてしまった。 

 

 

 




初投稿です。
刀剣乱舞、ニトロと芝村さんが関わっているということで期待と恐怖の狭間を高速で揺れ動いております。
いや、芝村さんの作品は勿論嫌いじゃないというか寧ろ好きなんですけど、そういう問題じゃないというか。
しかしタイトルのアナグラムやらOPの月が欠けるシーンとかとても不穏ですね。
表に出されるかはともかく彼の中では裏設定がすでに出来上がっている気もします。こわい。

捏造謎キャラ出したけど活用されるかは謎です。
どうかなまぬるい目で見守ってください。

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