狂龍王転生 ~死にたくないので龍神と協力する~   作:谷氏

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13話 日記

 

 

■

 ナナホシをラノア魔法大学まで送った。

 ここからは、また二人旅の始まりだ。

 

 

■

 うーん疲れた。

 ナナホシがいなくなったから、旅の速度がスピードアップしてしまった。

 もう数十年も入っていない自宅のお風呂が恋しい。

 …とっくに腐ってるだろうけど。

 

 

■

 オルステッドには、休みという概念があまりないらしい。

 龍族の身体なのだから多少無理をしても構わない、とでも言わんばかりの態度には少々腹が立つ。

 いつか文句を言ってやりたいが、一応命を握られている側の俺に、そんなことを言う権利はないだろう。

 ……俺だって、研究を進めたいんだけどな。

 

 

■

 風の噂で、ミリス大聖堂に泥棒が入ったと聞いた。

 あそこの警備はかなり厳重なはずだ。

 とんだ馬鹿者もいたものだ。

 

 

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 魔石病という珍しい病気で、死者が出たらしい。

 流行したりしないといいな。

 

 

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 アスラ王国で第一王子が王になった。

 オルステッドは、どうやら第二王女に王になってほしかったらしい。

 

 この知らせを聞いたオルステッドは、「失敗した」と言った。

 何もかも諦めたような顔をしていた。

 

 何だか、嫌な予感がする。

 

 

■

 アスラの件から、俺の仕事はどんどん増えていった。

 そして、その多くの仕事で失敗するようになった。

 

 オルステッドの機嫌が悪くなっていくのを感じる。

 

 

■

 寝不足と体力不足の状態で研究を進めるのは難しい。

 ラプラス復活の時期はまだ先だが、ピリピリしているオルステッドが業を煮やす前に、何か大きな進展が欲しい。

 

 

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 オルステッドが持っているコンパスを、偶然目にした。

 ナナホシから連絡が来る、あれだ。

 

 コンパスは、ナナホシから連絡が来ていることを示していた。

 オルステッドはそれを知っていながら、他にやらなければならないことがあるからと放置していたらしい。

 

 俺は烈火のごとく怒り、明日ナナホシの元へ向かうと約束させた。

 

 俺は多少雑に扱ってもいいよ。

 でも、静香ちゃんは違うだろ。

 

 

 

■

 どうして……

 

 全部、オルステッドが悪い。

 

 

■

 コンパスが指し示す空中要塞へ行ったら、ナナホシは自殺したと言われた。

 

 研究が行き詰まり、心を病んでしまったらしい。

 

 コンパスには、確かに連絡が来ていた。

 ナナホシは、俺たちに助けを求めていたのだ。

 

 だけど、そんな僅かな助けを俺たちは無視した。

 そして、静香ちゃんは死んでしまった。

 

 

■

 俺が日本人だったと明かしていたら違ったのだろうか。

 前世のことを黙っていたのがバレたら、ナナホシに嫌われると思って、どうしても言えなかった。

 

 それでも、嫌われても、静香ちゃんの心の支えになってあげるべきだったんだ。

 一人じゃないって、伝えるべきだった。

 

 俺のせいだ。

 俺が、恩人で何よりも大切だった静香ちゃんを殺したんだ。

 

 

■

 空中要塞に引きこもっていたら、無理やりオルステッドに連れ出された。

 

 「こんなところでグズグズしている暇はない」だそうだ。

 

 誰のせいでナナホシが死んだと思っているんだ。

 

 ……いや、俺のせいでもあるか……

 

 

 

■

 研究は進まない。

 

 オルステッドが休みなく俺を働かせるせいだ。

 

 戦って、人を殺して。

 元々、俺は戦いが好きじゃないのに。

 人なんか殺したくないのに。

 

 人を殺す度に静香ちゃんの顔がちらつく。

 

 

■

 分からない。

 

 どうやったら無の世界へ行けるのか。

 仮説は、すべて外れてしまった。

 

 どうしよう。

 もう、あまり時間はないのに。

 

 俺は殺されてしまう。

 俺だけじゃない、同じ五龍将のペルギウスだって。

 

 どうしよう。どうしよう。

 

 

 

■

 珍しくオルステッドと別行動をしていた夜。

 夢にヒトガミが現れた。

 

 初めて見たが、モザイクがかかったような姿をしている。

 

 「ようやく君と会えたよ。ずっとト(・)カ(・)ゲ(・)モ(・)ド(・)キ(・)が邪魔してたみたいだからねぇ……」

 

 そう言ったヒトガミは、俺に同情しているようだった。

 そして、俺が死なないように力を貸すと言ってくれた。

 

 俺は、なんだか泣きそうになりながら、その手を取った。

 

 

■

 そもそも俺は、自分の命惜しさにオルステッドについているだけだった。

 先祖の因縁なんて、心底どうでもいい。

 

 それなら、ヒトガミに従ってオルステッドを殺せばいい。

 どうして、こんな簡単なことに気が付かなかったんだろう。

 

 

■

 バーディガーディから闘神鎧をもらった。

 リングス海から取ってきたらしい。

 

 流石は不死魔族といったところか。

 

 これで、準備は整った。

 

 

■

 俺は、オルステッドの前に立って剣を向けた。

 

 いつものように、震えるほど怖い顔で睨んでこいよ。

 

 殺しにくくなるから。

 頼むから。

 

 

 そんな顔、しないでくれ

 

 

 

■

 俺は負けた。

 

 自分の出せる物をすべて出した。

 今まで作った魔道具も全て。

 オルステッドをそれなりに消耗させた自信はある。

 それでも、歯が立たなかった。

 

 もうすぐ、俺は死ぬだろう。

 

 視界がだんだん暗くなる中、頬に水が当たる感覚がし、無理矢理目をこじ開けた。

 

 

 「なんだ、お前、そんな顔できたんだな」

 

 

 考えたことがそのまま、声に出ていたらしい。

 オルステッドは、息を呑んだ。

 それが何だかおかしくて、少し笑ってしまった。

 

 オルステッドを憎んでいた気持ちは、嘘のように消えていた。

 

 オルステッドが何事か言っている。

 

 けれど、遠ざかっていく意識に従うように、俺は目を瞑った。

 

 

 

 願わくば、彼が幸せな未来に辿り着きますように。

 

 そう、祈りながら。

 

 

 

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