少しだけショートストーリーネタの匂わせがあります。
スペシャルブックで読めるので皆も読んでみてね!
15話 説得
非常に不本意ながら、まだまだ働かされることとなったカオスくんです。
ヤダヤダと、五体投地で駄々をこねてみたが、ルーデウスにとんでもない顔でドン引きされたのでやめた。
年下にそんな顔をされるのは、少々……いや、かなり恥ずかしい。
「カオスさんって、結構その……いや、何でもないです」
なんだよ、文句があるなら言えよ。
思ってたキャラと違うってか?
ともあれ、俺はオルステッドと一緒に空中要塞へ向かうこととなった。
本当は俺一人で行かせるつもりだったらしいが、俺が喚き散らす姿を見て、一緒に来てくれることになったのだ。
多分、俺一人だと不安に思ったんだろう。
空中要塞の謁見の間にて、相変わらず偉そうなペルギウスと対峙した。
ペルギウスは、なんだかピリッとしている。
それにつられてか、オルステッドの呪いのせいか、精霊達もピリッとしている。
これから俺たちが何を頼もうとしているのか分かっているのだろうか。
絶対に断ってやるぞ、という気概をひしひしと感じる。
「ペルギウス、アリエル・アネモイ・アスラの後ろ盾につけ」
「断る」
やっぱりな。
オルステッドを前にして、ここまでキッパリ断るとは、なかなか勇気のあるやつだ。
——いや、よく見るとペルギウスは少し冷や汗をかいている。
自分の命を一瞬で消し飛ばせるようなやつが目の前にいるんだもんな。
そりゃ怖いに決まっている。
「……もう一度言う。アリエルをアスラ王にすべく、支援しろ」
「聞かん。アリエルが王としてふさわしいと見極めるまで、我は動かん」
オルステッドがかなりの圧をかけたが、それでもペルギウスは揺らがなかった。
おぉ見直したぞ、ペルギウス。
俺なら即座にサーイエッサーと言ってしまうところだ。
オルステッドは、どうにかしろと言わんばかりに俺を見てきた。
「諦めな。こうなったペルギウスは、梃でも動かないぜ」
俺は肩を竦め、首を横に振った。
そもそも俺は、ペルギウス寄りの意見だ。
楽に援助を受けて王になったところで、それは本当の王とは言えないだろう。
オルステッドが不満そうにこちらを見てくるのを無視し、俺は謁見の間を出た。
あの圧に屈さなかったペルギウスには、何を言っても無駄なのだ。
少し歩いていると、後ろからオルステッドが追いついてきた。
この様子だと、ペルギウスの説得に失敗したらしい。
「な? だから言っただろ。無駄だって」
「……お前が説得すれば違っただろう」
「俺を何だと思ってんだよ。無理に決まってんだろ」
一応、絶交状態は解消されたとはいえ、俺とペルギウスの仲が悪いことに変わりはない。
俺に何を期待しているんだか……
「そんなことより、ナナホシのところに行こうぜ。仲直りしに行こう」
「……あぁ」
ようやく諦めてくれた様子のオルステッドに、俺は鍔のある帽子とサングラスをかけてやった。
そして俺も、同じ帽子とサングラスをかける。
さながら西部劇のギャングだ。
煙草があったらもっと完璧だが、空中要塞で煙なんて出したら怒られそうなのでやめておく。
「なんだ、これは?」
「仲直りのための
こうして俺たちは、茶を飲んでいたナナホシのところへ赴いた。
前世でよく見たギャング映画のお決まりのような展開に、きっと笑ってもらえると思って着て来たのだが、ナナホシはまるで組織に寝返った裏切り者のように怯え、しまいには謝ってきてしまった。
うーん、失敗失敗。
俺のせいでややこしくなってしまったものの、ナナホシの真摯な謝罪を、オルステッドは不器用ながらも受け止めたようだった。
オルステッドが「誰かが敵に回るのは、いつものことだ」なんて悲しいことを言い出したせいで、ちょっと場がしんみりしてしまったが、そこはなんとか俺が取り持ってやった。
せっかくシリアスにならないように
その後、ナナホシと俺とオルステッドは、お互いの近況を報告し合うなどして、仲直りのお茶会をした。
途中、オルステッドがシルヴァリルにお茶をこぼされるというアクシデントは起きたものの、和やかな雰囲気のまま、その時間を終えたのだった。
「お前はここに残って、引き続きペルギウスの説得をしろ」
そう言って置いて帰られるまでは………………
--- ルーデウス視点 ---
シャリーア郊外の小屋にて。
俺は、オルステッドに聖獣を召喚したことや、アリエルに協力するようルークに頼まれたことなどを報告した。
前はカオスもいたが、今日はオルステッドと二人きりだ。
なんだか少し緊張する。
カオスは現在、空中要塞にてペルギウスの説得に尽力しているらしい。
相当嫌がっているように見えたが……ペルギウスとカオスは、一体どういう関係なのだろうか。
以前、ザノバに狂龍王カオスの魔道具を紹介している時のペルギウスは、結構楽しそうな顔をしていたような気がしたけれども。
「確実に使徒ではない、と言える人物はいますか?」
ヒトガミの使徒が誰なのか、という話になった時、俺はダメ元で尋ねてみた。
オルステッド曰く、俺の家族は大丈夫だが、クリフやザノバは使徒になる可能性があるらしい。
いやだな……。
そこでふと、以前ヒトガミに言われたことを思い出した。
なんとなく本人がいる前では言いづらくて、今まで言えなかったことだ。
「あのぉ、オルステッド様。一つ、ヒトガミに言われたことを思い出したんですけど……」
「なに?」
オルステッドがギロリと睨んできた。
ひい、ごめんなさい。
「も、申し訳ありません。カオスさんのことで……本人がいる前では少し言いづらくて……」
「……続けろ」
これを言ったら怒るだろうか。
いや、仕方ない、腹をくくろう。
「ヒトガミは、その……前に、多分カオスさんのことを『ヤツは、
「……………………」
そう言うと、オルステッドは怖い顔で、長い間考え込み始めた。
即座に否定されると思っていたので、驚きだ。
「…………まぁ、そうだろうな。可能性は、ある」
マジか……
カオスとオルステッドは仲が良さそうに見えたので、カオスが裏切るなんて、あまり想像がつかない。
ナナホシも、俺がこの事を言った時、信じていないような顔をしていたし。
そもそも、ヒトガミが話すカオスのことはどうにも要領が掴めないような話がかみ合わないような感じで、よく分からない。
ヒトガミもカオスのことをあまり言及したがらないような……そんな印象を受けた。
それはやはり、ヒトガミの仲間になる可能性があるから、ということなのだろうか。
「俺とカオスは、もともと利害の一致……いや、半ば俺が脅す形で行動を共にしている。奴が俺を裏切る理由は十分にある」
「そうなんですか……」
脅されているのか。
そういう素振りは見えなかったが。
——いや、最初に会った時に、『一応オルステッドの下についている』と言っていたな。
つまり、そういうことなのだろう。
「オルステッド様は、カオスさんのことをあまり信用していない感じなんですね」
「そうでは…………ない、が…………」
オルステッドは唸るように言葉を絞った。
そう単純な話でもないらしい。
二人の間には、俺には分からない複雑な関係があるのだろう。
これ以上カオスのことを深掘りするのはやめて、今後の方針について話し合い始めた。
正直、おっさん同士のごたごたなどどうでもいいが……。
カオスが敵に回るのはなんだか、嫌だな。
そう思いながら。