狂龍王転生 ~死にたくないので龍神と協力する~   作:谷氏

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17話 王

 

 

場面は変わり、謁見の間へと移る。

 

何かが分かったらしいアリエルは、すぐさまペルギウスとの謁見を求めた。

 

ふんぞり返るペルギウス。

それに対峙するアリエル。

 

ドドン、という効果音でも入りそうだなと思いながら、俺は二人の行く末を見守った。

 

 

 

「この度は謁見の場を用意していただき、誠にありがとうございます」

「能書きはいい。今日は何の用だ? その出で立ちを見るに、茶会の誘いとは思えぬが……」

 

クリアナイトの能力で会話の内容は聞いていたくせに、何をいけしゃあしゃあと……。

こいつの、こういうすっとぼけたところはあまり好きじゃない。

 

「ペルギウス様に、私がアスラ王国国王となるための、お力添えを願いに参りました」

「ほう……ならば、改めて問おう」

 

玉座に肘をついたペルギウスは、頬杖をつきながら尋ねた。

 

「王として最も重要な要素とは、なんだ?」

 

アリエルは、ペルギウスの目を真っ直ぐ見つめている。

 

「王として重要な要素。それは……『意思を継ぐ』ということです」

 

……なるほど。

ペルギウスが思っていた答えとは、違うだろうな。

 

「つまり、貴様が王になりたいと思う志は、所詮は他人に左右されるものというわけだ。そのような者が、真の王と呼べるか?」

 

ペルギウスは不満そうだ。

馬鹿にするような笑みを浮かべながら、アリエルを揺さぶっている。

——だが、そんな小細工は無駄だろう。

 

問答を繰り返すアリエルの瞳には、強い光が宿っている。

その光は——あの泥臭いガウニスに、よく似ていた。

 

「それで、その答えで、この我に本当に力を貸してもらえるとでも思ったのか?」

「いいえ、ペルギウス様。しかし、これが私の本当の気持ち。嘘偽りのない、アリエル・アネモイ・アスラの、王となる心構えです」

 

そしてアリエルは、言い切った。

 

 

「それが拒絶されるというのなら、ペルギウス様のお力など、必要ありません」

 

 

そうだ。

ペルギウスの傀儡になるのではない。

アスラの王となるのだ。

 

ならば、ペルギウスなんて雑魚————必要あるまい。

 

 

 

 

ペルギウスは目を見開いていた。

奴も驚いただろう。

あの弱くて頼りなかったお姫様が、ここまで強く立ち上がっているのだ。

もうアリエルは、お姫様じゃない。

立派なアスラ王だ。

 

「よくぞ言った、アリエル・アネモイ・アスラよ! 貴様の信念、しかと聞き届けた!」

 

ペルギウスは手を上げ、そして宣言したのだった。

 

「この甲龍王ペルギウス・ドーラ。貴様の力添えとなることを、今は亡き朋友ガウニス・フリーアン・アスラに誓おう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

謁見の間を出るとき、俺の前を歩いていたルーデウスが、ふと立ち止まってペルギウスの方を振り返った。

 

アリエルとペルギウスのやり取りの中、ルーデウスは、始終目を白黒させていた。

よほど混乱していたのだろう。

 

「どうした、ルーデウス・グレイラットよ」

「いえ……結局のところ、王として最も重要な要素というのは、あれで正解だったのですか?」

 

ペルギウスは、フン、と偉そうに顎を上げて言った。

 

「我の望む答えではなかった」

 

まぁ、だろうな。

では何故、と問いかけるルーデウスに、ペルギウスは楽しそうに笑った。

 

「アリエル・アネモイ・アスラは、ガウニスと似ても似つかぬ。しかし、アリエルの言葉、アリエルの立ち振る舞いを見ていて、ふと思い出したのだ。かつてガウニスが言った『理想の王様』とは、このような者ではなかったか、とな」

 

ペルギウスは懐かしそうな目をしながら、ガウニスについて語りだした。

 

また始まったよ、ガウニス語り……。

正直、耳にタコができるくらい聞いた話なので、俺はルーデウスを追い越して、先に退出しようとした。

 

 

だが——

 

「待て、カオス。そしてルーデウス・グレイラット」

 

ゲッ、呼び止められた。

仕方がないので、渋々振り返る。

 

「我からも一つ、貴様らに問おう」

「なんだよ」

「なんでしょうか」

「なにゆえ、貴様はオルステッドの名を出さなかった? 我は奴が嫌いだが、それでも奴の名を無視はできん。あの場においてオルステッドの名を出せば、もっと楽に話が進んだであろう?」

 

お前が断ったんだろうが。

そう思っていると、今度は俺に目を向けてきた。

 

「カオスも、貴様には我とする取引材料がいくらでもあるだろう。オルステッドも、それを望んでいるようだった。何故そうしなかった?」

 

取引材料……何の話だ……?

 

 

…………あっ。

ひょっとすると、俺の作った魔道具のことだろうか。

 

確かにここ二百年以上、ペルギウスに新作の魔道具をあげたりしていなかったな。

預けた魔道具も、あげたわけではないし。

 

…………えっ、俺の魔道具が欲しかったのか?

 

もしかして、俺が一人でペルギウスのもとに直談判しに行っていたら、ペルギウスからそういう提案があったのかもしれない。

 

やばい、何故と言われても困る。

思いつかなかったから、としか言えない。

あと、普通にペルギウスに頭を下げたくなくて意地を張っていただけだ。

 

 

 

だが、そんなふうに慌てている俺とは裏腹に、ルーデウスが格好いいことを言い始めた。

 

「私や、オルステッド様が王になるわけではありませんので」

「しかし、奴はアリエルを王にしたいのだろう? 貴様はそれに同調しているのだろう? ならば、目的のためにオルステッドの名を最大限に使えばよかろう」

「だとしても、やはり王になるのはアリエル様で、それに協力するのはペルギウス様ですからね。俺やオルステッド様は手伝いはしますが、所詮は外様。必要以上に名を出し、強引に話を進めるのはよくないと判断しました」

 

すごい、その通りだ。

何も考えていなかった俺とは大違いだ。

 

ペルギウスが目線をこちらに向けてきたので、俺はルーデウスに同調するように、「そういうことだ」と不敵な笑みを浮かべて答えてやった。

 

 

「貴様のその考え、温すぎるぞ。そしてカオス、貴様は今、適当に同調したな。やはり何も考えていなかったか、阿呆め」

 

 

ぴしゃりと言い放ったペルギウスは、そのまま謁見の間を後にした。

 

俺とルーデウスは、お互いに顔を見合わせる。

ルーデウスは、しょんぼりした顔をしていた。

多分、俺も同じ顔をしているだろう。

 

 

 

まぁ、ともかく。

 

これで、アリエルが王となる道は開けたのだ。

 

すべて良しとしよう。

 

 

 

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