Paradise Sixth ―楽園適性試験―    作:針々

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Stage2-4 誰がために吠える。

((殺戮の悪鬼となる。))

((帰れ。))

((今すぐ、この国から去れ!))

 

占い師の突然の宣告に、全員固まったままだ…。

もちろん、それは占われた僕も同じこと。

 

(……)

 

 

 

「に、にゃ、玲お前…従者じゃなくて鬼だったのかにゃ?」

 

「「「フッ…」」」

 

ダルタニャーの少し間抜けな感想のおかげで、場が和らぐ。

 

「んなわけあるかい!アリ一匹殺すのにも心を痛める玲君がそんなことするわけないじゃないか!!」

 

口では、いつも通りに茶化していた。

でも、笑いながら握った拳に、少しだけ力が入っていた。

 

僕のその主張に冷ややかな視線を向けるものが二名…

 

「いや、玲がアリの巣に水を入れて楽しんでるのを俺みたことあるぞ…」

 

うそ、樹に悪行を見られていた…

 

「玲は嫌いな相手には結構容赦ないところあるからな~」

 

樹、聡による僕の悪行の暴露…君たち友達だよね?

なんで僕の悪口大会になってるの??

 

「まあ玲が誰かを傷つけるってのもあまりイメージできないよね!」

 

「優…(泣)」

優の優しさが心にしみる、やっぱり君は僕の心のブラザーだ!!

 

「そいういうイベントでしょ、無視してクエストの完了報告いこうぜ!」

 

確かに、樹の言う通り、クエストはまだ何個かあるだろう、

ここで無駄に時間を使っている暇などない。

 

気を取り直して、レッグストロングの待つ中庭まで戻ってきた。

ダルタニャーはレッグストロングが視界へ入った瞬間

駆けていき、完了報告をしようとする。

 

「情報を取ってきま…フゴフゴ」

 

ダルタニャーの後に続いていた聡が

あわててダルタニャーの口を両手で塞ぐ。

 

「このバカ猫!今回のクエストの目的は草むしりだろ!」

 

「団長、城の周りの草むしり完了しました!」

優がダルタニャーと聡の前に立ち、レッグストロングにクエスト完了報告をする。

 

レッグストロングはその髭面を綻ばせ、

満足そうに頷きながら口を開く。

「うむ、素晴らしいぞ、日向銃士見習い。」

 

その返事と共に、入団試験第一課題の完了ポップアップが開く。

 

 「では貴様達に次の課題を言い渡す。」

 

次のお使いクエストは一体何かと全員固唾を飲んで待つ。

 

「次の課題は…」

 

(草むしりはやだ……草むしりはやだ……)

魔法学校へ入学した新入生が、自分の所属する寮を祈るように待つかのように、僕は両手を組んで心の底から願った。

 

「次の課題は――野犬の討伐だ!!」

 

一瞬、誰も声を上げなかった。

 

そして――

 

「うおおおお!!」

 

「RPGっぽいクエストきたぁ!!」

 

草むしりから解放されたことへの喜びと、ようやく物語が動き出すという高揚感が一気に込み上げる。

気が付けば、樹と僕は顔を見合わせて叫んでいた。

興奮を抑えながら、僕たちは表示されたクエスト内容へ目を向ける。。

 

目の前に、新たなポップアップウィンドウが表示されている。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

【入団試験 第二課題】

 

『野犬討伐任務』

 

依頼主:レッグストロング

 

町外れの富豪の屋敷に野犬が住み着いている。

 

現地へ向かい、脅威を排除せよ。

 

▼Objective

・野犬を討伐する

・依頼主へ報告する

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「では解散!! 各自、討伐の準備を整えて出発せよ!」

レッグストロングの掛け声とともに、城を後にする。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「やっと地味な作業から解放されたわ~~」

 

「それな、庭師いるんだから草むしりなんてしなくていーじゃん」

 

「まあ情報収集が目的だったから…」

 

樹、僕、優が第一課題についてそれぞれの感想を述べる。

 

「女王の失われた首飾り、後々イベントに関わってきそうだね…」

聡の言葉に皆頷く。

 

女王という言葉にダルタニャーが反応する。

「おみゃーたち、この国の女王について知ってるかにゃ?」

 

「いや?全然?」

樹が答える。

 

「この国は女系国家にゃ。王様はいても、一番偉いのは代々女王なんだにゃ。」

 

「ふーん、じゃあその女王の首飾りが無くなるってのは大事件な訳だ。」

 

「そうにゃ!しかもその首飾りは代々受け継がれてきたもので、

今国中大騒ぎにゃ、見つけたものには莫大な報酬金が出るって噂にゃ。」

 

「なるほど、じゃあ首飾りを見つけたらあの城に招待されるかもってことか。」

後ろに見える大きな城を指差しながら言う。

 

「うんにゃ、あの城に女王はいにゃい。」

 

「え?女王は城に住んでないの?」

 

「あの城にはにゃ、あそこには銃士とこの都市の代表がいるだけにゃ。

そもそも、この街は国の中の一つの都市にすぎにゃいのにゃ。」

 

(そうだったのか!大きな街だから、てっきり国の首都だとおもってた…)

 

「俺っちも銃士として手柄を立てて、

いつか女王のいる王都――フォルクシュタインへ行きたいニャ!」

 

(ふーん王都か…僕らも行けるのかな…)

 

 

「「グーーー」」

 

そのとき、どこからともなく誰かのお腹の音が聞こえて来た。

 

「昼食ってないから腹減った〜!!」

 

「腹減ったにゃーー!」

 

樹とダルタニャーが駄々っ子みたいに空腹であることをアピールする。

 

「さっきの屋台で何か食べようか。」

やれやれという感じで2人の相手をする優。

その光景はなんとも微笑ましい。

 

城から伸びる坂道をしばらく下ると、先ほど出店が沢山並んでいた通りに出る。

各自食べたいものをここで購入する流れだ。

 

何にしようか迷っていると、先ほどこの道を通った時に嗅いだいい匂いが漂ってくる。

その匂いの先では、串に刺さった肉が炭火の上で香ばしく焼かれていた。

炭火の上で滴った脂が「ジュッ」と音を立て、香ばしい煙が立ち上る。

 

……反則だ。

 

思わず唾を飲み込んでしまう。

 

周りを見渡すと、皆も肉に釘付けになっている。

 

「これにしようか…」

 

((((コクリ…)))

 

各自2本づつ串を購入する。

アイテム名は『Grass-Fed Beef Skewer』――牧草牛の串肉。

肉の表面を覆う脂が陽の光を受けてきらりと輝く。

 

(う~~、もう我慢ならん!!)

 

大口を開けて肉にかぶりつく。

口の中で肉の油が溶け、食材そのものの旨味が口いっぱいにひろがる。

 

これは…。

 

「うんま~~い!!」

樹が叫ぶ。

 

「美味しい……!」

優が目を丸くする。

 

「肉の品質がいい。」

聡は淡々と言いながら、すでに二本目を口にしている。

 

「幸せにゃ~~!!」

ダルタニャーは尻尾をぶんぶん振っていた。

 

その後は、各自無言で食べ進める。

この世界に来てこんなに美味しいものが食べられるとは、良いこともあるもんだ…。

 

結局全員お代わりし、僕は全部で8本、樹に関しては10本串を食べた。

 

(う、さ、さすがに食べ過ぎた…ちょっと気持ち悪いかも…)

 

 

「よっしゃ! パワー全開! 第二の課題に行くぞ!!」

 

(あれだけ食べた後でこの元気……こいつ化け物か。)

 

町はずれの屋敷へ向かおうとして――ふと気付く。

 

(しまった。このフロアのマップ、まだ買ってないじゃん。)

 

どうしたものかと考えていると、

 

「よし、屋敷はこっちにゃ! 俺っちについてくるにゃ!」

 

「え? ダルタニャー、場所分かるの?」

 

「当たり前ニャ! 俺っちのアイテムボックスには、この街のマップが入ってるニャ!」

 

(……そうなの?)

 

半信半疑でアイテムボックスを開く。

 

僕たちはギルド結成時にアイテムボックスを共有設定にしているため、

ダルタニャーの所持品も閲覧できるのだ。

 

「あった……」

 

そこには確かに、このフロアのマップが入っていた。

 

(たまには役に立つじゃん、この猫。)

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

マップにクエスト情報を読み込ませると、目的地までのルートが青い線で表示された。

 

市街地を抜け、三十分ほど歩いた先――

 

僕たちは目的の屋敷へとたどり着いた。

 

「ここがクエストの場所か……」

 

屋敷はかなり大きい。

だが、その外観は長い年月を物語るように色褪せ、ところどころ外壁も傷んでいる。

広大な庭を囲む鉄格子。

そして、その正面には重厚な鉄門が静かに立ちはだかっていた。

 

 

さっそく樹が門に手を掛ける。

 

「行くぞ。」

 

ギギギギ……

 

錆びついた蝶番が悲鳴を上げ、重い門がゆっくりと開いていく。

 

その音に反応するように、屋敷の玄関扉が開いた。

中から一人の人影が姿を現し、こちらへゆっくり歩いてくる。

距離が縮まり、およそ二十メートルほどになったところで、その人物の姿がはっきりと見えた。

黒いスーツに身を包み、整えられた白髭を蓄えた初老の執事NPCだった。

 

「レッグストロング団長に紹介された方々ですね。お待ちしておりました。

 討伐していただきたい野犬はこちらです。」

 

執事のあとに続き、屋敷の敷地内へ足を踏み入れる。

 

庭の草はある程度刈り込まれているものの、植えられた木々は長い間手入れされていないようで、枝葉が好き放題に伸びていた。

 

敷地の東側、奥へ進むと、高い石壁に囲まれた区画が現れる。

 

その向こう側から――

 

「ガルルルル……!」

 

低く唸る獣の声が聞こえた。

 

時折、鉄を引っかくような鋭い音も混じる。

 

思わず全員が顔を見合わせる。

 

「この壁の向こうに、野犬を閉じ込めております。」

 

執事は落ち着いた口調のまま続ける。

 

「元は屋敷の番犬だったのですが、突然凶暴化しまして……。

 使用人が何人も襲われ、やむなくこの区画へ隔離しております。」

 

(番犬?レッグストロングは野犬って言ってたけどな…)

 

 

「中へ入れば、すぐに襲い掛かってくるでしょう。

 

 どうかお気を付けください。」

 

その言葉と同時に、執事NPCの前へポップアップウィンドウが表示された。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

▶ 討伐を開始する

 

  やめる

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「バトルの前に、準備しておこう!」

 

僕の一声で、それぞれがステータスウィンドウを開く。

 

僕も自分のステータスを確認する。

第一フロアのボス討伐で得た経験値により、レベルは15まで上がっていた。

レベルアップによって、新たなアタックスキルをセットできるようになっている。

今回、僕が選んだのは――

 

『Cross Retaliationクロス・リタレーション』

 

攻撃を受け流し、その勢いを利用して反撃するカウンタースキルだ。

攻撃力の高いスキルも候補にはあった。

だが、このフロアでは銃士や盗賊など、人型NPCとの戦闘が増えると予想している。

正面から斬り合うよりも、相手の攻撃を利用して隙を突くほうが戦いやすい。

そう判断し、このスキルをセットした。

 

自分の準備が完了し、周りを見渡す。

どうやら皆も準備が出来たみたいだ。

 

「よし、行くよ…」

僕が確認すると、四人が静かに頷く。

 

樹は剣を握り直し、

優は双剣を構え、

聡は深く息を吐き、

ダルタニャーは大あくびをしている

(ちょっとは集中しろ!!)

 

そして僕は、カーソルを――

**『討伐を開始する』**へ合わせた。

 

決定ボタンを押した瞬間、執事NPCが重い扉をゆっくりと開いた。

 

ガァァァッ!!

 

低く唸る声と共に、数匹の犬が牙を剥き出しにしてこちらを睨みつけている。

現実でいうドーベルマンを一回り大きくしたような体格。

筋肉質な四肢に、鈍く光る鋭い牙。

 

(……結構強そうだ。)

 

僕たちは怯むことなく敷地へ踏み込み、それぞれ武器を構える。

その瞬間、視界に敵の名前が表示された。

 

野犬モンスターの名前は…Ironfang Guard Dog…鉄の牙の番犬か…

 

 

 

考える暇もなく、一体の野犬が牙を剥き、一直線に飛び掛かってきた。

 

「っ!」

 

咄嗟に《ファストブレード》を盾代わりに構える。

 

ガキィンッ!!

 

鋭い牙が刃に食い込み、腕へ重い衝撃が伝わる。

間近で見る牙は鈍く黒光りし、一噛みでも食らえばただでは済まないことを本能が告げていた。

 

「はあっ!」

 

力任せに剣を振り上げ、そのまま野犬を弾き飛ばす。

地面を何度も転がった野犬のHPが、約5%ほど削れた。

 

(思ったより硬い……。)

 

「玲!後ろ!」

優の声に反応し、後ろを振り向く。

すると、野犬がすでに僕にとびかかろうというところだった。

 

「しゃがんで!」

 

声にすぐさま反射し身を屈める。

すると僕の上をアタックスキルのエフェクトが走る。

見たことのない双剣のエフェクト、

交差した刃は飛び掛かった野犬の首元を鮮やかに切り裂き、そのまま大きく吹き飛ばす。

地面に叩き付けられた野犬のHPは、一気に六割近くまで減っていた。

 

(速っ……!)

 

「助かった!」

 

「なんのなんの!」

 

立ち上がると、優と軽くハイタッチを交わす。

 

「お前ら息ぴったりだな!さすが"日影コンビ"!」

 

「懐かしいね、そのコンビ名。」

 

思わず笑ってしまう。

 

「まだ11体残ってる。集中。」

 

聡の一言で、すぐに気持ちを切り替える。

 

 

野犬の正面に立ち、静かに剣を構える。

突進してくるタイミングに合わせ、《スラッシュ》を発動。

鋭い斬撃が野犬の腹を切り裂き、HPを削る。

 

ダメージを受けた野犬は怒り狂ったように唸り声を上げ、そのまま噛みつき攻撃のモーションへ移る。

 

(今――。)

 

《クロス・リタレーション》

 

ファストブレードが黄色い光を纏う。

 

ガキィンッ!!

 

野犬の牙を真正面から受け止めると、その勢いを利用して体勢を崩し、そのまま地面へ叩き伏せた。

 

「はあっ!」

 

返す刃が野犬の喉元を切り裂く。

カウンターは見事に決まり、野犬のHPはゼロになる。

次の瞬間、爆散エフェクトとともに光の粒となって消滅した。

 

 

こうして、僕たちは一体、また一体と野犬を討伐していった。

 

 

 

 

第5話へ続く…




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