Paradise Sixth ―楽園適性試験―    作:針々

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Stage2-2 銃士の条件。

「新システム…こんな時に…」

聡が苛立ちにも似た声を上げる

 

「皆にも出てるんだ、なんだろう、新システムって?」

 

「もしかして、この事じゃない?」

優が自分のメニュー画面に指を挿している。

 

それを3人で覗き込む。

 

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【システム通知】

 

プレイヤー同士の協力を促進するため

《ギルドシステム》が解放されました。

 

生存率向上のため、

ギルドへの所属を推奨します。

 

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▼解放機能

 

・ギルド結成

 

・メンバー位置共有

 

・緊急救援要請

 

・ギルド専用チャット

 

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ギルドを結成しますか?

 

▶ はい

 

 いいえ

 

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聡が訝しげに言う

「ギルドだって?」

 

 

(ギルドか、確かにRPGだと複数人でチームを組んだ方が生存率も高いけど…)

 

「楽しそうじゃん!俺らで組もうぜ!」

樹が提案する。

 

「うーん、メリットとデメリットが分からないとなんとも…」

聡が難色を示す。

 

「僕は組んでいた方が良いと思う…」

優が樹の案に賛成する。

 

「組んでいた方が、生存率は上がるだろうね…」

デスゲームと化したこの世界で、信頼できる仲間がいるといないとでは

生存率が変わってくるだろう…

そういう思考のもと、僕もそれに便乗した。

 

 

「生存率…確かに。」

僕の意見を受け、聡が折れてくれた。

 

「じゃあ、ポップアップのボタン押すね。」

優が自分の画面のボタンを押す。

 

すると僕、樹、聡の目の前に、

ギルド参加の意思表示を確認するポップアップが開いた。

 

樹と聡に目くばせをし、「参加」ボタンを押下する。

 

するとどうだろう、僕の視界の右上にある自分のHPゲージの他に、

3人分のHPバーが追加された。

 

(おお、これで皆の状況が分かりやすくなった。)

 

ギルドが結成された感動と、

3人の生存率が上がってほしいという期待を持ちながら。

HPバーを眺めていると、ポップアップが切り替わった。

 

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【推奨機能】

 

《ギルド共有ストレージ》

 

ギルドメンバー間で

アイテムを共有できます。

 

共有ストレージを利用することで

ギルド全体の生存率向上が期待されます。

 

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▼注意

 

共有ストレージへ預けたアイテムは

他メンバーによって使用される場合があります。

 

 

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アイテムストレージを共有しますか?

 

▶ はい

 

 いいえ

 

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「みんな、どうする?」

優が問いかける

 

「使えるアイテムが増えたほうが、生き残る可能性が高いと思う。」

ギルド結成の時とは異なり、今度は聡がストレージ共有の有用性を示す。

 

「賛成。」

 

「俺も。」

全員の回答が一致した。

3人の意思表示を確認し、代表して優が「はい」ボタンを押下する。

 

すると、僕たちのアイテムボックス容量が増え、

アイテムボックス内のアイテムも4人分に増えた。

 

「「おお〜!!」」

ボックス内のアイテムが増えたことでテンションが上がる

僕と樹。

 

優よ聡は、声こそあげなかったが、少しだけ頬を緩めている。

 

 

「ギルド名どうする?」

樹が皆んなに問いかける。

 

「はい!」

僕が元気よく挙手する!

それを見た樹が「どうぞ」のジェスチャーをする。

 

「漆黒の堕天使達ナイトメアダークネスブラックエンジェルズはどう?」

 

「かっこ悪い…」

 

「黒すぎだろ!大物政治家の裏金問題並みに真っ黒だぞ!」

 

樹に突っ込まれる。

優と聡は、くすりと小さく笑っただけだった。

 

「とりあえず、ギルド名は保留にしようか。」

落ち着いた声で優がそう言い、チーム名決めは延期となった。

 

新システムの設定にひと段落ついたところで、やっとのこと新フロアの風景を眺める。

目の前には石造りの高い城壁と、重厚な門がそびえている。

開いた門から覗くのは、石材やレンガ造りの建物だ。

どうやら今回は近世ヨーロッパが舞台らしい。

 

「うおおおおお!RPGっぽくなってきた!」

新しい冒険の匂いに樹のテンションは上りに上がっている。

 

「確かに、最初のフロアは現実と大差なかったからね」

樹のテンションにつられて、僕も少し声が大きくなる。

 

皆口々に感想を言いながら門をくぐる。

 

そして、その先の光景を見た瞬間。

 

「「「おーーーーー!!」」」

 

思わず声が漏れた。

 

石畳の大通り。赤い屋根の建物。通りを行き交う人々。

そして街の中央、小高い丘の上には巨大な白亜の城がそびえ立っている。

Alice inの不気味な城とは違い、この城は街の景色と調和していた。

まるで物語の中に迷い込んだかのような美しい光景だった。

 

「これは凄いな……」

聡も感嘆の声を上げる。

 

「とりあえず、近くまで行ってみようぜ!」

樹が待ちきれないのかうずうずしている。

 

でも、それは僕達も同じ

樹を先頭に城に向かって歩き出そう、そう思った瞬間。

 

ドンッ!!

 

NPCらしきキャラクターにぶつかられた!!

 

「いってーーー!」

トラのような縞模様を持つ猫型NPCが声を上げ、起き上がる。

続けて僕に突っかかってきた。

 

「おみゃーどこ見て歩いとるんじゃ!」

 

NPC Name

【D'Artagnya】

 

(ダルタニャー……って読むのか?)

 

 

 

 

しかし、勝手にぶつかってきて、おまけにキレられて黙っている僕ではない。

「はぁ?そっちがぶつかってきたんじゃん!」

 

僕の返事にNPCは怒ったようだ。

「剣を取れ!決闘ニャ!」

 

相手が猫だろうが、売られた勝負は買うのがポケモンマスター!!

僕はあえて、新調した黒銀のガントレットの手元をダルタニャーに見せつけるように、

ゆっくりと腰の剣を引き抜いた。

 

「やめときなよ……負け犬ならぬ、負け猫になるよ?」

 

 

そして、お互い一触即発の雰囲気…その時

 

「ストーーーーーーーーーップ!!!」

優が僕と猫NPCの間に入る。

 

「こんな街中で喧嘩をするな!みんなの迷惑になる!」

 

その声に気が付き、周りをみてみると、少しだがギャラリーが出来ている。

 

(せっかく猫型NPCと戦えると思ったのに…)

 

「う…ぐ…確かにこんな街中で剣を振り回すのは銃士ではない…」

 

猫型NPCはこちらに近づいてきて右手を差し出してくる。

「ぶつかったのは俺っちも悪かったにゃ、すまんかったにゃ」

 

(まぁそっちしか悪くないけどね…)

そう思いつつも優の手前、その手を握る。

 

「俺っちはダルタニャー、銃士になるためにこの街に来たんだにゃ」

 

「僕は玲、で右から優、樹、聡だよ。」

 

自己紹介を聞き、ダルタニャーはじっと僕達を見つめる。

「おお…よくよく見るとお前たちなかなかできそうにゃ…」

 

(フッ…今更僕の凄さに気が付いたか…(笑))

 

ダルタニャーが腕を組む。

 

「実は俺っち、銃士隊の入団試験を受ける仲間を探してるにゃ。」

 

「仲間?」

 

優が首をかしげる。

 

「そうにゃ!

試験は四人一組じゃないと受けられないんだにゃ!

優、樹、聡って言ったかにゃ?俺っちと一緒に銃士になるにゃ!」

 

 

(あ、あれ?ボクちんは?)

 

 

「俺っちと4人で四銃士になるにゃ!」

 

「うおおおおい、僕は!?」

 

「ああ、まだいたのかにゃ?うーん、

 よし!おみゃーは俺っちの従者にしてやるにゃ!」

 

(はああああああ?このクソ猫……ヒゲ全部ぶち抜くぞ……)

 

「「「あはははははっははっは!」」」

 

僕と猫型NPCのやり取りを聞いて、3人が爆笑している。

君たちちょっと笑いすぎでは……。

 

(でも、優と聡が声を上げて笑うのは、昨日の朝以来だった。)

 

それに気づいて、僕も少しだけ、嬉しくなる。

 

そんな僕の内心など気にする様子もなく、ダルタニャーは城の方を指差した。

 

「お前たち、城の前の掲示板は見たかにゃ?」

 

「い、いやっ、まだ見てないよ。」

先ほどの笑いを引きづっているのか、優が肩を震わせながら答える。

 

「そうかにゃ、なら一緒に行くにゃ!」

優の様子は気にせず、話を進めようとする。

しかし、僕達の目的はボス攻略、そのために情報収集をしなければならない。

ダルタニャーに付き合っている暇はないのだ…

 

「あー、悪いんだけど僕らちょっとやることがあるんだよね…」

 

(NPCといえど、誰かのお願いを断るのは心苦しいな……

こんな罪悪感を持つなんて、なんて優しいんだ僕は…)

 

「うーん?従者は別に試験を受けなくていいからついてこなくていいにゃよ?」

 

(またこのクソ猫!東京湾に沈めっぞ!)

 

「「「あはははははっははっは!」」」

 

またまた3人が爆笑…

しかし、ここまで人の笑いを取れたのは人生初なのでは!?

この猫と一緒にお笑いやってみようかな…

 

などど馬鹿なことを考えているとポップアップが開いた。

 

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【ギルド結成イベント】

 

《四銃士の条件》

 

ギルド結成を確認しました。

 

 

銃士見習い《ダルタニャー》がギルドに参加しました。

ダルタニャーと共に銃士隊入団試験へ挑戦してください。

 

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▼推奨人数

 

3人~

 

▼推奨レベル

 

10

 

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(推奨人数3人からか…プログラムにまでハブられる僕って一体…トホホ

 ていうか断る選択肢、実質なかったんかい!)

 

4人で目くばせをして、ダルタニャーに向き合う。

 

「じゃあ、銃士隊入団試験に行こう!」

僕がダルタニャーに話しかける。

 

「いや…だから従者は…」

 

「「「「そのくだりはもういいって!!」」」」

ダルタニャーが最後まで言い終わらないうちに、先に4人でツッコミを入れる。

そうして4人+1従者は城へと向かって歩き出した。

(だから誰が従者だ!)

 

 

城へと続く坂道はプレイヤーやNPCで賑わっている。

人間のNPCの他に、ダルタニャーのような獣人型NPCもちらほら見かけた。

そして道の脇には、出店や屋台が並んでおり――全方向から美味しそうな匂いが漂う。

 

「この街は建築や占いで有名にゃ。それに料理も絶品で、

 周辺の村からさまざまな食材が集まるから、

 この国でも一、二を争う食の都なんだにゃ!」

ダルタニャーがNPCらしく丁寧に説明してくれる。

 

「確かに美味そうな匂いする!あそこの出店の肉買おうぜ!おい従者、財布!」

匂いにつられて調子に乗った樹が言う。

 

「はいはただいま~って、誰が従者だ!

 樹、あとで泣かすから…」

 

色んなお店があるな〜とキョロキョロしながら歩いていると、ダルタニャーが言っていた立て看板前に着いた。

 

「これが銃士隊入団試験の内容か…」

 

どうやらこの城の門を潜れば、入団試験が開始されるらしい。

門を潜り、城の中庭に入る。

中庭は、庭木が綺麗に整えられており、

日当たりも良いため、ひなたぼっこには良さそうな場所だった。

 

中庭の真ん中によく見ると誰かが立っている。

近づいてみると、重厚な鎧を着た髭面の男が腕組をして立っていた。

 

「遅いぞ!走ってこんか!」

 

(うわっ!面倒くさい体育教師タイプか…)

 

現実世界で身に付いた癖により、ついつい駆け足になってしまう。

 

「私は銃士隊第4団団長、レッグストロングだ!

 お前たち、銃士隊の入団試験を受けに来たんだな?」

 

「銃士になるために来ましただにゃ!」

 

「よし!ならばこれからお前達に1つ目の試験の内容を言い渡す!」

 

(おおおっ!RPGあるあるのお使いクエスト第一弾!!)

 

どのような試験を言い渡されるのか、少し緊張し、生唾をごくりと飲み込む。

 

 

「一つ目の試験は…

 

 

 

 この城周辺の草むしりだ!!」

 

 

 

「な、なにーーー!!?」

 

あまりの拍子抜けした試験の内容に

昭和のコメディアンのように思わずずっこけてしまった。

 

「そこ!うるさいぞ!」

 

「え、えろうすんません…」

覚えたての関西弁でとりあえず謝罪する。

 

「ともかく、城の周りの草むしりを完了させるのがお前達の第一の試験だ!!

 以上、解散!!」

 

レッグストロング団長の解散の声を皮切りに、

一度全員で集合する。

 

「草むしりってまじかよ…銃士関係ねーじゃん。」

真っ当な意見だな樹…

 

「おみゃーら、さっさと行って終わらせるにゃ!」

 

「「「「お前も一緒にするんだよ!!!!」」」」

 

こうして4人+1従者の銃士になるための試練が始まった…

 

(あれ?目的ってそうだったっけ?)

 

 

 

第3話に続く…

 

 

 

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