ボーカロイドは概念曲が多くてとても好きです。
夏の東京の暑さは、想像の範疇を超えていた。
なんというか、暑さの種類が全く違った。最高気温こそ京都の方が高かったりするが、このジメジメとした湿気と籠ったような熱がずっと続くのは初めての体験だった。
けど、それに屈する訳にはいかない。私は、アルバイトと僅かの仕送りで生活する苦高校生なのだ。今日の日付から仕送りとお給料の日までを計算して、1日何円使えるかなんて日割り計算もし始めている。必要な事だけど、なんだか悲しいというか。
けど、そのくらいしなければいけないな、とも思う。初めての一人暮らし、何が起こる分からない先行きのない不安。お金はいくらあったって困らないけど、なかったら困るものだ。やはり、貯めれるだけ貯めておきたい。
だからこそ、私は冷房をつけないで夏を過ごした。めっちゃ暑かったけど。
扇風機をつけて、窓を開けて風の通り道を作った。ある程度はマシになったけど、肌に張り付くような汗は消えることはなかった。
夜寝る時とか、本当に最悪だった。勉強とかバイトとかで、ただでさえ睡眠時間が取れないのに、その少ない睡眠時間を阻害してくるのだ。ほんと、溜まったもんじゃない。
そんな夏も何とか乗り越えて、気が付けば10月。今年の秋はちゃんと存在感あるようで、薄いカーディガンを羽織るのが丁度いい季節になっていた。
歩いていく途中。いつもの待ち合わせ場所に、芦花と真実は居なかった。今日は2人して日直当番、一指先に向かっていると、朝連絡があった為、今日は独りだ。
一人、ワイヤレスイヤホンを取り出して耳にはめる。スマホで曲をタップして、流れる音に身を委ねる。
流れているのは、昨夜ピックアップした曲達だった。ヤチヨのカバーした曲から、平成時代に大ヒットしたボーカロイド曲まで、無作為に選んだものだった。
気に入った曲や、キーボードで映えそうな曲があったらそれをお気に入りにしておく。後でもう一度聞き直して、キーボードのアレンジを考える。
ある程度まとまったら、実際に弾いてみる。通しで弾いてみて、感触を確かめる。
曲によって、アレンジした方が良かったり、しない方が良かったりまちまちだった。アコースティック・ピアノ系の音色が良かったり、エレクトリック・ピアノの音色が良かったりした。オルガン系の、ジャズやポップスみたいなのも生きそうだった。
色々考えるのも楽しかったし、"やりたいことをやっている"という実感。それが一番気分を高揚させた。それに、やりたいと思っていることに
次の日には決まって、真実と芦花に心配されたけどね。生活費を稼ぐ為のバイトと勉強。音楽活動をやる生活は、全てが私にとって大事なもの。
……目の隈が取れず、隠せず。ちょっとのお色直しで隠しきれなかった時はすごく心配されたけど。
そんな生活の中で投稿できたのは4本だった。
初投稿から1ヶ月後と、そのまた2週間後にはTell your World"、"ロンリーユニバース"のピアノ演奏の動画を投稿した。
この二つは言うまでもない。ヤチヨがカバーした楽曲だ。
"Tell your World"はヤチヨの人が創造する文化、人の営みへのラブレターのようなものだと私は考えていて、"仮想世界ツクヨミ"において、ヤチヨがことある事に言う"皆誰もが表現者"という言葉の裏付けのようになっている。元々この曲はコンピューターでの歌声合成技術"ボーカロイド"の"初音ミク"という存在を通して、世界中の人が表現者、クリエイター、創造する人になってその輪を広げていくという曲だ。そこに含まれるのは、インターネット・カルチャーの肯定であり、人々が創造する文化へと肯定だ。クリエイターから受け手へ伝わって、受け手が表現者となる。表現者はまたリスナーへと伝えて、リスナーが創造する人になる。その構造は、黄金らせんのにも似ていて、似たような形の繰り返す成長みたいなものがそこにはあって。物事が成長する事には、似たような形があるからこそそこに美しさみたいなものを感じるんだと思う。だからこそヤチヨがこの"Tell your World"を歌うということは、外の人々。つまりは私達に向けた、創造する人とそれを拝受する人へとエールと、好意を伝える恋文とも言える。ヤチヨは電子の歌姫という存在だから、"人という文化への恋文"みたいな方がしっくりくるか。あと、だからこそヤチヨがよく言う8000歳という設定にもそれは生かされる形になって……。
……コホン。
兎に角、ヤチヨの並々ならぬ思いが溢れた曲なのだ。ミニ演奏会で弾いたということもあって、私としては是非弾きたい曲だったのだ。
次の"ロンリーユニバース"は、月見ヤチヨに対する解釈を進めるにあたって非常に良いものといえる。そもそもこの曲はタイトルの通り、
……ゴホン。
ヤチヨの選曲は、やはり素晴らしい。長々と話してしまったけど、それで良いだろう。
今、イヤホンからはヤチヨのカバーした曲が流れている。透き通って、晴れ渡るような歌声と共に、幻想的なメロディが流れている。
その曲に身を委ねながら、私は一人学校へと歩みを進める。
酒寄彩葉のヤチヨオタクが発生しました。
ちょっとブツ切りだけどゴミンネ
話ぐちゃぐちゃになりそうだったので……