チーズケーキに舌鼓を打つ。
真実の言う通り、中はトロトロで、外側はサクサクで。焦がしたチーズの香りが鼻の通りつつも、優しいく、濃厚な甘さが口の中に広がる。
値段相応。いや、それ以上の味だ。とんでもない幸福感が、私を襲ってきた。
「お、美味しい……! こんなの、今まで食べたことあらへん……!」
2回、3回と続けてケーキを口にする。
1ヶ月ぶりの、美味しい食事。最近はもやしとか、安い豆腐とか。そんなもので済ませていたので、体が喜びに満ちていくのを感じる。
「彩葉、こっちも食べる?」
「ショコラも美味しいよ~」
ぐいと差し出されるフォーク。それに乗った、1口大のラムチーズケーキとショコラチーズケーキ。
可愛らしい二人から渡されたそれを、私は1つづつ味わう。
芦花のは、ほんのり感じるチェリーとラム酒が大人の味わいを感じさせるし、真実のはショコラメインだけど微かに薫るラズベリーの様な酸味が中にある。本当に、美味しい。
代わりに2人にも、プレーンを切り分けて渡す。真実は遠慮なく、なんだったらフォークに乗ったまま食べたのに対し、芦花だけははちょっとだけ固まってから、お皿に移してからケーキを口にしていた。なんでだろう……?
「お待たせしました。季節の皿盛りショートケーキです」
不思議に思いつつも、チーズケーキをシェアしていると、私の目の前にお皿が置かれた。
純白のプレートの上に、山のようなクリームをお供にしたショートケーキ。紅く、大きい苺が主張するように乗っている。
他にもリンゴやバナナなどのフルーツが飾られている。綺麗に、チョコソースでデコレーションされており、粉砂糖も降ってあった。
ケーキの奥側には、食用なのだろうか。ピンク色の菊のような花が一輪咲いていた。
「こ、これは……?」
驚いて、ケーキを食べる手が止まる。何故か私も目の前に置かれた豪華なショートケーキは、甘く、フルーティな匂いを私に伝えてくる。
「おー、お洒落だねぇ」
「お花まで乗ってるの珍しいねぇ」
呑気に、そんな感想を呟く二人。当の私は、二人を見たりケーキを見たり。視線を忙しく、キョロキョロと忙しなくしてしまった。
そんな様子を見てか、真実と芦花は2人揃って言う。
「彩葉と友達記念~」
「記念品でーす。ご査収くださーい」
……マジか。
そんな感想がまず先に出てきた。
記念日のケーキだなんて、すごく久しぶりな気がした。
お父さんが居た頃は、皆で誕生日パーティなんていってケーキをつついたりしたけど、お空に行ってからはさっぱりだった。精々、夕飯の品が1品増えただけだったような気がする。
「彩葉、ここの所フラフラしてたもんね~。一人暮らしって大変そうだし……」
「甘いもの食べて、リフレッシュしよ!」
───私達、彩葉が元気なら良いから!
誕生日とかではない、ただの友達記念。なんて事ない、友人たちとの日常での一幕である。なんて暖かくて、なんて温もりがあるのだろう。なんて、綺麗な煌めく素敵な言葉を掛けてくれたのだろう。
思わず目尻に涙が滲む。人の温かさ、それも芯まで染み渡るようなものは久しぶりだった。
「二人とも……。ほんまにありがとう」
私はこの時。漸く、屈託の無い笑顔を浮かべられた気がする。