酒寄彩葉は音楽が好きだ。   作:冴月

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かなり短いけどキリがいいので。


②

 チーズケーキに舌鼓を打つ。

 真実の言う通り、中はトロトロで、外側はサクサクで。焦がしたチーズの香りが鼻の通りつつも、優しいく、濃厚な甘さが口の中に広がる。

 値段相応。いや、それ以上の味だ。とんでもない幸福感が、私を襲ってきた。

 

「お、美味しい……! こんなの、今まで食べたことあらへん……!」

 

 2回、3回と続けてケーキを口にする。

 1ヶ月ぶりの、美味しい食事。最近はもやしとか、安い豆腐とか。そんなもので済ませていたので、体が喜びに満ちていくのを感じる。

 

「彩葉、こっちも食べる?」

 

「ショコラも美味しいよ~」

 

 ぐいと差し出されるフォーク。それに乗った、1口大のラムチーズケーキとショコラチーズケーキ。

 可愛らしい二人から渡されたそれを、私は1つづつ味わう。

 芦花のは、ほんのり感じるチェリーとラム酒が大人の味わいを感じさせるし、真実のはショコラメインだけど微かに薫るラズベリーの様な酸味が中にある。本当に、美味しい。

 

 代わりに2人にも、プレーンを切り分けて渡す。真実は遠慮なく、なんだったらフォークに乗ったまま食べたのに対し、芦花だけははちょっとだけ固まってから、お皿に移してからケーキを口にしていた。なんでだろう……?

 

「お待たせしました。季節の皿盛りショートケーキです」

 

 不思議に思いつつも、チーズケーキをシェアしていると、私の目の前にお皿が置かれた。

 純白のプレートの上に、山のようなクリームをお供にしたショートケーキ。紅く、大きい苺が主張するように乗っている。

 他にもリンゴやバナナなどのフルーツが飾られている。綺麗に、チョコソースでデコレーションされており、粉砂糖も降ってあった。

 ケーキの奥側には、食用なのだろうか。ピンク色の菊のような花が一輪咲いていた。

 

「こ、これは……?」

 

 驚いて、ケーキを食べる手が止まる。何故か私も目の前に置かれた豪華なショートケーキは、甘く、フルーティな匂いを私に伝えてくる。

 

「おー、お洒落だねぇ」

 

「お花まで乗ってるの珍しいねぇ」

 

 呑気に、そんな感想を呟く二人。当の私は、二人を見たりケーキを見たり。視線を忙しく、キョロキョロと忙しなくしてしまった。

 そんな様子を見てか、真実と芦花は2人揃って言う。

 

「彩葉と友達記念~」

 

「記念品でーす。ご査収くださーい」

 

 ……マジか。

 そんな感想がまず先に出てきた。

 

 記念日のケーキだなんて、すごく久しぶりな気がした。

 お父さんが居た頃は、皆で誕生日パーティなんていってケーキをつついたりしたけど、お空に行ってからはさっぱりだった。精々、夕飯の品が1品増えただけだったような気がする。

 

「彩葉、ここの所フラフラしてたもんね~。一人暮らしって大変そうだし……」

 

「甘いもの食べて、リフレッシュしよ!」

 

 ───私達、彩葉が元気なら良いから!

 

 誕生日とかではない、ただの友達記念。なんて事ない、友人たちとの日常での一幕である。なんて暖かくて、なんて温もりがあるのだろう。なんて、綺麗な煌めく素敵な言葉を掛けてくれたのだろう。

 思わず目尻に涙が滲む。人の温かさ、それも芯まで染み渡るようなものは久しぶりだった。

 

「二人とも……。ほんまにありがとう」

 

 私はこの時。漸く、屈託の無い笑顔を浮かべられた気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

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