隣に住む高嶺の花な同級生が気づいたら子持ちライバーになってた【完結】 作:Tmouris_
かぐやを月から連れ戻した。
しばらく不安定だったヤチヨも、いつしか完全に安定して十年近くたった。
「パンケーキうまぁ!」
「いいなぁ。やっちょも食べたいなぁ」
「ちょっと!研究室食べカスで汚さないでよ?」
俺と彩葉は同じ研究室でとある研究を始めていた。
「よし、もう少しでヤチヨとかぐやのボディも完成だね」
「ん~なんか自分で自分の体見るのって変な気分かも」
かぐやは自分と全く同じ見た目のボディを覗き込む。
「私は分身とかでよく見てるから慣れっこかも」
研究と言うのは、ヤチヨとかぐやの人間としてのボディを作ることだった。
元はというと、ヤチヨが「私も月夜と同じお墓に入りたいな~私だけずっと残されるのは嫌だな」と俺たちの前でこぼしたところから始まった。
そう、ヤチヨもかぐやも不死の身。俺たちが残り数十年で寿命なのと違って、二人は俺たちがいなくなってから何十何百何千年と長い時を生き続けなくちゃいけない。
「かぐやは?」
「私も彩葉と一緒におばあちゃんになる!」
そこからはもう大変だった。
俺は特別勉強ができたわけじゃないのに、ヤチヨのために猛勉強して専門の大学に入って、卒業してからは彩葉の研究のサポートをしてる。
「アラフォーになる前までにはヤチヨと結婚式あげたいな」
ボディができても、ヤチヨは電子生命体で、はたからみたらロボットに見えるだろう。
だから、弁護士の彩葉のお母さんに協力を頼んでヤチヨとかぐやの人権問題にも取り組んでいる。
主に彩葉が。
「えへへ~私も早く月夜と結婚式あげたいな~婚姻届けとか一緒に役所に出しに行きたい」
「楽しみだな」
そんな明るい未来の話をしていると、分厚い資料の角で頭を後ろから小突かれる。
「こら、仕事中にイチャイチャしないの」
「彩葉だってかぐやとイチャコラしてるくせに」
「何か?」
「……なんでもないっす」
いと恐ろしや。彩葉は色々と吹っ切れたのかここ数年で大分素直になったというか図々しくなったというか、図太くなったというか。
「ていうか、世間は休日ですよ」
「私だって休みたいの!でも、前のライブで仕事が滞った分取り返さないとでしょ」
つい最近、俺たちは、俺とヤチヨ、彩葉とかぐやの四人で大きなコラボライブを行った。その時の埋め合わせで休日出勤になってるわけだ。
俺とヤチヨはかぐやを月から連れ戻してから、正式に二人グループでの活動を始めた。
そりゃ、最初こそバッシングを受けたりはした……主に俺が。
だけど、今ではすっかり受け入れられて、たまに赤スパで『はよ結婚しろ』とか『ご祝儀』ですとか飛んでくるくらいだ。
「月夜頑張れ~」
「ぐぐぐ……かぐやだって他人事じゃないんだからな」
こいつのボディにだけ脂肪がつきやすくなるように調整してやろうか。
「月夜!やっちょのために頑張って~」
「りょーかい」
「あー!ヤチヨとかぐやで対応違いすぎ!」
「はっはっは。親友と恋人の扱いが違うのなんて当たり前じゃないか」
おっと、こんなことしてたらまた彩葉に怒られてしまう。
「「おじゃましまーす」」
「いらっしゃい、芦花さんに真実さん」
芦花さんと真実さんとも未だに交流を続けている。彩葉っていう繋がりも強いけど、何かと相談に乗ってもらったりする心強い友達だ。
「差し入れもってきたから、みんなで食べてね」
差し入れの袋を机の上に置いてもらって、二人はかぐやとヤチヨのボディを覗き込む。
「やっほーお兄ちゃんが来たぞ~」
「っげ……帝だ」
芦花さんと真実さんに続いて、帝とノイと雷の三人組もやって来た。
「おぉ~月夜じゃん。この前は惜しかったな」
「まだまだヤチヨにおんぶにだっこだよ」
ヤチヨと二人でkessenモードに潜り続けて連勝を重ねてレートが上がったせいか、最近は暇つぶしにマッチングしているブラックオニキスたちとマッチングすることが増えてきた。
「それで?彩葉はいったい俺に何の用?」
「お兄ちゃんお願い!出資して欲しいの!」
そう、俺たちの研究室は今資金に困っていた。ボディの完成もほとんどできているんだけど、その最後の追い込みとボディにヤチヨとかぐやのデータを入れる技術を開発するのに資金が足りなかった。
「おいおい、俺をどんな富豪だと……」
「大丈夫!だってお兄ちゃん凄いもん!」
「そうだそうだ!ブラックオニキスはみんなに夢見せるのが仕事だろ~」
そこまで言うと、帝は「はぁ」とため息をつく。
「分かったよ。何とかする」
「俺とノイも協力しよう。たまには人の為っていうのも悪くない」
三人はブラックオニキスとして忙しい。それだけ話してささっと帰って行ってしまった。
「お兄ちゃんって!帝って!」
真実さんはアワアワとその場で固まって白目を向き掛けていた。
そう、真実さんは結婚した今でも、ブラックオニキスのガチファンのままだ。
「よし、これで資金問題解決!追い込むよ月夜!」
「はいはい。休みだけはちゃんとくれよ」
―――
「ヤチヨ覚悟はいい?」
「大丈夫だよ」
今回、ボディの完成にあたって俺たち四人はとある約束をした。
一つは、データのバックアップをもう取らない事。
二つは、データの復元をしないこと。
これによって、二人はボディに縛られて不死性から切り離される。
「ひたすらスペアのボディでテストはしたし、大丈夫だよかぐや」
「うん。ありがとうね彩葉」
そして、彩葉がスイッチを押すと、かぐやはまるでボディに吸い込まれるように薄れて消えて。画面越しのヤチヨも姿を消した。
俺と彩葉は固唾を飲んで、二人が動き出すのを待つ。短いようで何時間も待たされてる気分だった。
「月夜……月夜!」
眠っていたヤチヨは目を覚まして勢いよく俺に抱きついてくる。
「ヤチヨ。やっと会えたね」
「うん……想像してた通り、月夜温かいね」
ヤチヨは感極まって涙を流した。
「……なんか変わった?」
かぐやはというとあまり実感はないらしい。
まぁ、元々月から連れ戻った時点でこっちにいた時の肉体があったし、あんまり変化は感じないのかもしれない。
「これで、食べれば太るし、日に当たり続ければ日焼けするし。謎の宇宙人パワーも使えません!」
彩葉は鼻高らかにどや顔をして仁王立ち。
かぐやは「ん~」っと力を込めて何かをしようとするが何も起こらない。
「ほんとだ!髪の色も変えられない」
これで、本当の意味でヤチヨもかぐやも俺たちと同じ人間になった。
「よし、それじゃあお祝いにみんなでパンケーキでも食べよっか」
ここまでお付き合い下さりありがとうございました。
超かぐや姫の再上映に影響されて思いつきで書き始めましたが、個人的に満足しています。
このお話はIFの物語ではなく、劇場版でのかぐやが8000年前に戻ったら月夜がいたという別世界線のお話でした。
SFものは難しくタイムパラドックスやらなんやら考えることも多かったです。
まぁ、その辺はハチャメチャなかぐや姫なら許してくれると思います!
本当にお付き合いありがとうございました。