隣に住む高嶺の花な同級生が気づいたら子持ちライバーになってた 作:Tmouris_
目が覚めて、昨日のことが夢なんじゃないかと思いスマホを確認する。
だけど、連絡先に酒寄彩葉の文字がそこにあった。
正直、嬉しくて口元が緩んだ。
あの酒寄さんと連絡先を交換してこの後会う約束までしてるなんて昨日より前の俺なら思いもしなかっただろう。
そんなことを考えていると、さっそく酒寄さんからメッセージが飛んできた。
『助けて』
……朝から大変そうだ。
俺はちゃちゃっと支度をして、最後に鏡を見てから酒寄さんの家のインターホンを押す。
「月夜くん。入って入って」
部屋に入ると、床に敷かれている布団が濡れていた。
「あぁ……なるほど」
そりゃそうだよな。赤ん坊だしおもらしくらいするよね……
「ていうか、なんかでかくなってない?」
「やっぱりそう思う?」
沈黙が部屋に流れる。
いや、そんなことよりも、今はおむつを用意しないと。
「俺、急いで赤ちゃん用品買ってくるから、酒寄さんはこの子の面倒みてて」
「いや、私も一緒に行くよ」
「高校生二人が赤ん坊抱いて赤ちゃん用品なんて買ってたら傍から見てやばくない?」
うん。やっぱり買い物には一人で行こう。絵面が非常にまずい。
「……そうだね。わかった。この子の面倒見ておくからよろしくね。あ、レシート残しておいて」
「おっけー情けないながら割り勘でお願いします」
俺はそう言い残してアパートを後にした。
自転車に乗って、近くの赤ちゃん用品店の西竹屋に駆け込んだ。
「あらかじめやちに教えてもらってたけどおむつ高いな……」
ていうか、おむつ何種類もあるんだけどどれかえばいいんだよ!?
えっと、たしか昨日やちに送ってもらったリストには……1500円か。
面倒見るならおむつだけじゃなくて服とかも必要だし……ってこっちもちゃんと値段するし。
とりあえず、リストにあるものを片っ端からかごの中に詰め込んでいく。
「1万3243円になります」
二人で割り勘すれば6500円くらいか……まぁ、それくらいならなんとか。
「ふじゅpayで」
アパートへの帰り道、昨日のことや今日の買い物で少し疲れたのか、なぜか逆に冷静になっていた。
「なんで俺がこんなことを……」
いや、でもこれってチャンスなんじゃないか?
高校に入ってからろくに友達も出来ずにゲームとベースに明け暮れて、そんな俺に、ついにあの酒寄さんとお近づきになるチャンスが!
……馬鹿なことを考えるのはやめよう。どうせ俺なんかが異性として相手されるわけないし、なにより、今は目の前の問題を解決しないと。
―――
「ただいま戻りました」
「お帰り月夜くん。ごめんね買い物とか全部頼んじゃって。お金払うからレシートちょうだい」
ポケットからレシートを取り出して、酒寄さんに渡すと、レシートを見て酒寄さんは一瞬だけ固まった。
「1万3243円……でも、割り勘すれば6500円だし何とか……」
そうぶつぶつと何度も呟く声が俺の耳にまで届いてくる。
「俺が全部払おうか……?」
「いや、ダメ!ちゃんとお支払いします」
なんだろう、俺以上に金銭的に厳しそうな酒寄さんを見ていると、涙が出てきそうになる。
優等生でも裏では大変な思いしてるんだな。
ふじゅpayで割り勘分のお金を受け取ると、さっそくおむつを取り出して、赤ん坊に着けようとしてるんだけど、その手はぎこちない。
そりゃそうだよな、俺も酒寄さんも子育て経験なんてないんだから、こんなんできなくても仕方がない。
『やちって子育てのいろはとか知らないの?』
『さすがにそれぐらいはggr』
これに関しては調べるまでもなく、商品に説明書がついてるから、それを見ながら慣れるしかないか。
なんとかおむつを着けてあげると、赤ん坊は急にぐずり始めてわんわんと泣き始めた。
「もしかして、お腹空いてるんじゃない?」
俺たちは慌てて、買い物バッグを漁って哺乳瓶とミルクの粉を取り出した。
「酒寄さん、どうやるか知ってたりする?」
「知ってるわけないでしょ!?」
俺が説明書を読んで説明しながら、酒寄さんはお湯を温めて、何とか無事にミルクが完成した。
「はぁ……泣き止んだ」
酒寄さんは赤ん坊を寝かしつけると、溶けるようにうなだれていく。
「赤ちゃんって、夜泣きすごいらしいね」
「止めて!それ以上言わないで。分かってる分かってるから!」
布団に顔をうずめながらそう言う酒寄さんは、赤ん坊と同じように今にもぐずり出しそうに見えた。
なんか、やっぱりこういう酒寄さんを何度見ても新鮮だ。
学校で見ているしっかりものの酒寄さんからは想像もつかない。
「せっかくの連休だったのに……」
そうか、普段からテストでは全科目高得点、しかもバイトも結構していると噂では聞いてるし、ゆっくりできる貴重な休みだったのかもしれない。
「昼の間は俺がこの子の面倒見るから、酒寄さんはゆっくり休んでよ」
「いや、悪いよ!巻き込んだのはこっちだし」
「夜は面倒見てあげられないし、昼くらいは手伝わせて」
ここまで足をつっこんで何もしないっていうのも後味が悪いし、俺は別に普段から忙しいわけじゃないからな。
「分かった、ありがとう。そんじゃその辺でくつろいじゃっていいよ」
「おっけー……て、え?」
てっきり、赤ん坊を俺の部屋に連れて行って、俺が面倒見るんだと思ってたんだけど。
「おむつとかもろもろ全部私の部屋に置いちゃったし……変なことしないでよ」
ジトーっと俺の方を見てくる。
部屋において貰えるくらいには信用してもらえてるってことなんだろうか。
俺が赤ん坊の様子を見ていると、酒寄さんはスマホを取り出して、ツクヨミのゲーム合戦のsetunaモードの動画を見始めた。
「酒寄さんもゲームとかするんだ」
「意外?真のエリートは遊びもおろそかにしないと思うから」
まぁ……本人が言うならそうなんだろう。
俺は勉強はそこそこに遊んで一人で遊んでばっかりだしな。
「それにしてもこの狐スキンの人上手いね。結構やりこんでるのが分かる」
「月夜くんもツクヨミでゲームするんだね。前の試合結構上手くいったからリプレイ見とこうかと思って」
え……?これが酒寄さんのプレイ?
正確なエイムに計算された立ち回り、プロってほどじゃないけど、相当上澄みの方の実力だぞこれ。
「俺も合戦やるんだけどね。いまいちチームプレイが出来なくてさ」
たまには知らない人ともプレイすることはあるけど、今までずっとやちと組んでやってきたから、いまいち足並みが揃わないんだよな。
setunaはそこそこ戦えるけど、酒寄さんに勝てるかどうか怪しい。
「sengoku難しいよね。三対三で考えることも多いし」
二人でゲームトークに花を咲かせながら、俺はよちよちと布団から落ちそうな赤ん坊をキャッチする。
目を離すと何をするか分からないから本当に油断できないな……
「そういえば、ヤチヨのことも推してるんだね」
推してるというレベルでいいのだろうか、祭壇まで作ってるし。
「うん、ヤチヨ可愛いし、面白いし、歌うまいし。見てると元気になれるんだよね。月夜くんもファン?」
「いや~嫌いなわけじゃないんだけど、知り合いと重なっちゃって……」
ヤチヨのビジュアルはドストライクだし、歌も話も面白いと思う。だけど、ときよりその姿がやちと重なっていまいち推すまではいかないんだよな……
これも全部やちがヤチヨみたいな言動をするのが悪いんだ。
「とりあえず、今日は俺はこの辺で」
「うん。またなんかあったら呼ぶからよろしく」
部屋に戻ると、どっと疲れが出て来た。
慣れない買い物をしたり、赤ん坊の面倒を見たり、あの酒寄さんと一日中一緒にいて緊張したりと、諸々の疲れが溜まってたんだろうな。
俺はささっと風呂を済ませて布団で横になる。
『赤ん坊の世話って大変なんだな』
『月夜やっぱりパパになったの?相手はコウノトリさん?』
うんうん。自然に煽りをいれてくるけど、この程度じゃ反応したりしない。
『ああ、それがゲーミング電柱なんだよな』
いつもなら既読がついてからすぐに返信が返ってくるのに、その時だけはなぜか返信が遅くて、しばらくしてからメッセージが返ってきた。
『なにそれうける。ま、頑張ってね~』
そんなくだらないやり取りをしていたら、気がつけば俺の意識は遠ざかって眠りについていた。
―――
ドンドン!ドンドン!
壁を叩く音に目を覚まされて、時計を確認すると0:55を表示していた。
……冗談で言ったつもりだったけど、マジで壁ドンで呼び出されるとは思わなかった。
超かぐや姫!の再上映でモチベーションバク上がり中です。
映画館で見るのもやっぱり乙なもの感じます。
第一話から多くのUAにお気に入り登録、評価までいただいて本当にありがとうございます。
モチベーションになるので気に入ったらポチってやってください。