隣に住む高嶺の花な同級生が気づいたら子持ちライバーになってた 作:Tmouris_
登校の準備をして、スマホの画面を開いてメッセージを確認する。
今日は、酒寄さんからのメッセージは何も来ていなくて、ため息をつきながら肩を落とすと、メッセージの通知音が鳴った。
急いで画面を確認すると、やちから『残念でした~』と一文だけ送られてきた。
『うっさい』
っと、こんなことしてないでさっさと学校行かないと。連休明け早々遅刻できないし。
玄関を開けて外に出ると、ちょうど隣から月から来た少女が部屋から出ようとしていたところだった。
「……何してんの」
「月夜!?いや、彩葉には来るなって言われたけど一人だと暇だし。学校ってどんなところかなぁって」
なるほど、ようは暇つぶしに酒寄さんに相手にしてもらうために学校までついていこうとしたわけか。
「そんなことしたら酒寄さんの迷惑になるでしょうが」
そう言って、軽くデコピンをすると「痛ったー!」と大げさにリアクションをとられた。
「でもでも!暇なんだもん!あんな部屋に閉じ込められてたら私死んじゃう!」
腰にしがみつかれて、振り払おうとしても振り払えない。
「ちょっと待って!遅刻する!遅刻するって!」
「お願い……助けてぇ?」
お腹に顔をうずめられて上目遣いでお願いされる。
「それはずるいでしょ……」
結局、学校の場所と終わる時間を教えるから、せめて放課後までは我慢してとお願いして離してもらえた。
ぎりぎり遅刻にはならずにすんで、息を整えながら椅子に座ると、前の方の席に座る酒寄さんと目が合った。
軽く手でも振ろうと思ったけど……そんなことしたら周りからどんな勘ぐりをされるか分からなかったのでやめておく。
あっちも友達の綾紬さんと諌山さんが一緒にいたので、すぐに視線を二人の方に戻した。
結局、その後も顔を合わせることはあっても、会話をすることもなく放課後を迎えた。
「やっぱり、あの連休の日々は夢だったんじゃないか……?」
そんなことをぼやいていると、横から急に右腕を引っ張られる。
「うわ!なに!?」
「月夜、しー!」
校門の入口には例の少女が待ち伏せして隠れており、俺の腕を掴んで離さない。
「本当に来たの!?酒寄さんに怒られるよ?」
「へへん。だから尾行するの」
……これ、俺も一緒に怒られることになるのだろうか。
結局俺たち二人は、酒寄さん、綾紬さんに諌山さんの三人を尾行することになった。
後ろの方からついていっているせいで話している内容までは分からないけど、何やら楽しそうでうらやましい。
「学校じゃ月夜は彩葉と一緒じゃないの?」
「酒寄さんは、俺にとっちゃ高嶺の花なんだよ。俺は別に顔がいいわけでもないし、勉強ができるわけでもないから。そんな俺が急に学校で酒寄さんと仲良くしてたらやばいの」
そうだ、改めて考えれば俺と酒寄さんがお近づきになるなんて夢のまた夢だったんだ。
「月夜は彩葉と仲良くなりたくないの?」
「そりゃ!……なりたいけど」
声をかける勇気もなければ、接点……はあるけど特殊過ぎるし。
友達も恋人もできないことをやちに愚痴った時には『へたれ』って煽られたのを今でも覚えている。
「ていうか、なんで酒寄さんは名前呼びで俺は苗字呼びなんだ?」
「うーん……?なんとなく?なんかこっちのほうがピンとくるんだよね」
どういうこっちゃ。
「ほら、そんなこと言ってたら彩葉たちにおいてかれちゃう」
あぁ!もうどうにでもなれ!
三人は最近新しくできたカフェに入って行き、俺はそこで少女の腕を掴んで止めようとした。
「さすがにこれ以上はばれちゃうから!」
「やだやだ!私もあそこ行きたい!」
「行きたいって……あそこがなんの店か知ってるの?」
そう言うと、彼女はふるふると首を横に振るので、俺はカフェがどういうところか説明した。
「とにかく、これ以上はついてっちゃダメだから」
と、説明を終えて目を開けて前を見ると……すでに少女はいなくなっていた。
慌てて、カフェの方を振り向くと、店に入っていく姿が見える。
「いただきま……えっあ」
急いで追いかけて来たけど、間に合わなかったか……
そこには、酒寄さんのパンケーキを一段奪い取って頬張る少女がいた。
「うま~。っよ彩葉」
「ごめん……酒寄さん。止められなかった」
俺は少女の後ろで手を合わせながら頭を下げる。
「え~可愛い。彩葉の友達?あと、同級生の月夜くん?だっけ。やっほー」
パンケーキを頬張る少女を見ながら綾紬さんが俺にも手を振ってくれる。
綾紬さんは美容系ライバーで十万人程度の登録者を持つ、俺にとっては酒寄さん並みに天上のお人だ。
少女は酒寄さんのパンケーキを食べた挙句、綾紬さんにもパンケーキを分けてもらって喜んでいた。
「パンケーキ?これが?彩葉のと全然違う!」
酒寄さんってメシマズなんだろうか……でも、頭が良くて優等生な人ほど料理ができないなんてことも……そんなことを考えながら酒寄さんの方をちらりと見ると、『料理くらいできるから、あと、なんでここに二人でいるの』という圧を感じた。
「いや、友達っていうか、その」
「月から来たの!」
――終わった。
せっかく酒寄さんが言い訳を考えていたのに、この子はあっさりそれをぶち壊してしまった。
でも、さすがは酒寄さん。そこからのフォローが早かった。
「つ~つつ築地だよね!私のいとこ!」
上手い!流石酒寄さん。仕事が早い!
「お名前は?」
しかし、綾紬さんの追撃が続く。
名前……ずっと、あなたとかって呼んでて名前聞いてなかったけど……いや、多分名前も無いんだと思う。
月から来た美少女……いや、やっぱりあの名前しかないだろ。
「あーこの子はかぐやって言うんだ」
すかさず俺もフォローすると、酒寄さんも合わせるように「そ、そうかぐや」と口裏を合わせてくれた。
かぐやも名前を気に入ったようで、えへへと笑っている。
「ごめん帰る!ありがとうねごちそうさまー!」
酒寄さんはかぐやの手を引っ張って、そのまま店を後にした。
そして、それに乗り遅れてとてもとても気まずい俺なのですが。
「それで~月夜くんは彩葉とどういう関係なの~?」
にやにやする二人から詰め寄られて椅子に座らされる。
「いや、酒寄さんとは偶然アパートの部屋が隣で?そこで面識があったというかなんというか」
やばい、普段人とあまり話さないせいで一人だと良い言い訳が全く思い浮かばない。
「ふむふむ。実質の同棲状態と」
諌山さんは顎に指をあてて、名推理をしたと言わんばかりのどや顔をしてくる。
「そうなの!?」
「違うから!」
綾紬さんが机から乗り出して聞いてくるもんだから、思わず口調が崩れる。
「あ、そ、そう。かぐやが今酒寄さんのところに住んでてさ。偶然遊びに絡まれたんだよね。そこからかぐや繋がりで話したりするんだよ」
よし、我ながら上手い言い訳を考えたんだ。
「あーなるほどね。かぐやちゃん元気いっぱいだったもんね」
「ていうかさ~月夜くん学校とイメージ違うね。もっとお堅いイメージだと思ってた。あんまり人と話してるの見たことないし」
諌山さんに痛い所をつかれる。
「いや~……人に話しかけるのとかあんまり得意じゃなくて。あと、勉強とかよりゲームとかの方が全然するから」
俺ってはたから見たら、周りと関わらないで勉強してるみたいに見られていたのか。
「そうなん?じゃあ今度うちらとも一緒にやろーよ。彩葉めっちゃゲーム上手いから。私のことは芦花って呼んで」
「私は真実。よろしくね~」
俺はこうして、クラスの高嶺の花二人の連絡先をあっという間に手に入れた。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
2000UA突破して色んな人に見てもらえて嬉しいです。
また、感想、お気に入り登録と評価をいただいて嬉しい限りです。
マイペースに更新していくのでよろしくお願いします〜