隣に住む高嶺の花な同級生が気づいたら子持ちライバーになってた   作:Tmouris_

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第五話:スマコン

「正気!?正体バレたらどうすんの!?」

 

「だって、つまんないんだもん」

 

二人との会話を早めに切り上げて、外に出ると、絶賛かぐやにブチ切れ中の酒寄さんの姿が。

 

「あと!なんで月夜くんも一緒にいるわけ!?」

 

「あはは、それはノリというか流れというか……止められずすいません」

 

なんかいたたまれなくて、俺はぺこりと頭を下げた。

実際これって俺が悪いのか?家から出てきたかぐやが悪くないか?

 

「月夜はね。彩葉と仲良くなりたいんだって」

 

「かぐやさん!?急に何言ってるんですか!?」

 

あわわと慌てふためいていると、ジトーっとした目で酒寄さんが見つめてくる。

 

「はぁ、別に今更でしょ。かぐやの面倒を見るので世話になったし。気軽に彩葉って呼んでよ」

 

「じゃあ、よろしくお願いします……彩葉さん」

 

彩葉さんの後ろでガッツポーズをするかぐやにイラつきながらも、今回ばかりは感謝しておこう。

 

「ねえ、そういえばこれってどうやって使うの」

 

そう言いながら、かぐやはポケットからスマコンを取り出した。

 

「私のスマコン?持ってきた?」

 

「彩葉のノートPCで買えた」

 

「は?」

 

ふむ……なにか嫌な予感がする。いや、予感じゃなくて事実をかぐやが語ってるんだけど。

 

彩葉さんはスマホを取り出すと、急いで自分の貯金残高を確認している。

そして、体を震えさせながら彩葉さんは完全に固まってしまった。

 

「……いくら減ってる?」

 

「12万4400円」

 

さすがの俺も言葉に詰まった。俺たち高校生からしたら12万円なんてかなりの高額だ。

 

「死ぬ気で貯めたんですけど……死ぬ気で貯めたんですけどぉ!?」

 

あまりのショックに涙を流す彩葉さんに目も当てられない。

 

「かぐやがした出費だし……俺も半分払うよ」

 

「そ、そんな悪いって」

 

「ここまで来たら、かぐやの問題を全部彩葉さんに押し付けられないよ」

 

でも、6万は大きい出費だ。どこかで節約しないと……

 

「で、でも、銀行?のデータ書き換えればウォレットの数字増やせるぽかったよ。やる?」

 

「「ぜったいしないでよ!」」

 

冗談で言ってるのか分からないけど、かぐやなら本気でやりかねない気がするから恐ろしい。

 

「ていうか、そろそろ帰って勉強しないと」

 

彩葉さんはため息をつきながら帰路につく。

かぐやと俺はその背中を追うように後をついていった。

 

アパートについて、時計を確認する。気が付けばもう飯時で腹も減ってきた。

 

なんか食べるもんあったっけかなぁ……

 

そんなことを考えながら自分の部屋の玄関のドアノブに手をかけたところで、かぐやが俺の手をとった。

 

「月夜も一緒にご飯食べないの?」

 

「え?えー!」

 

というわけで、彩葉さんのお家で食卓を囲むことになったわけで。緊張で食事が喉を通る気がしない。

 

「ていうか、めっちゃいい匂いするんだけど、かぐやって料理できるの?」

 

「任せんしゃい!」

 

どうやら自信満々らしい。一体いつの間に料理なんて学んだんだ。さすが宇宙人。俺たちの考えの範疇を超えている。

 

一方で、部屋に帰って来てから速攻で机に向かって勉強に専念している彩葉さん。

どんな勉強してるんだろうと思い、ふと覗き込んでみると、ちょうど歴史の問題集を解いている最中だった。

 

「あ、そこ間違えてる」

 

「え、あ、本当だ」

 

彩葉さんは修正テープで正しい答えを書き直す。

気づいただけで正しい答えを書けるのはさすがと言わざるを得ない。

 

「というか、月夜くんよくわかったね。これ、東大の模擬問題なんだけど」

 

「あ~歴史だけは得意なんだよね」

 

やちが無駄に歴史に詳しくて、昔から色んな話を聞かされてたせいか社会系の問題にはめっぽう強くなった。

 

「じゃあ、こことかも分かる?」

 

「えっと、これはね」

 

なんか心安らぐ。やちの提案で勉強を教えてもらうつもりが、俺があの彩葉さんに勉強を教えることになるなんて。

 

「ほら!二人ともご飯できたよ!」

 

俺たちが食卓につくと、次々とかぐやが料理を運んでくる。

 

「まずは!生のとうもろこしから作ったポタージュ」

 

想像していたものよりもめっちゃしっかりした料理が出てきて、俺は唖然とする。

これって、お店とかで出てくるような料理じゃん。材料代とか準備も大変だったんじゃ……

 

「これも、ウォレットで?」

 

彩葉さんが変な汗を流しながらプルプルと震えている。

 

「片付けくらいはするよ……食べさせてもらってるし」

 

俺は彩葉さんの肩にぽんと手を乗せて、キッチンの惨状を直視する。

そりゃこんだけ本格的にいろいろ作れば使った食器類も多いことだろうし。

 

絶望している彩葉さんの口の中に、かぐやがポタージュを突っ込む。

 

「お金がないのよ……貧乏なのよ。こちとら必死に学費稼いでんのよ」

 

金欠なんだろうなとは思ってたけど……まさか、自分で学費まで払って生活費まで稼いでんのかこの人。それであの成績維持してるの?やばすぎでは?

 

「何なのよ、美味いじゃないのよ。何なのよあんた」

 

彩葉さんは涙を流しながらポタージュを口に運んでいく。

 

「久しぶりの美味しいご飯で体が喜びに満ち溢れていくじゃないのよ……」

 

……なんだろう、聞いてるこっちが切なくて泣きそうになってくる。

彩葉さんも俺が想像してる以上に苦労してるんだろうな。

 

食事を終えると、かぐやはノートPCに向かって何か打ち込んでるし、彩葉さんはお腹を休めている。

 

「あのさ、マジでここでは匿えないよ?」

 

彩葉さんの小言をよそにかぐやはノートPCに向き合って、何かを完成させたようだった。

 

「できた!」

 

「ハッ!まさかサイバー犯罪とかじゃないですよね!?」

 

「いやいや、彩葉さんいくらかぐやでもそんなことは……そんなことは……」

 

『で、でも、銀行?のデータ書き換えればウォレットの数字増やせるぽかったよ。やる?』

 

否定しきれない俺がいる。

 

「携帯ゲームキット買ったんだ~」

 

どうやら、キットの犬DOGEという犬のペットを作っていたらしい。

サイバー犯罪とかじゃなくてよかった。なぜか知らないけど、かぐやがプログラムとか電子機器全般に強すぎる。

 

その後も、彩葉さんとかぐやが言い争っていると、彩葉さんのスマホと俺のスマホのアラームが鳴った。

 

「この時間までに予習やるつもりが……」

 

「この時間にアラーム鳴ったってことは彩葉さんもヤチヨのミニライブ?」

 

「え、月夜くんも?推しじゃないって言ってなかったっけ」

 

確かに推しではない。どっかの誰かが脳裏にちらつくせいで。だけど、だからこそなのだろうか。

 

「なんか、見守るっていうか、目が離せないんだよね」

 

「ふーん。じゃあ一緒に行こうか」

 

え、彩葉さんと一緒にミニライブ?何それ緊張するんですけど。ライブの内容入ってくるかな……いや、かぐやも一緒だし大丈夫か。

 

「何?二人でどっか行くの?またかぐやを置いてくの?」

 

かぐやは泣きながら彩葉さんの腰に縋りつくように抱きしめる。

 

「この映えないつまんない家でかぐやは一人で……」

 

こいつ、匿ってもらってる癖に随分な言いようだな……

 

「マジで迎えが来るまでだかんね……いい!?」

 

……そして、彩葉さんは彩葉さんでかぐやに弱いというかチョロいというか。

 

―――

 

「お待たせ、彩葉さんだよね?」

 

「やっほ、じゃあそっちは月夜くん?」

 

狐耳に尻尾。リアルでも可愛いけど、アバターも相当可愛い。

 

かくいう俺は白髪に狼の耳に尻尾がついてリアルとは似ても似つかないかもしれない……いや、顔の地味さはリアルと同じだから分かりやすいか。

 

挨拶もほどほどに、チュートリアル終わりのかぐやがログインの鳥居から出てきた。

 

「いこ」

 

彩葉さんの後を俺とかぐやでついていくと、街が見えてきた。相変わらずツクヨミは夜の街なのに光り輝いてる。

 

それを見て、かぐやのテンションは爆上がりして、一気に階段を駆け上ってご機嫌に駆け出して行く。

 

「迷子になるぞ~」

 

俺と彩葉さんはそんなかぐやを見て顔を見合わせると、クスっと二人で笑ってあとを追いかける。

 

 

 




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