隣に住む高嶺の花な同級生が気づいたら子持ちライバーになってた 作:Tmouris_
朝起きて、適当に朝食をとって着替えを済ませる。
そして、彩葉さんの家のインターホンを押す。
昨日、かぐやがあんなこと言った後、隣の部屋からなんか言い争ってる声が聞こえたし、早めにかぐやの相手してあげないと彩葉さんも大変だろう。
玄関が開いたと思ったら、金髪のかぐやが扉から顔を出した。
「なんでもう金髪なの……」
「う~ん……宇宙人パワー?」
理解の範疇越えし宇宙人め……
「まあ、そんなことより入って入って」
招かれるまま家の中に入ると、彩葉さんがなにやらスケジュール表を張り出していた。
よく見ると、終業式からの夏休みのスケジュール表っぽいけど……すごいなこれ。
一か月の間に三日間しか休日ないし、あとはバイトと勉強で全部埋まってる。
これが、あの学校での優等生の正体かと驚愕していると、かぐやはあわあわと焦り始める。
「え~やだぁ。かぐやと遊んでぇ?」
「一日とて無駄にできないから邪魔禁止ね」
「えー!やだっぴー!」
かぐやが駄々をこねて、暴れまわると机に頭をぶつけて分厚い参考書がばたばたと落ちてきて追撃する。
「ま、まあまあ。俺が相手してあげるからね?かぐや?」
「えぇ三人で遊びたい」
こいつ、俺のせっかくのフォローを……かぐやと話しているとたまにやちと話している時のイライラを感じさせられることがあるから不思議なもんだ。
「追い出すよ?で?あれらは?」
彩葉さん怖いです。鬼の形相とはまさにこのこと。
その視線の先には大量のガラクタ……おもちゃ?が山積みになっていた。
「配信用!全部百均だから大丈夫!」
かぐや、多分彩葉さんはそういうことを言っているわけじゃないと思うが。
そんな怒っている彩葉さんをよそに、かぐやはノートPCを取り出した。
「ねえ見て見て!ライバー始めたんだ。どう?」
昨日の今日でもう配信準備まで済ませて、配信まで始めたのか……さすが電子機器に強い宇宙人。
画面の中ではかぐやが手書きしたであろうかぐやの立ち絵が動いて「かぐやっほー」と挨拶をしている。
だけど、そんなことはどうでもよくて、後ろから流れる不協和音のBGMが気になって仕方がない。
「っん?おいおいおい顔出ししてるじゃん!」
最後、配信を切る時に画面にはもろかぐやの顔が映っていた。
「え?別によくない?」
まあ、ライバーとして人気になっていくならかぐやのビジュアルを使わない手はないか……本人も気にしてないみたいだし。
「ていうか、この曲誰が作ったの?まさか彩葉さん……なわけないか」
「かぐや!」
いや、だろうな。音楽の授業で彩葉さんめちゃくちゃピアノ上手かったし。
「……コードどうなってんのこれ」
「分かる。不安になるこの不協和音はなんだ」
「うぅ、ストップ」
あまりに酷い音に彩葉さんは頭を抱えて、かぐやに動画を止めさせた。
「ていうか、どうやって曲を……あっ私のキーボード!勝手に出さないでよ~」
あ〜やっぱり経験者だったんだ。自前でキーボード持ってるくらいだから結構弾いてたんだろうな。
「いっちょお願いしますよ先生」
かぐやが彩葉さんの前にキーボードを置いて、曲の催促をする。
「あっちょっと待ってて」
俺は急いで部屋に置いてあるベースと機材を手に取って彩葉さんの部屋に戻る。
「せっかくだから音合わせようよ」
「え、なに?月夜ベース弾けんの?弦いっぱいついててすげ~」
やちの歌を一人で支えるなら六弦は欲しかったから必死になって練習したんだ。
「へー意外。月夜くん音楽とか興味とかあったんだ」
「ま、色々とあってね」
「じゃあ、ちょっとだけだよ」
彩葉さんはキーボードに指を伸ばすが、少しだけ固まってるように見えた。
「どうかした?」
「ううん、なんでもない。いくよ」
即興で作ったメロディに合わせて俺も、ベースの弦を弾く。
「わぁ~天才!すごすぎる」
どうやらかぐやさんもご満悦の様子。
彩葉さんも褒められて嬉しかったのか口元が緩んでる。
「もっかい!エンドレスで!」
興が乗ったのか、彩葉さんはご機嫌にメロディを奏でる。俺もそれを支えるように音を乗せる。
「彩葉も月夜もすごい!あ、そうだ!」
かぐやは立ち上がって俺たちを交互に見る。
「彩葉と月夜の曲を私が歌えば大バズ確定じゃん!」
……曲作りか。弾くのは得意だけどその辺はあんまり手を出してないんだよな。そりゃ簡単な即興くらいならできるけども。
「彩葉さんお願いします」
俺がぺこりと頭を下げると、彩葉さんは手を横にぶんぶんと振る。
「いやいや、カバーでいいじゃん」
「いや~!オリジナルがい~い~」
かぐやならそう言うだろうと思ってたけど。曲作りとなると、彩葉さんのスケジュール的にかなり無理があるんじゃ。
すると、彩葉さんはしぶしぶとノートPCをいじり始めて、一つのフォルダを開いた。
「大昔のやつ、もはや黒歴史だよ」
そこには何個かの音楽ファイルが入っていた。これ、全部彩葉さんが作ったのか。すごいな。
俺とかぐやで一つずつイヤホンをつけて曲を聞く。
うん、すごくいい曲だ。
かぐやなんて目をキラキラさせながらノリノリで、即興で歌詞までつけてるし。こいつもこいつで天才的だな。
「彩葉、月夜!プロデューサーになって!一緒にヤチヨカップ優勝しよう。このボロアパートから伝説が始まる」
「「ボロアパート言うな」」
だけどなぁ……現実的に考えると――
「無理です。それに邪魔しないならここにいていいって言ったでしょ」
「ねえ彩葉」
ピンッと何かを思いついたかのように、速攻で姿勢を落として、上目遣いで彩葉さんのことを見上げるかぐや。
「このまま終わりたくない……ハッピーエンドにしたいな」
少し涙目なところも余計に露骨なんだけど。
「それ、ズルくない……?」
彩葉さんには特攻がついているご様子。
「よし!それじゃ、俺はこの辺で……」
「逃がすと思ってるのかなぁ!月夜くんも付き合ってもらうよ!」
デスヨネ。
「それで、当面の目標はどうするの?」
俺がそう質問すると、ペンと紙をかぐやが取り出して、ちゃちゃちゃっとなにか目標を書き上げた。
『ヤチヨカップゆーしょーまでのみちのり』
・いっぱいはいしんを見てもらう
・ふじゅ〜をかせぎまくり
・りょうりもべんきょーす
・ライブもやっちゃう!!
大雑把にも程がある……
「俺から提案があります」
「はい月夜!」
俺とかぐやで机を囲み、彩葉さんは勉強をしながら作戦会議に参加する。
「かぐやはビジュがいいんだからそこを活かさない手はないと思うんだ」
「え〜照れちゃう。もしかして、口説いてる?」
うぜぇ……っとこれくらいの冗談は受け流さないと今後やってられない。
「こほん。だから、顔出しをしながら踊ってみたとか、ゲーム配信とかしていくのが安牌だと思うんだけどどうでしょう彩葉さん」
「私、勉強してるんだけど月夜くん」
「そこをなんとか!」
俺が手を合わせて頭を下げると、ため息をつきながら体をこちらに向けてくれた。
「私だって見る専でそういうのあんまり詳しくないんだけど……まあ、かぐやのビジュがいいのは確かだしいいんじゃない」
彩葉さんも賛成っと。
あとは当の本人のかぐやだけど……こっちは問題なさそうだな。
ビジュアルを俺たちに褒められたのが嬉しかったのか「えへへ」と照れてる。
「ライブについては今有識者に意見を求めてる」
「おーナイス月夜!」
ちょうどやちからメッセージの返信が来る。
『そうだな〜最初の間はツクヨミで路上ライブしながら歌ってみたの動画上げてコツコツ露出を増やすところからかな?』
「だそうです」
「やったー!ならさっそく彩葉の曲に歌詞つけるぞー!」
ライブの方針も決まってご機嫌なかぐやはルンルンで歌詞付けを始めた。
『ありがとう。でも、いいの?ライバーやってるからには敵に塩を送る行為じゃない?』
『ふっふっふ。これでも月夜の親友だからね。応援してるよ』
急にこういうこと言ってくるのは反則だと思うんだ。
UA3000突破に評価に赤バーついててめっちゃ嬉しいです。
色んな人に見てもらえてるんだな〜ってしみじみ思う限り。
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