スーパーロボット、異世界転移してモンスターをブチのめす 改稿版 作:NNNNkynskylove
西暦20XX年、世界は未曾有の危機に瀕していた。
狂気の天才科学者、Dr.ゼロが26体の征服ロボを造り上げ、全世界へ宣戦を布告したのだ。
Dr.ゼロの開発した超技術、
既存兵器の常識を覆す永久機関を搭載した征服ロボたちの力は凄まじく、各国は瞬く間にその脅威に屈した。
ただひとつ、日本という極東の島国をのぞいては。
征服ロボの一体、“X”のチップを持つ機体をDr.ゼロから奪取し、その力で悪と対峙するひとりの少年がいたのだ。
少年の名は
そして彼の駆るマシンの名を、∞チップのナンバーと同じく“エックス”といった。
海斗とエックスの逆襲と反撃によって、Dr.ゼロの率いる征服ロボは一体また一体と撃破され、勢いを取り戻した各国機関の協力もあり、悪の拠点は次々と攻略され無力化されていった。
そしてその長きにわたる戦いも、ここに終幕を迎えようとしていた――
だが。
「ば、馬鹿な……ッ! 敗れるというのか、この儂が、儂の夢が、世界征服という空前の大偉業が! おのれエックス――おのれ、鉄、海斗ォッ!」
「負け犬が吠えてんじゃねえよ、Dr.ゼロ! 寝ぼけた夢で世界中さんざん振り回しやがって、偉業どころか大迷惑だろうが! 悪の天才科学者が聞いて呆れるぜ、寝言はあの世で言ってろクソジジイ!」
コックピットからモニター越しに、地に倒れた積年の宿敵へと指を突きつけて、海斗は叫んだ。
機体の動きもそれに追従し、鋼の威容を誇るスーパーロボット・エックスが同じように、打ち倒した敵機体――Dr.ゼロの搭乗機に指先を向ける。
敵機の姿は、王者の威風を感じさせる豪壮で優美なものだったが――
半壊し、胸部装甲を黒く巨大な剣で貫かれた今となっては、その威厳も型無しだ。
剣はそのまま貫通し、敵機体を空中要塞の床に串刺しにしている。
ただしダメージはこちらの機体、エックスもほとんど同様だった。
全身を覆う黒の装甲はひしゃげて、割れ、砕け、半ば地金がむき出しの有様である。
破損は表面だけでなく内部にまで深刻に及んでおり、操縦席のモニターは半分方がブラックアウト。
残り半分も『
そんな中で、コンソールの隅にある“Q”という文字のアイコンがちかちか瞬くと、無機質な電子音声が響いた。
『ここが年貢の納め時ということです、Dr.ゼロ。我が創造主。私の“Q”と、そしてその依り代でもあるこの機体、“X”の∞チップを創り出した――』
「黙れ、“Q”! チップに宿った仮想人格ごときが、この儂を愚弄するか!」
『
「仲間だと? たかが反逆したAI風情が、思い上がったことを――」
声を荒らげるDr.ゼロの、その呼吸の隙を見計らって、海斗は鼻を鳴らして笑った。
「はっ。冗談言うなよ、てめえら。このポンコツが仲間なんて御大層な代物かってーの」
『そういう一端の口を利くのは、私の補助なしでエックスを完全稼働させられるようになってからどうぞ?
「もうそんな機会もないだろうけどな。なにせ、敵の親玉がこの有様だ」
「ふざけるな! 儂はまだ負けておらんっ!」
往生際悪く叫んで、Dr.ゼロが半壊した機体をなおも駆動させる。
が、巨体の中心部を貫く黒い剣に阻まれて、残った右腕で刀身を掴むのが精々だ。
刃を引き抜こうともがくが、ちぎれかけの鋼腕にはもはやそんな力は残っていない。
それでもその気迫に危険な予感を覚えて、海斗は苦くうめいた。
「……∞チップごと貫かれて、まだそれだけ動きやがるのか。いい加減てめえも大したタマだな、ジジイ」
「当たり前だ、この儂を誰だと思っておるか! 世界を征し、世界を平らげ、未知への地平を切り拓く破界の王者、Dr.ゼロ! この程度で終わってなるものか、無限の未来と可能性を、この手に掴むまでは……!」
異様なまでの執念に満ちた、しかし、意味の分からないうわ言のような言葉。
だがそれを叫んだ時には、既に異変は始まっていた。
「ぬおおおおおっ!」
「な……馬鹿な、こいつ!?」
『敵機体中枢部で、エネルギー反応増大! これは……!』
押し詰まったクオの声がコックピットに響く。
そして目の前では、確かに機能停止寸前だったはずのDr.ゼロの機体が、その身を貫く大剣を掴んで押し返し、起き上がり始めていた。
のみならず、その巨影の輪郭が不可思議に揺らぎ、震えて、さながら黒い虹とでも言うべき異様な輝きに包まれていく――!
その光の正体を悟って、海斗は強く舌を打った。
「野郎ォ、この期に及んで∞チップの
「知れたこと! 今、この基地中枢部には“A”から“Z”まで、貴様らのものを含めて26個すべての∞チップが在る。その力を我が機体に残った全エネルギーで強制連結させ、次元境界面の壁を打ち破るのよ!」
『馬鹿げています。風穴の開いたその機体では次元破壊の衝撃には耐えきれない。死ぬ気ですか、Dr.ゼロ――』
「我が野望のためならばなァァッ!」
クオが言いかけたのを、Dr.ゼロが狂気めいた絶叫で遮る。
それを聞いて、海斗は毒づくように叫び返した。
「ふざけんな! 死ぬならひとりで死にやがれ、クソジジイが!」
『暴走を止めるなら今しかありません。海斗、一刻も早くトドメを!』
「無駄だ! いかなエックスといえど、一度起動した我が計画の最終機構を止める
「てめえの都合なんざ知るかボケェ! できるできないじゃねえ、俺がやるっつったらやるんだよ! 行くぞクオ、意地と、道理で――」
『――よせ、海斗! 今すぐそこから離脱するんだ!』
突如、第三者の声が操縦席に響いた。
まだ無事だった正面モニターの端にウィンドウが開き、ひどいノイズが走る中から、そこに壮年の男性の顔を浮かび上がらせる。
よく見知った人物だ。
寸刻を惜しむ状況だが、海斗はそちらに注意を向けた。
「蛮堂博士! けど、こいつを放置するわけには」
『Dr.ゼロの機体エネルギーは限界に達している、下手に刺激するほうが危険だ! なにより、お前を犠牲になどできるものか――今、復旧した回線を使って飛行ユニットを遠隔で飛ばそうと試みている! それで要塞基地から脱出するんだ!』
「――――」
しばし、ほんの少しの間だけ、沈黙して――
海斗は、ふっと笑った。
「ありがとな、
『な――だが、それならすぐに回収機を飛ばして』
「だから」
と、海斗は正面に向き直り、牙をむくようにしてさらに笑った。
Dr.ゼロの搭乗機は、さらに
巨大な剣の拘束ももはや破られ、放り捨てられた刃が床に跳ねて、広い空間の反対側に転がっていった。
それを視界の端で見やって、海斗は、掴み直したレバーを握り込んで――
「どのみちこの場を切り抜けるには、こいつを完膚なきまでブチのめすしかねえんだ。ジジイが持ってる∞チップを全部奪い返して――その力で、地上めがけて墜落してる真っ最中の空中要塞を、丸ごと吹っ飛ばす!」
『無茶だ、たとえDr.ゼロを倒しても、それではお前たちが脱出する猶予など――』
「フハハハハ! やれるものならやってみるがいい、青二才が! システム・オーバーロード――儂は、世界を、ついに世界のすべてを手に入れるのだ!」
臨界に達したDr.ゼロの機体が、そこから放たれる赫々たる光と影が、虚ろな陽炎のように燃え上がり――
海斗は握り換えた武装桿の先端スイッチを押し込んで、身構えた。
「……“X”チップ、
「世界を我が手に――アルファオメガ・
「意地と、道理で、推して参るッ!
瞬間、Dr.ゼロの機体から膨れ上がる黒い虹光と、エックスの胸部から放たれた十字の爆光が激突した。
熱と衝撃が走り抜け、音と空間が掻き混ざり、交差して、そして――
「――――!」
海斗の身体と意識は、そこで光の奔流に呑まれて、一瞬で蒸発するように消失した。