スーパーロボット、異世界転移してモンスターをブチのめす 改稿版   作:NNNNkynskylove

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第4話 これがウルトラ・バトル・フロン…

 到着したレムリアの屋敷は、小高い丘のようになった場所に建っていた。

 その一角、ダイニングにある大きな食卓にそれぞれ腰掛けて。

 

「さて、こうして場を改めたわけだけど。海斗。君に頼みがあるんだ」

「頼み?」

 

 そう言ってくるレムリアは、先ほどまでと装いを変えていた。

 おそらく外向けだったのだろう、白く豪奢な装飾の施されていたドレス姿から、どこかツナギを思わせるような青いラフなワンピース姿に。

 元がドレスなのは同じっぽいが、今の服はあちこちが改造(?)されていて、半ば作業着のように見えるのはいったいどうしたことなのだろう。

 

 こういう言い方もなんだが、あんまり"ファンタジーのお姫様"という感じはしない。

 ただ一方で、レムリアのイメージにはむしろ合っていた。

 

 レムリアはうなずいて続けた。

 

「さっき見た通り、道中でも話した通り、私たちは大きな戦いの真っ最中だ。紅蓮の獅子王"ゲヘナ"、そしてその配下である三獣士(さんじゅうし)が率いる魔物たちの軍勢、魔王軍――その脅威から無辜の人々を守るためのね。正直に言おう、劣勢だ。至高神によって封印されたゲヘナがこの世界に蘇ってから五十余年、既に、いくつもの国が滅ぼされている」

「そんなに長い戦いなのか……」

 

 かいつまんだレムリアの言葉だが、先ほどの女性の涙を見た後では重いものだ。

 あの涙はあの場だけのものではなく、数限りない戦場の中で流されてきたということ。

 

「次はハイペリオン王国の番かもしれない……そうはさせない、と言いたいけれどね。でも、私たちより強大な国はいくつもあったのに、それらがことごとく敗北してきたという現実がある。知恵と勇気とマンフレートは言ったけど、それだけじゃあ不十分なんだ。端的に、もっと力がいる」

「それだけ国と軍とに戦力差があるならな。それで? つまり、俺に言いたいのは――」

「そう。協力してほしい。君の持つ科学の力を、私たちと、私たちの街を守るために提供してもらいたいんだ」

 

 そういう流れになるだろう。

 海斗も予想していた通りではある。

 

 しかし、レムリアの言うことは、まったくそのままというわけではなかった。

 

「同情を買おうとしているのは分かってるよ。カルカッド夫人……元夫人との、さっきの一幕を見られたなら、なおさらだ。それに、私の言うことの危険性も理解している」

「それは、どういう」

「海斗にとって、このアル・アハドの事情は他人事だ。そちらの立場を想像すれば、異世界の戦争に肩入れしていいのかっていう葛藤はもっともだろう。私たちの魔法と違い、誰にでも――無知な子どもにでも扱える、使えてしまうという科学技術となれば、なおさらだ」

「…………」

 

 言語化できないまでも、その予感と危惧があったのは事実だった。

 まだ形にならない違和感まで見抜かれていた。

 

 レムリアがテーブルの上の拳を握りながら、言った。

 

「口惜しいけど、私には戦う力はない。その素養と資格がないんだ、勇気を持って剣を振るう、そんな風に王国を背負える勇者の器じゃない。立場と責任のある身なのに、本当に自分が情けないよ」

「矢面に立つだけが戦いじゃないだろ。現にお前は、この姫都市ってのを守ってきたんだろ?」

「それはそうさ。言っただろ、立場と責任だよ。私なりにできることは精一杯やってきた――でも、それじゃ足りないこともあるんだ」

「それは――」

 

 その通りかもしれないが。

 海斗だって、偶然と成り行きからエックスという"戦う力"を手に入れただけで、そうでなければ地球を守る戦いなどできなかっただろう。

 

 言葉に詰まる海斗に、レムリアは机に両手をついて、深く頭を下げた。

 

「恥を承知でお願いする。私たちに力を貸してくれないか。もちろん、君が元の世界に戻る方法なら一緒に探すし、可能な限りの協力もする。当面のこの街での生活も保障する――対価として釣り合うかは、海斗次第だけど」

「……釣り合ってるかは怪しいな。だって、断ったからって街から追い出したりはしないんだろ?」

「それはもちろん。違う世界の住人とはいえ、身勝手な理由で見捨てていいことにはならない。迫害は忌むべき理不尽だよ」

 

 そう言い切ってくれる気持ちのいい相手だから、なおさら困るのだ。

 果たして海斗の一存で、この戦いに加担していいものかどうか。

 

 が、それを考えるより先に、割り込むように電子の声が響いた。

 

『――そういう事情であれば、答えは決まっていますよ、レムリア。どうせ海斗は一も二もなく協力します』

「え?」

「ええっ?」

 

 困惑はレムリアと海斗、双方のものだった。

 この場における第三の声は続ける。

 

『すみませんが海斗、聞き耳を立てさせていただいていました。エックスの損傷チェックを走らせる間、どうしても退屈だったので』

「なっ、なんだいなんだいその声は!? それも機械技術っていうものの産物なのかな!? 君は誰なんだ!?」

『厳密に機械かというと怪しいですね。我ながら、なにせオーバーテクノロジーが過ぎるもので』

 

 食い気味に興奮しかかるレムリアに、相棒……クオが冷静に答えてみせた。

 

 海斗は嘆息して、声を上げる首元のバッジ、兼通信機を外した。

 食卓の上に置いて、じとっと睨みつける。

 いや、視線が届くわけではないのだから無意味だが。

 

「クオ……お前な、そういう真似はするなって言うの、これ何回目だ? 大事な話をしてたらどうするんだよ」

『していたじゃないですか、大事な話。海斗が言いにくそうだから代わりに答えただけのことです。それこそ、私たちはいつもそうでしょう?』

「だからってお前――」

「その小さな装飾品がしゃべってるってことかい!? 機械っていうのは人格も持つのか、それは凄い! 喋るアイテムというと、伝説のインテリジェンスソードなんかの魔道具があるけど、こんなに小型のものは聞いたことないなあ! 君、名前は?」

『クオといいます。よろしくレムリア』

「ああっ、ぜひともよろしくしてくれたまえよ! なんて興味深いんだ! ええと、海斗、クオ、失礼ながらちょっと触ってみてもいいかな? どういう仕組みの、いったいなんなのか、とても知らずにはいられないんだよーっ!」

「こっちはこっちでまた始まってるし」

 

 海斗は若干げっそりしながら、興奮して席を立ってぎゅんっと駆け寄ってくるレムリアから、きもち距離を取った。

 正直、あの馬車で質問攻めされたのがかなり堪えていて。

 

 十字型の(というよりXの形の)クロス・バッジを手に取り、小躍りするみたいにはしゃぐレムリア。

 その姿からはさっきのような、姫としての威厳ある様子は欠片もうかがえない。

 

 ギャップと落差になんとも言えない気分になるが……

 一方で、海斗はこうも思っていた。

 

(要するに、こっちが素なんだよな)

 

 年頃の子どもが、しかつめらしくしているよりはよほどいい。

 行き過ぎなぐらいでちょうどいいのだ、本来なら、素直にのびのびと。

 

 それができない世界のほうが間違っている。

 戦火や戦乱などないほうがいい。

 それは当たり前の、良識以前の事実だった。

 

 そういう意味で、クオの言った通り、先のレムリアの頼みへの答えは決まっていたのだ。

 たとえ違う世界の人間であっても。

 

 流れる涙や血など、少ないほうが、いいや、ないほうがいい。

 

 当然にそう考えて、海斗は改めて口を開いた。

 

「分かったよ、レムリア。俺たちはお前に協力する。微力ながら力を尽くす――なーんてヌルいことは言わねえ。まあ、これでもあっちの世界じゃ"鋼のプロ喧嘩屋"とか"メガトン級番長"とか"迷惑なぐらい救世主"なんて呼ばれてたんだ。大船に乗った気で任しとけ」

「本当かい!? それは嬉しいし、とても助かるけれど……なんだか奇妙な二つ名を持ってるね、海斗は」

「そうか?」

 

 適当に返事して、海斗は、レムリアに右手を差し出した。

 開いた手のひらを見つめてきょとんとするレムリアに、ああ、と気がついて告げる。

 

「握手っていうんだよ。俺たちの世界での、なんていうか、約束とか挨拶だな」

「なるほどそういうことか。なんとなく分かるよ。じゃあ海斗、改めまして」

「おう。よろしくな」

 

 そうして、レムリアが同じように右手を差し出してきて――

 しかし。

 

「……うっ!?」

 

 手が触れ合う寸前で、レムリアがうめいて背を丸めた。

 歩いてもいないのに足がもつれ、転びかけるが、どうにか近くのサイドテーブルに片手をついてこらえる。

 

「お、おい? 大丈夫か?」

 

 突然胸を押さえて苦しみ出したレムリアに、その様子を測りかねて、海斗は戸惑う。

 だが、異変はそれで終わらなかった。

 

 その時、レムリアの身体から――押さえたその胸元から、金色の輝きが溢れ出した。

 光はホタルのような粒子を飛ばしながら膨れ上がり、レムリアの苦しげな声がそのたび上がる。

 そして徐々に、形を帯びていく――レムリアの身体の中から生え出すようにして。

 

 やがて輝きが収まると。

 

『これはいったい……』

 

 かしゃん、と床に落とされた通信機から、クオが疑問の声を上げた。

 無論、海斗も同じ心境だった。

 

 レムリアの腕に抱かれるように現れたのは、一振りの直剣だった。

 宝玉で飾られた柄と鍔、鞘に収まってこそいるものの、まるでその威力と切れ味が想像できるような剛荘な造り。

 

 レムリアが身に帯びていたものではない。

 見たままを言うなら、彼女の体内から取り出された、いや、顕現したということになるのか?

 それこそ、まるで魔法のように。

 

 状況は分からないが――

 レムリアがうんざりとつぶやいた声には、不穏さと緊張感が滲み出していた。

 

「グランタイズ(・・・・・・)……どうせ使えやしないのに、こんな時ばっかり」

 

 重たげな剣を、その切っ先を杖代わりに床について、レムリアは鬱陶しげに言う。

 と、彼女はこちらに振り返ってきて、告げた。

 

「海斗。すまないけれど、握手はまた今度だ。今すぐ避難してくれ」

「え?」

「やつらが来た」

 

 レムリアが言った、その直後だった。

 

 突如として響いた爆音と地鳴りが、屋敷を……いや。

 このエクセルシオールの街全体を揺るがした。

 

「ぐおっ……!?」

 

 揺らぐ足元に、どうにか海斗はその場で踏ん張った。

 咄嗟に食堂の窓から外を見て……

 

 目を瞠った。

 

「城壁が……」

 

 崩れていた。

 街全体を覆う巨大な壁、その正面に当たる部分がごっそりと吹き飛んでいる。

 まるで巨大な嵐か、炎に巻かれた隕石でも直撃したように。

 

 破片がぶすぶすと黒煙と、炎の帯を上げていた。

 外周に近い街の建物が巻き込まれ、倒壊した家から人々が駆け出して、逃げ去っていくのも小さく見える。

 

 瓦礫の山が積み上がり、降り注ぐ火の粉が引火して、街が炎に呑まれていく。

 平和だった街が戦場へ変わる――レムリアの街が、エクセルシオールが。

 

「くっ……! なんてことだ、完全に後手だ! つくづく役立たずだな、勇者の剣のくせに!」

 

 悔しげにうめくレムリアの声。

 その心境は完全には分からないまでも、推し量ることはできた。

 その悲痛なほどの辛さ、悲しみもだ。

 

 それから遅れて、街中に早鐘の音が大きく響き渡った。

 続いて悲鳴、それに焦燥の気配も。

 

 状況は読めないが、明らかに緊迫した報せだった。

 

 さらに、クオが言ってきた。

 

『海斗! エックスの視野でも、上空からこの街へ強襲した不明存在(UNKNOWN)を確認! いえ、それにしても……あの姿はいったい』

「魔王軍の三獣士。その一体だよ」

 

 戸惑いを浮かべるクオの声、そして海斗に、短く答えたのはレムリア。

 先ほどの剣を抱えて、足早に部屋の外へ向かいながら。

 

「前線砦での情報じゃ、あいつが攻めてくるまでは猶予があるはずだったのに……! いや、あんなケダモノどもには言うだけ無駄か。ともかく司令塔へ向かわないと」

「お、おい! レムリア、お前まさか、戦うつもりなのか!?」

 

 先だっての戦い、魔物の群れに襲われて、悲鳴を上げていた少女の姿を思い出す。

 

 彼女には悪いが、あんなザマではまともな戦いなどできないだろう。

 指揮であれなんであれ、戦(いくさ)に向いているとは到底思えない。

 

 しかし、レムリアは振り返りもしなかった。

 慌てて床に落ちたバッジを拾い、廊下を走って追いかける海斗に、彼女は背中で告げる。

 

「つもりもなにも、それが責務だよ。世界の命運とまで言えなくても、私はこの街の領主なんだ。まさか逃げろなんて言わないでくれたまえよ」

「っ、それはお前が俺に言ったことだろ!」

「これは私の戦いなんだよ、でも、海斗にはまだ関係ない! たとえ私が今日死んだとしても、さっきの約束を反故(ほご)にはしないでくれ!」

「…………!」

 

 それで分かった。

 だから逃げろと言ったのだ、レムリアは。

 

 海斗の持つ技術や知識が必要になるのは戦いにではなく、その備えとして。

 だから、命を賭ける戦場にまで出てくれと、頼んだ覚えはないということだろう。

 

 咄嗟に口ごもり、足を止めてしまった時には、レムリアは屋敷を飛び出してしまっていた。

 残されて、ひとり。

 

 いや、通信機越しにクオが言ってきた。

 

『――どうするつもりですか? 海斗』

「どうするって……どうしようがあるんだよ。あいつは覚悟を決めていた、そういう目をしてたんだ。だったら、止めるなんてできるわけない」

 

 元の世界でも何度となく見てきた、戦意に満ちた眼差しだ。

 

 それは戦いに奮い立つだけの色ではない。

 守りたいもの、守らなければならないもの、それを、たとえ命に替えても守り通すという決意だ。

 止められるはずがない――否、止めていいはずがない。

 

 が、クオが言ってきたのは、そういうことではなかった。

 

『レムリアのことは、正直まだ分かりませんが。私はあなたに訊いているんですよ。海斗(マスター)』

「…………」

 

 口の達者なAIだ。

 腹立たしいほどに。

 

「くそっ」

 

 やむにやまれぬ思いで、海斗も遅れて走り出した。

 屋敷を飛び出して――

 

 そして、その声を聞いた。

 

【シャーッハッハァー! ゴキゲンようだぜ、クソったれのニンゲンども! このナグルファル様の足元をうろちょろ這い回って嗅ぎ回りやがって、鬱陶しいったらないぜ死ねェェ!】

 

「ぐ……っ!?」

 

 それは耳で聞くのではなく、頭の中に直接響くような邪声だった。

 大気をビリビリと震わせているのは、それとは別のもの。

 

 再度、街が激震に襲われる……城壁がさらに吹き飛ばされる。

 炎と瓦礫が撒き散らされ、悲鳴と絶叫とパニックが広がる。

 

 それらが詳細に見えたわけではないが、元の世界で何度となく感じてきた、悪い意味で馴染みのある気配だった。

 戦いと、それに巻き込まれる民衆の嘆きの声。

 マンフレートが言ったように、決して慣れてはいけない光景がそこに具現してしまう。

 

 崩落した外壁から、街の外の景色が視界に映り込んだ。

 丘の上から見渡すように。

 ――そして海斗は、その存在を目に映した。

 

「ドラゴン……」

 

 それは、まさにそう呼ぶしかない姿形をしていた。

 

 黒い鱗に覆われた巨体。

 距離があるため見定めづらいが、おそらく全長なら優に三十メートルを超えるだろう。

 コウモリのような翼を荊棘(おどろ)に広げ、天地を鳴動させて咆哮する姿は、悪夢的を通り越していっそ戯画のようですらあった。

 

 開いた大口からは真っ赤な火の残滓がバチバチと弾けていて、それが放った炎が街の城壁を破壊したのだろうと容易に想像できる。

 ドラゴン、ナグルファルがさらに邪念の声で吠えた。

 

【皆殺しのォー! 時間だぜっ! シャハハハハハー!】

 

 さらにもう一発、今度ははっきり視認できた、邪竜の口から吐き出された火炎の塊が街の一角に着弾して爆発する。

 火の手が上がり、いくつもの悲鳴が上がり、悲痛な声とともに人々が逃げ惑う。

 混乱と混沌が急加速していく。

 

 涙と血が、流れる――!

 

「――俺がどうしたいか、って聞いたな。クオ」

 

 手の中のバッジを、首元の定位置に収め直して。

 告げる。

 

「どうやら、俺たちがこの世界でやることは決まったみたいだぜ」

『ほほう。つまり?』

 

 明らかに分かって問いかけてくるクオに、海斗は無言で応えた。

 腰元の鞘からアブソリュート(ABS)・イクスメタル(-MX)製のナイフを抜き放ち、それを天へと、突きつけるように掲げる。

 

 陽光を反射して煌めく刃。

 その輝きに向けるようにして、海斗は叫んだ。

 

「サモン・コール・クオーツ――来いっ、エックス!」

 

 刹那、刃の先端から稲妻のような光が弾け、彼方の空へとほとばしった。

 

 輝きは一瞬。

 しかして一秒の間も置かず、海斗の目の前に光が飛来して突き刺さった。

 

 爆音と爆風が吹き荒び、街並みの木々や草花、背後の屋敷の装飾と、海斗自身の髪までを震わせる。

 帯となった光は流星のような橋を架け、鋼の巨体をここに顕現させた。

 

 全高25メートル、重量32トン。

 無骨(ハード)で肉厚(マッシブ)な黒い機体(マシン)。

 その名はエックス。

 

 一度は世界を救った――そして、今度は"この世界"(アル・アハド)をも救う名だ!

 

 邪竜の思念が、疑問と戸惑いの声を響かせた。

 

【なっ、なんだあ!? ニンゲンどもめ、ゴーレムなんぞ造りやがったのか! 小癪なヤツらめ、だが、アクパーラのジジイの真似事なんぞで、このオレ様を倒せるとでも……】

 

「ぎゃんぎゃんうるせえんだよ、トカゲ野郎ぉー! こいつの名前はエックス――ゴーレムなんて代物じゃねえ!」

 

【な、なにを言っていやがる!? そんな言葉は聞いたことも……いや、それよりも、たかがニンゲンごときがこのオレ様の思念に割り込んだだと!?】

 

「そこを動くなクソボケトカゲ! すぐにカタぁ嵌(ハ)めてやるからよ!」

 

 驚愕の声を上げるドラゴンを尻目に、エックスの頭部が本体から分離して、飛行ユニット――フライヤーとなって海斗の目の前に接地する。

 

 コックピットの遮蔽(キャノピー)が開くと、海斗はすぐさまフライヤーに飛び乗った。

 操縦桿(レバー)を握って機影を浮かせ、遮蔽を閉じながら急上昇、急旋回。

 さらに操縦桿を傾けて、黒鉄(くろがね)の巨人へと機影の先端を向けた。

 

「クロス・オン!」

 

 巨人と機影がひとつとなり、鋭い双眸(ツインアイ)が稲妻のように燃え開く。

 轟く鋼鉄の咆哮(エグゾーストノート)を唸らせて、最強のスーパーロボットが異世界の大地に仁王立つ。

 圧倒的な迫力と威容でもって、街を、そしてそれを脅かす巨大なモンスターの姿を見下ろす。

 

 ドラゴン――ナグルファルが、憎悪に満ちた邪声を張り上げた。

 

【キサマぁ……! このオレ様を見下すな、コケ威(おど)しも大概にしろ! そんなに死にたいんなら、ああいいぜ、この薄汚ェニンゲンの街もろとも焼き払ってやる!】

 

『海斗! 敵性体、ナグルファルの口内で高エネルギー反応増大! 火炎放射を放つものと思われます!』

「三下ゼリフのまんま、分かりやすいトカゲだな! だが、させるかよ! 行くぞクオ!」

『了解(サー)、認証しました(イエッサー)、鉄海斗(マイマスター)!』

 

 ナグルファルの大口の中に渦巻く、巨大な炎の塊。

 その脅威を推し量りながら、なおも海斗は不敵に笑った。

 

 なるほど大した威力だろう。

 先に街の外壁を吹き飛ばした火炎弾に倍する、いいや、明らかにそれ以上の全力攻撃。

 まともに浴びせられれば、エクセルシオールの街は壊滅的な被害を被ってしまう。

 

 海斗は操縦桿とフットペダルを操作して、エックスの巨体で大地を蹴った。

 十メートル近く大きく飛び上がり、そのままバーニアを吹かして街の上空を滑空。

 

 そして宙で機体の身をひねり、右腕を大きく振りかぶった。

 武装桿へ握り換えて、そのスイッチを力強く押し込むとともに、音声入力の武器を起動した。

 

「ぶっ飛ばして――ぶっ倒す! 喰らえ鉄拳、クロスカッターパンチ!」

 

 十字の刃を展開した右前腕部が、強壮推進剤の白煙を噴きながら撃ち出された。

 鋼鉄の拳が空を切り裂き、照準(LOCK ON)した目標へと突き進む。

 すなわちドラゴン、ナグルファルの、その横っ面へと。

 

【なっ……ぐあああ!】

 

 急襲をまともに喰らって、ナグルファルが濁った悲鳴とともに横合いへ吹っ飛ぶ。

 その勢いでドラゴンブレスの狙いも逸れ、火炎は街とは見当外れの明後日の方向に降り注いだ。

 

「おらあぁぁぁっ!」

 

 さらに海斗は追撃した。

 バーニアの制御で空中で姿勢を変え、パンチを撃ち出した勢いから巨体を横へ一回転。

 

 どうせやるなら、派手に大胆に。

 豪快無双かつ、ダイナミックにだ。

 

 飛び込む勢いをそのまま、ドラゴンの胴体部へ豪脚を叩き込んだ。

 

【ぐげェ……ッ!】

 

 潰れたような声を上げて、ドラゴンの巨躯がまた大きく吹き飛ぶ。

 

 ――即興の作戦だったが、街からはだいぶ引き離せた。

 これで被害を気にせず、全力で戦える。

 

 受け身を取って着地すると、先に殴りつけた右腕が逆噴射でエックスの元へ戻り、接続した。

 機体を向き直らせ、身悶えから身体を起こしたナグルファルと対峙する。

 

「さあて……準備運動にはちょいと激しめ(ハード)だったが、お前の調子はどうだ、クオ?」

『万全です(オールグリーン)。機体にDr.ゼロとの決戦のダメージこそあれ、全システム、半自動修復作業(バケーション)により完全に調整済みです』

「一丁キメるか、こいつが異世界バトルの初陣だ!」

『目にもの見せてさしあげましょう』

 

【きっ、キサマら……! どこまでも舐め腐りやがって、絶対に許さねえ! 八つ裂きにして殺してやるゥゥゥ!】

 

 魂消(たまぎ)るような怨嗟の絶叫を上げるナグルファルに、海斗は自身の指と、それと追従してエックスの指を突きつけた。

 

「いちいちセリフが三下なんだよ! 涙も血も流せねえ、体温調節ド下手くその冷血動物が!」

『火を吐く以上は単なる爬虫類でなく、恒温性だと思われますけどね』

 

 クオの指摘はどうでもいい、無視する。

 それよりも、ここから始まる大戦(おおいくさ)の、その魁(さきがけ)の口上として。

 

 海斗は己の信条を、天に高く謳い上げた。

 

「この街を守る――レムリアの街を! 行くぜ! 意地と道理で推して参る!」

 

 そう。

 これが、これこそが衝撃と激闘の新天地(ウルトラ・バトル・フロンティア)。

 

 スーパーロボットVSドラゴン、ここに開幕――

 お代は見てのお帰りだ!

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