将棋の駒はあれこれ妄想される   作:きのこのこのこしたんたん

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エピソード-1:無愛想な奇才

 生まれてからというもの私には才能があった。

 他者をあっと言わせる才能があった。勉強も出来たし、運動神経も悪くない。今の戦乱の世においての戦のセンスもあった。それでいて若くして戦に登用される事も多々あった。

 

 そんなある時、私は戦いのさなか敵将に捕縛されてしまう。味方の主力部隊を守るとは言え、情けない話だ。私は優秀という事もあって軍に登用された。誰がお前らなんかに従うかと思っていたが、従ったふりをしていつかは裏切ってやろうと情報工作を始めた。

 

 戦争も続く中で、私は戦場に送り込まれた。送り込まれたと言っても最前線ではない。国境を越えた緩衝地帯にある駐屯地だ。何でも前任の現場指揮官が敵地での戦闘に引き抜かれたのでその後任と言うことだ。

 仕事内容としては物資調達や挙兵準備、兵の手当や士官教育など多岐に渡る。出世も出世だが敵国の兵を現場登用するなんてことは無いからここが私の出来る終着点だろう。

 

 そこで、ある女の子出会った。

 身体は華奢で小さく顔立ちも幼い。声も至近距離でないと聞こえず、何時もおどおどとしている。目線も合わずただ小さな翼と尻尾をぴょこぴょこと動かしている。しかし、戦いになると最前線に立ち活路を見出して撤退する。上からの命令なのか慎重な性格で戦闘を好まず、この駐屯地に頻繁に帰ってくる。戦には連戦連勝、彼女がいればその区域で負けなし。攻められて戦況を崩されることもなかった。その度事に味方の士気が上がる。一騎当千の強者とはまさにこの女のことを言うのだろう。ただ、誇らしげな地位と実績を打ち立て続けるにも関わらず堂々とせず、寧ろ廊下ですれ違ってもおどおどと道を譲る様にはどうも気に入らなかった。

 

 そんなある日、私はその女の部隊と指導員へと任命された。何でも私との相性が良いとかでその女の方から志願して来たらしい。面倒な……とも思ったが、距離的にも政治的にもこの国で最も祖国に近い存在でありこの女に付いていけば祖国に帰れる可能性もあると思うと悪い気はしなかった。

 

 

「ねぇ……本当はアナタは自分の国に帰りたいんじゃ?」

「またですか?私は姫様に仕える身だからそれは無いでしょう」

「そっか……!」

 

 彼女と過ごしていくうちにそんな事を聞かれた。成り行きで仕える事になったこの国も悪くないと思い始めており、逆に一度距離を置いて生まれ故郷を見てみると今までこの国に愛着を持っているなと感じた程だった。帰ったとしてその後はどうする?また祖国で戦うかそれとも辺境の地でのんびりと過ごすか。心の底から帰りたいと思っていたはずだが、本当に帰りたいのか?と問いかける事も多くなった。それもこれも彼女と過ごす時間がそんなに不快ではなかったからという事なのだろう。仕えてからというもの異種族ということもあり分かり合えないことも多くあった。衝突も多く泣かせることもあった。普段は見せない笑い顔や泣き顔を見ると私も何だか温かい気持ちになったり、自分の至らなさを実感する事もあった。昔の私が聞いたら鼻で笑われるだろうな。

 そんなこんなで時間と共に彼女も成長していき、そのうち私の身長を超えて大きく立派に成長していった。私はというと信用されるようになったことと、彼女が私と戦いたいという強い要望もあって前線に立つ事も増えてきた。軍団長にならないかという話も持ち上がったが、それを蹴った。偉くなると彼女と一緒にいれる時間が少なくなるからだ。

 

 

「ねぇ……」

「どうした」

「ボク、アナタの事が好き。ずっと一緒にいたい」

「ずっと一緒にいれるといいな」

「うん…………」

 

 しかし、そんな願望も現実にはならず、彼女は捕らえられてしまう。取り返そうと戦場に向かうも、戦地で敵側として相対してしまう。目の前にして何度呼びかけても応じることはなかった。彼女はあの頃のように私たちの勢力を撃退するとすぐに軍を引くような戦い方をした。しかし、ある時を境に戦場であの人を見かける事は無くなった。

 それから間もなくして私は軍団長まで出世した。地位や肩書には興味はない。ただまたあの人に会いたい。その一心で前進を続けた。もう一度、もう一度だけでいい。あの人に戦場で会いたい。あの人を一目見たい……神様。私の全てを差し出すからまたあの愛しい笑顔をもう一度!

 

 

 私が気づいた時には敵国は降伏をしており、彼女の一族の戦死の便りを聞くこととなった。

 

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