将棋の駒はあれこれ妄想される 作:きのこのこのこしたんたん
生まれてからというもの、彼女には才能が無かったらしい。
家族や親戚と比べて体格、知性において突出したものは無く一族に連なる者として恥と劣等感しかなかった。強く避難される事は無かったけど、何処か冷遇されているというそんな感覚はあったと思う。
それでも彼女は一族として戦場に立つという役割を果たさなければならなかった。幾ら出来損ないと言われても一族は一族。生まれてから暫くして戦場に送り込まれた。敵を倒して占領する。ただそれだけの事だけを求められた。
「ボクなんか……」
戦場から戻ってからはいつもそうだった。何が辛いわけでもなく何が嫌で何が不満なのかもよく分からないけど、ボク自身がダメダメなんだという感覚だけがあった。無理やりにでも肯定して楽になろうとするボク自身も間違ってるから変わろうとしようとしてもどうも出来ずに足踏みしてるボク自身もどんなボクも嫌で嫌で仕方なかった。
そんな中で一人の彼と巡り合った。
きっかけはいつもの戦場。味方が制圧出来なかった一拠点から彼の軍団が飛び出して、奇襲を仕掛けてきた。陣形が崩れながらも何とか間に合って守る事は出来た。奇襲としてはとしては動きに迷いが無く堂々としていて、後に無謀であったと言われてたけど、負けるかもしれないと思わせるような志のある進軍だった。
「ボクなんか……」
その戦いの後、駐屯地で初めて彼の顔を見た。その顔を見てからだと思う。ボクはあの人から目が離せなくなったんだ。
それからというものエラい人に直談判して、ボクのいる駐屯地にあの人が来てもらえるようにお願いした。最初は渋られていたけど何年か経ってからあの人も周りの人が認めるようになって、ボクの駐屯地に来てもらえるようになった。本当に嬉しい。来てからすぐは忙しかったり、嫌われてたけど少しずつだけど仲良くなれてたと思う……多分だけど。
ちょっとしてからボクの部隊に編成出来るようになった。一応ボクがここで一番偉いからね……えへへ。編成と言っても元敵軍だから前線に出るようなことはしない。身の回りの世話だったり、秘書的な。ボクの一族は同じ出身でも一緒にいたがる人は少ないから心細かったりする。
「質問なんだけど、何で皆は避けられているの」
「え、えっと……ボクは一族でも落ちこぼれで、ダメダメだから……じゃないかな」
いつだったか、急にこんな事聞かれたことがあった。ボクは少し苦しくなりながらそう言うとあの人はふーんと興味のなさそうにした。
あっ……この人から失望されちゃったんだ。
「まぁ、貴女との欠け替えのない時間が減らないから私としてはラッキーなんですけどね」
「……ッ!!それって!!」
「何か言いましたか?」
「い、いえ何も……」
いつだって何事のなかったかのように私の心を満たしてくれるあの人から目を離せなかった。
楽しい事も嫌な気持ちになる事だってあったけど一緒に時間が心地よくて温かくて離れられなくなって何時しか水浴びや閨を共にしたり戦争に行くようになった。ずっと一緒これまでもこれからもと思っていた。
そう思っていたんだ。
ボク達は戦でも勝ち続けて、戦場で敵将を追い込む事が出来た。これで戦争も終わると思っていたんだ。油断しちゃったみたい。周囲を囲まれて拘束されてしまった。変に勝てると思ってたけど誘い込まれてしまった。でも良かったボクだけ済んで。ボクが囚われて我忘れて助けようとしてくれたのは嬉しかったなぁ……
捕まえられてから暫くは人質にされてあの人と戦うこともあっだけど、すぐに敵地に送り込まれて敵将を討ち取ってこいって言われた。
最初は戦う事が怖かった。味方を裏切ることが敵に従うことが。でもそれよりもあの人にもう二度と会えなくなる事の方がもっと怖かった。
だから彼女は勝つことにした。
いつの日だったか彼を捕縛して私達の仲間にしたみたいに。もう一度戦って勝ってそれからあの人を私のものにする。
あの日から彼女は世界の敵になった。
「それから!それからどうなったの?」
膝のうえに座ってぴょんぴょんと弾んでくる子供に髪を撫でながら遠くを見る。
「それから元いた国の統治官を任されるんだ」
「それから!?」
「あんまり良い国じゃなかったから頑張って良い国なるようにしたんだ」
「それからはないよ。おしまい」
「ふーん!そうなんだね!」
ニコニコとする彼女はふわりとシナモンの匂いがする。
「ねぇ、ケイ」
「なに、姫様」
「今はもう姫じゃないよ〜」
「じゃあナン」
「えへへ。前はあんまり口に出せなかったけどずっとずぅぅぅっと一緒だよ」
勿論だよ。
私も大概だと思うが死してなお、私の眼の前に生まれ変わって出てくる君はなんて飛んだお転婆な龍様なことで。
私は妻の額にキスをしてこれからの生活に思いを馳せていた。
思いついたから書いてみたけどNTRにはならんかったなぁ。
あまり好みじゃないということですかね。
書けそうな人書いてください(全投げ)