僕は友達が少ない-バタフライエフェクト-   作:金木令

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1話

屋上で理科に説教された俺は、隣人部に足を運んだ。今、胸の内に湧き上がる感情を

星奈に伝えたい。そして今日は金曜日だ、今日言わなければ、月曜日に持ち越すことに

なる。そうなったら何かを取りこぼしてしまう。それなら今日腹を括って星奈に応える

しかない。

部室の扉を恐る恐る開けた。幸村と星奈が俺に気付き視線を向けた。気まずい。日

和って逃げてしまった手前、しれっと戻ってきてしまった俺に、向ける視線が痛い。

「あにき…!」幸村が嬉々とした声をかける。逃げたくなった。でもまた逃げたらこ

こに来た意味がない。

言え小鷹、けじめをつけるためにここまで来たんだろ?勇気を出せ!言え!言うん

だ!

「あ、あのさ、星奈…」言い淀む俺に、

「なに?」と星奈が次の言葉を求める。

ええい、尻込みすんな!俺は自分に発破をかけ次の言葉を絞り出す。

「話があるんだ」俺の言葉に幸村が察し、

「わたくしは、せきをはずしたほうが、よろしいでしょうか。」と立ち上がる。

「いや、俺たちが出るから幸村は大丈夫だ。」と制止した。

俺は星奈を連れて屋上に向かう。やばい、緊張して足取りがぎこちない。右手と右

足、左手と左足が同時に動いてしまう。お手本のようななんば歩きをする俺に、星奈は

「大丈夫?」と案じた。

「大丈夫だ、問題ない」と俺は毅然とした態度を装った。

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隣人部から屋上までこんなに長かったか?俺が屋上から隣人部まで行くのに、こんな

に遠く感じなかった。誰か魔法でもかけてるのか?アキレスと亀よろしく永遠に屋上に着

かないのでは?そんな懸念すら湧いてしまうほどだった。

やっと屋上に着いた頃には、俺の足はフルマラソン完走の如く震えていた。

星奈を中央まで連れて、向き合った。目と目が合う。星奈の青い目が俺を見つめる。

一気に緊張が走る。逃げたくなる。でも逃げたらダメだ。今また逃げ出したら理科に説

教された意味がない。

それに星奈は俺に告白した時、何気なく言ってきたのだが、もしかしたら勇気を振り

絞って、不安を押し殺した結果が、あのさりげない告白なのでは?そう思うと逃げるこ

とは、星奈の気持ちを無碍にしてしまう。

もう逃げるな、ダサい真似はもうするな、今までの関係が壊れることを恐れることが

一番ダサい。羽瀬川小鷹はそんな情けない男じゃないだろ。今することは目の前にいる

星奈に、ひたむきに向き合うことだ。

俺は勇気を出して、口をこじ開け言の葉を紡いだ。

「星奈、この間の告白、聞こえないフリして逃げてごめん。でもお前のことが嫌いだ

から逃げたんじゃない。今までの関係が壊れてしまうことが怖かったんだ。でも俺も星

奈のことが、す、好きだ。だから…こ、こんな、ふ、ふ、ふつうかものですが!よろし

くお願いしましゅ!」

しまったー!噛んだー!しかもふつうかものってなんだ?!普通科者?!いや確かに

普通科だけど!そもそも不束者って言おうとしてたけど、確かこの言葉って相手の親に

言う言葉だよな?本来なら天馬さんに言う言葉じゃないか!うわー!しくじった!俺が

脳内で反省会を開催するうち、徐々に冷静になり、星奈を見れる余裕ができた。星奈は

両手で口を覆い、目に涙を浮かばせていた。これはどっちなんだ?嫌がってるのか、嬉

し泣きなのか、生憎恋愛経験皆無の俺には、判別つかない。

星奈がか細く涙声で答える。

「私で…いいの?」どうやら星奈の気持ちは変わってないようだ。

俺は後ろ髪をかきながら、照れ臭くも言葉を返した。

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「いいから今告白してんだよ。…言わせんなよ。」俺の言葉に忽ち星奈は顔を綻ばせ

る。人生初めての告白が成功したことに俺は安堵した。

「小鷹大好き!」と聞こえた刹那、星奈が視界から消える。直後、鳩尾に衝撃が伝わ

り、鈍い痛みが走る。世界がスローモションのようにゆっくりと動く。意図せず俺は天

を仰いでいる。十二月の夕方だけあって、太陽が沈み空が暗くなる。冬の季語に暮早し

とあるがこのことか。風流を感じるうちに、背中がコンクリートに叩きつけられた。痛

みに耐えながら正気に戻る。俺は星奈の体当たりで、仰向けに倒れていたのだ。

こいつ嬉しさのあまりアメフトよろしくタックルを放ったのか、大型犬か?

星奈は俺の胸に顔を埋める。無いはずなのに尻尾をブンブンと振っているように見え

る。

「ちょっ、星奈、苦しいって」俺の言葉に耳を貸さない星奈は、満面の笑みを見せ

る。

「だって、私たち両思いなのよ!嬉しいに決まってるじゃない!」あれ、会話噛み

合ってない?どうしたものかと思案した俺に、星奈が唇を重ねてきた。柔らかくて甘

い。なんだこれ、今までこんな味の食べ物食べた事がないぞ。充分に堪能したのか星奈

は唇を離した。

「ファーストキス、いただき…」と言いながら星奈は立ち上がった。星奈に手を引っ

張られ、俺も立ち上がった。俺はケツに付いた埃を払い、星奈と共に屋上を後にした。

隣人部に向かう道中、星奈は俺の左腕に抱きつきながら歩く。

「星奈、ちょっと、歩きにくいって」俺は星奈に訴えるが、星奈は嬉々とした表情を

浮かべて「彼女なんだから良いじゃない」と返す。かわいいな、こいつ。

「ところで小鷹、ふつうかものって何?」ニヤニヤと口角を上げて聞いてきた。

「言い間違いを蒸し返すなよ」やっぱこいつは星奈だ。

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