僕は友達が少ない-バタフライエフェクト-   作:金木令

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5話

映画館に入り、エレベーターで2階に上がる。俺は見たい映画がないから、星奈に何が見たいのか聞いてみた。

 

「え、ああ、恋愛ものの映画にするつもりよ。ちょっと前から公開されてるやつ。」

 

俺は星奈が示した映画のチラシを手に取り眺めた。どうやら重たい内容で、トラウマを抱えた男女が遺品整理の仕事を通して、生と死に向き合い再生していく物語らしい。案外、星奈って初デートにこういうの選ぶんだな。チケットを買うため窓口に行こうとする途端、星奈が何か気づいたようだ。

 

「ごめん小鷹、やっぱ見る映画変えるわ。」そう言ったかと思えば素早くチケットを買ってきた。タイトルを見ても見当がつかない。

 

「星奈、これどんな映画なんだ?」

 

「これはね、今日公開されたアニメの映画でね。テレビ版の続きなのよ。」星奈は嬉々とした表情で説明する。

 

「いや俺はそのアニメ見てないから、内容が分からなくてついていけないと思うぞ。」アニメに疎い上にシリーズものになると、星奈と一緒に楽しめる自信がない。しかし俺の不安をよそに星奈は言い募る。

 

「大丈夫よ!映画を見て気に入ったら、テレビ版の円盤貸してあげるから!」

 

どうやらどれだけ俺が主張したとしても、星奈が折れることはなさそうだ。観念して俺は星奈の提案に従うことにした。

 

映画といえばポップコーンとコーラは必須だろう。俺たちは売店に向かった。二人分買えばいいかと思っていたが、俺たちを見た店員さんがオススメしてきた。ナニコレ?一本のストローが二股に分かれ、弧を描きハートを作っていた。ドラマで見たことあるぞ、カップルストローだ…!確かに俺と星奈は恋人同士。つまりカップル。だからカップルストローを使うことに正当性はある。しかし俺たちは付き合って2日目だぞ。踏み込むにはまだ早い!いや店員さんから見れば、俺たちが2日目なのか2年目なのか知ったこっちゃないか。困惑する俺にお構いなく星奈は店員さんに注文する。

 

「じゃあ、それとLサイズのコーラとポップコーンを一つずつお願いします。」

 

ウソだろー!?マジでするのか!?一個のカップをカップルストローで飲むのか!?店員さんが用意している間に、俺はケツポケットから財布を出そうとする。しかしパーカーに引っかかって、うまく取り出せない。苦戦する俺を見かねたのか、星奈が鞄から財布を出す。

 

「何してるの?ここはあたしが払うから、変なダンスやめてよ。」辛辣である。

 

ポップコーンとカップルストローを挿したコーラを持ってシアターに入る。言わずもがな俺の隣に星奈が座る。まだまだと待ち侘びている星奈に、子供のような一面が見れてなんか嬉しくなる。こいつってこんなに可愛かったけ?星奈の横顔にときめいていると劇場のブザーが鳴り暗転する。スクリーンに映像が投影される。ポップコーンを食べながら映画を見る。軽音部の女子高生5人がロンドンに旅行する話のようだ。旅先で女の子たちがギターやドラムを演奏する様子に思い出すことがある。隣人部でバンドをしたことがあったな。あの時は星奈がギターをしていたのだが、周りに合わせず暴走していたな。俺は矯正の名目でヘッドホンで耳を塞ぎ、ドラムを叩くことをしていたな。だいたい3ヶ月ほど前のことなのに懐かしく思える。ふと星奈のことが気になり横に目を向ける。星奈と目が合った。なんで?まさか星奈も俺のことが気になってこっちを向いたのか?いや待て自意識過剰じゃないか?俺の視線に気づいて向いたのかも知れないだろ!見つめ合う時間が1秒なのか1時間なのかわからなかった。気づいた頃にはお互い顔を赤らめスクリーンに視線を戻した。見つめ合ったことで頭が埋め尽くされて映画の内容が全然理解できない。喉が渇きストローに口をつけコーラを飲む。冷たい感じがするだけで何も味がしない。何か気配を感じる。星奈もストローのもう片方を口につけて飲んでいた。

 

いや、お前もかい!星奈も気づいたのかすぐに口を離した。もうコーラ飲むのはやめよう。目の前の映画を見よう。肘掛けに手を置く。やけに柔らかく温かいものを感じる。星奈の手だ。偶然とはいえ手を重ねてしまった。ふと俺は思い出す。俺と星奈は付き合ってるじゃないか。手を触るくらいおかしくないじゃないか。気持ちを落ち着けよう。スクリーンには先輩の女子高生が留年して、後輩と同級生になる夢オチを繰り広げていた。なんだそりゃ。すると俺の手に星奈の手が絡みつく。ええー?!これもう恋人繋ぎってやつじゃん!ドラマで見たやつだ!なんかもう全部わかんなくなってきた。

 

情報量が多すぎて頭がパンクしてきた。やっと冷静になった時には映画が終わり明転していた。他の客は楽しそうな表情をしていたり満足した顔で席を立っていた。しかし俺は身体は熱く火照っていた。星奈は顔が赤くなりほのかに汗をかいていた。俺たちだけ違う映画でも見てたのか?あれだけビビって買ったコーラもポップコーンも全然減っていなかった。




映画は恋愛映画は「アントキノイノチ」アニメの映画は「けいおん!」になります。
隣人部でバンドをやっていたエピソードはジャンプSQ19で連載されていた漫画から踏襲しております。
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