『帝国の女騎士アズキ』〜俺はR18ルートは絶対に嫌だ!〜 作:令和大学文学部小説科
ゴブリンの血がついた剣をしまい、俺は深呼吸した。
俺はなんで、女騎士としてゴブリン退治なんてしているのか。
それを説明するためには――前世のことから話す必要がある。
少し長くなるぞ。
俺は前世では、何不自由なく暮らしていた、ごく普通の成人男性だった。
仕事をして、飯を食って、休日には趣味を楽しむ。
そんな、どこにでもいるような人間だ。
そして俺には、一つだけ楽しみにしているものがあった。
ゲームだ。
……ただし。
普通のゲームではない。
俺が発売を心待ちにしていたのは――R18ゲーム。
その名も、
『帝国の女騎士』シリーズ。
『帝国の女騎士 アズキ』。
第1作から第3作、そして過去を描いたエピソード0まで発売された、女騎士を主人公とする大人気シリーズだ。
制作したのは、R18ゲームメーカーとして名を馳せるジュエリー。
本編だけに留まらず、数多くの派生作品まで発売されるほどの人気作だった。
主人公は、帝国最強の女騎士――アズキ。
勝ち気で、誇り高く、そして圧倒的に強い。
どんな強敵を前にしても怯まず、格下の敵など歯牙にもかけない。
そんな「絶対的な強者」である彼女が――
あるとき、敵の手に落ちる。
そして、自分がこれまで格下として見下していた者たちに追い詰められていく。
その落差。
普段は誰にも屈しない絶対的な強者が、立場を逆転される。
そのギャップに魅了されたファンは多かった。
もちろん、俺もその一人だ。
……いや。
ここまで聞けば、察しがつくと思う。
俺は前世で、異世界転生にちょっとした憧れを持っていた。
事故に遭って。
目を覚ましたら異世界。
そこで新しい人生を始める。
――そんな展開を、一度くらい経験してみたいと思っていた。
だから。
今の状況だけを見れば、夢が叶ったと言っていい。
異世界。
魔物。
帝国。
そして、剣と魔法の世界。
しかも俺は、帝国騎士。
……そう。
確かに、俺が普段から憧れていた異世界転生だ。
だけど。
だけどさ。
一つだけ問題がある。
俺が転生したのは――
『帝国の女騎士』シリーズの主人公。
そのシリーズに登場する――
「女騎士アズキ」だった。
…………。
いや、待て。
ちょっと待ってくれ。
性別が変わって女性に転生するのは、百歩譲っていい。
魔物がいる?
いい。
帝国騎士?
むしろ格好いい。
女騎士?
…………まあ、それもいい。
だが。
R18ゲームの女主人公は――
絶対にダメだろ!!
R18?男主人公なら良いよ!でも今は女だろ!
何が悲しくて野郎どもにR18されなくちゃいけないの?
だから俺は決意した!
さっさとラスボスの魔神王とやらをぶっ倒して、安心して生活できる平和な世の中でぬくぬく暮らすんだ!