クラブばんきっきーズ   作:チャーシューメン

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以下、登場人物紹介です。

○登場人物
 ・赤蛮奇    飛頭蛮。中背。ジト目、口隠し。
 ・ミスティア  夜雀。おかみすちー。背は低だがゲタを履いていてやや低ほど。
 ・わかさぎ姫  人魚。中背。熱血、直撃、自爆。
 ・今泉影狼   狼女。背はやや高。



「かにばんき」

 <人間の里 夕刻 晴れ>

 

 

 目貫き通り。

 夕飯の食材を買おうと、着物姿の主婦たちが、買い物バッグを片手に、通りを忙しく往来している。

 豆腐屋がラッパを拭きつつ、リヤカーを引いている。

 主婦が呼び止める。豆腐屋はリヤカー後部に積んだ大きな鍋のフタを空け、豆腐を売る。

 遠巻きに、ひょこっと現れる赤蛮奇。主婦たちと同じように、麻製の買い物バッグを持っている。

 道行く人の視線を気にしながら、明らかに挙動不審な様子で、そろりそろりと通りの端を歩いてゆく。ちらちらと豆腐屋のほうを見つつ。

 豆腐屋と主婦は世間話を始める。身振り手振りを加えて、楽しそうにしゃベくる。

 赤蛮奇は眉を顰めて、豆腐屋の前を通り過ぎる。

 しかし、すぐに引き返してくる。ちらちらと豆腐屋のほうを見つつ。

 だが、声をかけられず、未練がましくちらちらと豆腐屋のほうを見つつも、また通りすぎてしまう。

 そんなことをニ、三度繰り返す。

 そのうち、主婦は話を終えて、去ってゆく。

 赤蛮奇は顔を輝かせ、鼻息を荒くしながら、豆腐屋に背後から近づく。

 赤蛮奇は一瞬躊躇したあと、意を決したように、

 

 赤蛮奇  「(ぼそぼそと小さな声で)あっ、あのっ……。お、お豆腐……」

 

 しかし、豆腐屋はリヤカーのナベのフタを閉めていて、気づかない。

 赤蛮奇はもう一度、顔を赤らめながら、今度は少し大きい声で、

 

 赤蛮奇  「あっ、あのっ……!」

 影狼   「お豆腐屋さ~ん!」

 

 向かい側から、影狼が割って入り、豆腐屋は影狼の方を向いてしまう。

 

 影狼   「おっとうっふひっとつっ、くっださっいなっ♪」

 

 影狼は満面の笑み。

 赤蛮奇は涙目になり、あうあうと声にならない声をあげる。

 肩を落とし、とぼとぼとその場を離れる。

 

 赤蛮奇  「(ナレーション)あ~あ……今日は冷奴で一杯やろうと思ってたのに……。影狼のやつ……。」

 

 赤蛮奇がバッグを開けると、中身は空。

 ため息をついて、またトボトボと歩き出す。

 

 

 <人間の里はずれの森 夕刻 晴れ>

 

 森の中の灯籠が並んだ道を、買い物バッグ片手にとぼとぼと歩く赤蛮奇。

 空の向こうには、沈みかけの夕日に照らされる真っ赤な空。

 辺りは灯籠に灯った炎のおかげてかなり明るい。

 赤蛮奇の持つ買い物バッグはペラッペラで、中に何も入っていないことが一目でわかる。

 

 赤蛮奇  「(ナレーション)今日もいいことなかった……。」

 

 お腹がぐぅと鳴る。お腹に手をやる赤蛮奇。

 

 赤蛮奇  「(ナレーション)夕日暮れ 春待ち焦がれ 腹焦がれ」

 

 また大きなため息をつく。

 ふと、鼻をくんくんと引くつかせ、顔をあげる赤蛮奇。

 リヤカー式の屋台に赤提灯が目に入る。提灯には大きく達筆で「やつめうなぎ」の文字。

 屋台の中からは煙が上がっている。

 

 赤蛮奇  「夜雀の屋台かぁ。やつめうなぎもいいな。……ん?」

 

 赤地に白字で大きく「蟹入荷しました」の幟が目に入る。幟には小さく、デフォルメされた蟹の絵が描いてある。

 

 赤蛮奇  「(ナレーション大)か、蟹!」

 

 赤蛮奇の頭の上にもやもやとイメージが浮かぶ。

 

 

――フラッシュバック

 

 大きなズワイガニの足が入ったグツグツ煮える鍋、ケガニの甲羅に入った焼いたカニ味噌。焼いたタラバガニの足、剥いたプリプリのカニの身、それを口に運ぶ赤蛮奇。カニにかぶりついたまま、ほっぺたを押さえて悶える。

 

――フラッシュバック終了

 

 

 赤蛮奇  「(ナレーション)蟹、蟹、カニ……。いいなぁ、いいなぁっ!」

 

 赤蛮奇の目がとろんと垂れ、顔が上気する。

 

 赤蛮奇  「(ナレーション)まさか、幻想郷では滅多に手に入らない、マボロシのタラバが食べられるのかなっ!」

 

 気合を入れるように息を吐くと、鼻息あらくして屋台の暖簾をくぐる。

 対面には割烹着姿のミスティアが、うちわ片手にやつめうなぎを焼いている。

 

 ミスティア「(笑顔)あら、ばんきっきじゃない、いらっしゃい。」

 赤蛮奇  「女将さん、カ、カニ、カニって、あるの?」

 ミスティア「あら、カニをご所望? 耳が早いわね、そうなのよ、少ないけど、運良く、入荷出来てね。」

 赤蛮奇  「ど、どんなカニなの?」

 ミスティア「(得意顔)聞いて驚け! なんとあのマボロシの、タラバガニ様よっ!」

 赤蛮奇  「そうなんだ……!(グッ、と小さくガッツポーズ)」

 ミスティア「あはは、カニ、好きなの?」

 赤蛮奇  「べべべ、べつに好きじゃねーし! ちょっと毎日食べても飽きないだけだしぃ!」

 

 顔を赤らめて、視線を宙に泳がせる赤蛮奇。

 

 ミスティア「世間一般ではそれを好物と言う。ま、座って一杯やんなさいな」

 赤蛮奇  「う、うんっ!」

 

 赤蛮奇が席につくと、ミスティアはお猪口とつまみの入った小皿(もろきゅう)を並べる。

 ミスティアは徳利を両手で持ち、小首をかしげる。

 はっ、と気づいた赤蛮奇が、慌ててお猪口を差し出すと、ミスティアはそれに酒を注いだ。

 

 赤蛮奇  「あ、ありがと」

 ミスティア「ちょっとまっててね~、今、カニ、準備するからね~。とりあえず、それ食べてて。」

 

 ばちこーん、とウインクするミスティア。

 

 ミスティア「河童から分けてもらったやつだから、おいしいわよ」

 

 徳利を赤蛮奇の前に置き、ミスティアは屋台の裏に行く。何やらゴソゴソと音がする。

 赤蛮奇は注がれたお猪口をくいっと一杯。くぅ~、たまらん!

 続いて箸を取り、もろきゅうをつまみ、口に運ぶ。

 口に入るその直前、

 

 わかさぎ姫「どりゃああああ!」

 

 突然、わかさぎ姫の気合の叫びが、後方から響き渡る。何事かと振り返る赤蛮奇。

 その瞬間、車輪の付いた大きな浴槽が、赤蛮奇の隣の席に体当たり。大きな音がする。

 中に入っていた水が、お猪口を持っていた赤蛮奇の頭からかかる。

 衝撃で屋台がきしむ。

 あわてて、屋台の裏からミスティアが出てくる。

 

 ミスティア「なに、なに、なに! 討ち入り? ゲバルト? 自爆テロ~っ?」

 

 赤蛮奇は箸を持って振り返った姿勢のまま、驚いた顔で固まっている。

 赤蛮奇の顔から水がしたたり落ちる。

 持っていた箸の先、つままれていたもろきゅうに、ばくっと食いつくわかさぎ姫。

 赤蛮奇は驚いて、箸を落としてしまう。

 

 わかさぎ姫「(ボリボリ)ふ。ふふふ……(ボリボリ)」

 赤蛮奇  「わ、わかさぎ姫……」

 

 車輪付きの浴槽入ったまま、ボリボリきゅうりを食べるわかさぎ姫の首元に、二股の刺又が突き付けられる。

 ミスティアが、両手で刺又を構えている。

 わかさぎ姫は動じず、ボリボリし続ける。

 赤蛮奇は怯えて、屋台のカウンターに背を押し付けている。

 

 ミスティア「出たわね、わかさぎ! まぁた屋台の邪魔しようっての?」

 わかさぎ姫「ふふふ……(ボリボリ)」

 

 わかさぎ姫は尾ひれをゆっくりと揺らす。

 ごくん、と咀嚼するわかさぎ姫。着物の袖で口元を拭う。

 

 わかさぎ姫「なかなかンマいじゃないの、このきゅうり」

 ミスティア「何の用よ? アンタごときが何をしようと。八目鰻屋は絶対、畳まないんだからね!」

 わかさぎ姫「うふふ、今日はアンタに用があるわけじゃないのよ」

 ミスティア「なんですって?」

 影狼   「用があるのはこっちだよっ!」

 

 いつのまにか、屋台の暖簾の後ろのほうに、木箱を抱えた影狼がいる。

 

 影狼   「いいモノ持ってるみたいだねっ。こいつはあたしらがいただくよっ!」

 

 影狼の尻尾がパタパタと揺れる。

 

 ミスティア「あっ! そ、それは、タラバ様!」

 

 ぴくっ、と赤蛮奇の体が反応する。

 影狼の持つ箱をよく見ると、側面にデフォルメされたカニのマーク。

 

 ミスティア「返しなさいよ! めったに手に入らないのよ、それ……あっ!」

 

 ミスティアが話しているうちに、わかさぎ姫は刺又をかわして、屋台のカウンターを押し、車輪付き浴槽を走らせる。

 そのまま、影狼のそばに止まる。

 

 わかさぎ姫「よくやったわ、影狼ちゃん」

 影狼   「わんっ!」

 

 影狼はうれしそうに、尻尾をふりふり。

 わかさぎ姫はカニの箱を受け取ると、浴槽のヘリに置く。

 赤蛮奇は二人を追うようにして、屋台の外に出る。

 

 赤蛮奇  「わかさぎ姫、それに影狼も! あんたたち、カニなんて喰わないでしょっ! それ、返しなさいよ!」

 わかさぎ姫「やなこった!」

 影狼   「(あかんべーして)べー、っだ」

 

 赤蛮奇は悔しさで顔を赤くし、ぷるぷると震えだす。

 突然、パシャパシャとフラッシュが焚かれる。

 わかさぎ姫と影狼が、恍惚の表情を浮かべながら、トイカメラを連射している。

 

 わかさぎ姫「ああ……っ、イイ!」

 影狼   「そう、その表情、サイコーよ!」

 

 よだれを垂らしながら一心不乱にカメラを連射する。

 ゾッ、として一歩引く赤蛮奇。

 

 赤蛮奇  「な、ななな……」

 

 ミスティアが刺又を持ったまま屋台から出てきて、赤蛮奇の隣に立つ。

 

 ミスティア「うわー……なにあれ、お友達?」

 かげわか 「そう! 私たちはばんきっきの親友! 『草の根妖怪ネットワーク』の仲間!」

 

 影狼とわかさぎ姫は声を揃えて言う。

 赤蛮奇は涙目で首をプルプル振る。

 影狼はシャッターを連打する指を止めることなく、ドヤ顔で言う。

 

 影狼   「私たちは先の異変であの恐ろしい巫女達にボッコボコにされて以来、その縁で、友情を深めて来たわ。」

 

 

――フラッシュバック

 

 川辺で追いかけっこする影狼、わかさぎ姫(びちびち跳ねながら)、赤蛮奇。

 逃げる赤蛮奇を追いかける二人。

 あははは、と笑い声。

 ばたっ、と転ぶ赤蛮奇。

 顔を赤くして、涙目で起き上がる赤蛮奇。痛みをこらえて、ぷるぷる震える。

 

 わかさぎ姫「(ナレーション)でもある日、私たちは気づいてしまったの。『あれっ? ばんきっきって、めちゃカワイイんじゃね?』ってね!」

 

 

 それを見た影狼の口から、つーっとよだれ。わかさぎ姫の鼻からつつーっと鼻血。

 

――フラッシュバック終了

 

 わかさぎ姫は鼻血を流しながらドヤ顔、もちろんカメラは連打したまま。

 

 わかさぎ姫「あの日から、私と影狼ちゃんは新たな秘密結社を作ったわっ!」

 影狼   「そうよっ! 我々こそはっ!」

 わかさぎ姫「ばんきっきの泣き顔が大好物のっ!」

 影狼   「『くっそかわいいラブリーミルキーばんきっきーをマジギレしない程度にいじめてメシウマし隊』!」

 わかさぎ姫「略して!」

 かげわか 「(二人の腕で大きなハートマークを作って)クラブ! ばんきっきーズ!」

 

 ひゅう、と風が吹く。

 

 ミスティア「ず、ずいぶん変わった固定ファンをお持ちで……。」

 赤蛮奇  「(涙目)わ、私、知らない……」

 

 涙目でぷるぷる震える赤蛮奇を横目で見て、顔を赤らめてドキドキするミスティア。

 

 ミスティア「(ナレーション)あ、でもちょっとわかるかも……。」

 

 鼻の下を伸ばすミスティア。

 わかさぎ姫はカニの入った箱に手をかける。

 

 わかさぎ姫「ククク。ばんきっきの好物がカニだってことは、事前調査済みよ」

 影狼   「今からこのカニを、目の前で食してあげる。」

 赤蛮奇  「な、なんだって!」

 

 わかさぎ姫と影狼は、カニの箱を開け、中から赤いカニのむき身の束を取り出す。

 あああ……と声にならない声をだす、赤蛮奇。

 ミスティアは興奮した面持ちで、鼻息荒く、赤蛮奇の横顔を食い入るように見つめている。

 

 わかさぎ姫「(鼻血を流しながら)目の前でカニが蹂躙される様を眺めているがいいわっ!」

 影狼   「(よだれをダラダラたらしながら)そしてその宝石のような涙を流すといいわっ!」

 

 わかさぎ姫と影狼は、目を閉じ、大きく口を開け、これ見よがしに、分厚いカニのむき身に下からかぶりつく。

 

 赤蛮奇  「や、やめろ、やめてぇーッ!」

 

 泣きながら手をのばす赤蛮奇。

 となりのミスティアは恍惚の表情で「ふぅ……」とため息をつく。

 時既に遅く、カニのむき身は、二人の口の中に吸い込まれて行った。

 

 影狼   「(モグモグしながら)ククク……このカニ、まったく味がせぬわ」

 わかさぎ姫「(モグモグしながら)こっちのは、鉄の味がしよる」

 

 影狼の口からは大量のよだれが溢れでている。わかさぎ姫の鼻血は、思いっきり口の中に入っている。

 ごくん、と咀嚼する。

 

 影狼   「さあ! ばんきっきよ!」

 わかさぎ姫「口惜しさと恥辱に震えるその顔を、我らに晒すがいい!」

 

 カメラを胸の前にかまえて、目を開ける二人。

 赤蛮奇の周囲には、九つに分裂した赤蛮奇の頭が浮かんでいる。

 赤蛮奇は右手を前にかざしている。その人差し指と中指の間には、光り輝く一枚の札。

 その顔は泣いても笑ってもおらず、目が座っている。

 

 かげわか 「あ、あれ……?」

 ミスティア「(妙にツヤツヤした顔で)そんであんたら、その後どうするつもりだったの? おしおきされることは考えなかった?」

 影狼   「そういえば……」

 わかさぎ姫「ばんきっきのカワイイ泣き顔を見れるってことで、頭が一杯になって………」

 かげわか 「忘れてたっ!」

 

 影狼とわかさぎ姫は怯えて、ともに抱き合う。

 赤蛮奇は怒り心頭の顔つきで、二人を睨みつける。

 

 赤蛮奇  「タラバ様を無駄に消費した罪は思いわ。」

 わかさぎ姫「(泣きながら)だからって、いきなりルナティック弾幕はないでしょー!」

 影狼   「(泣きながら)かわいいイタズラじゃないのっ!」

 赤蛮奇  「……あんたたちはひとつ、勘違いしている。マジギレしない程度、だって?」

 

 カッ、と目を見開く赤蛮奇。スペルカードを持った右手を天高く振り上げる。

 

 赤蛮奇  「私はとっくに、マジギレしてるわよっ!」

 

 分裂した九つの頭から、一斉に赤いビームが放たれる。

 

 かげわか 「ぎえぇぇぇー!」

 

 影狼とわかさぎ姫に直撃し、爆炎があがる。

 

 

 <ミスティアの屋台内部 夜 晴れ>

 

 

 調理台の上には、カニの入っていた箱が置いてある。中身はカラ。

 ミスティアはニコニコしながら、作業をしている。

 

 ミスティア「いやーよかったよ、ちょうど一人前、残っててさ。」

 

 赤蛮奇はくいっとお猪口を空ける。

 

 赤蛮奇  「(クールに)それはよかった。」

 ミスティア「それにしても、ばんきっきがあんなに怒るなんてねぇ。」

 赤蛮奇  「食べ物を粗末にするのはいけないことだもん」

 ミスティア「(からかうように笑って)今も、カニが残ってたこと、ホントは嬉しくてウキウキしてんじゃないのぉ?」

 赤蛮奇  「(顔を真赤にして)しっ、してねーし!」

 ミスティア「あははっ、いやー、今日はいいモン見れたわ」

 

 徳利からお猪口に酒を注ぐ。

 

 ミスティア「じゃあ、お待ちかねのタラバ様よっ。」

 赤蛮奇  「!」

 

 頬が緩む赤蛮奇。

 ウキウキとして、周囲にハートマークを浮かべる。

 

 ミスティア「さあどうぞ、召し上がれっ」

 

 ミスティアは満面の笑みで、一枚の皿を赤蛮奇の前に置く。

 赤蛮奇は緩みきった顔で、皿を覗きこむ。

 そこには、どう見てもカニカマにしか見えないカニカマが。

 赤蛮奇は真っ白になって、顔に濃い~い陰を作り、目からハイライトが消えてレイプ目になる。

 

 赤蛮奇  「……。」

 

 ぽろり、と箸が落ちる。

 ミスティアは赤蛮奇の様子に気付かず、ニコニコしながら、

 

 ミスティア「ささ、どうぞ。やっちゃって。」

 

 真っ白のまま、手でカニカマをつまみ、一口かじる。

 

 

 <ミスティアの屋台外部 夜 晴れ>

 

 夜の森。上空にかかる三日月。

 周囲の灯籠の灯は消え、ミスティアの屋台だけが暖かな光を放っている。

 暖簾の奥には、赤蛮奇のさみしげな後ろ姿が見える。

 ミスティアの屋台の脇には、車輪付きの浴槽。其の中には、目を回してぐったりとしている、影狼とわかさぎ姫。

 

 赤蛮奇  「(ナレーション)……おかみさん。やつめうなぎの蒲焼き、ちょうだい」

 ミスティア「(ナレーション)え? カニ、もういいの?」

 赤蛮奇  「(ナレーション)うん……」

 

 赤蛮奇の後ろ姿、暖簾に映る陰が、お猪口を空ける。

 あおーん。

 狼の遠吠えが響く。

 

 赤蛮奇  「(ナレーション)赤提灯 つまみカニカマ なみだ酒……」

 

 <終>

 

 

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