センリツ、マチ、クロロキャラ崩壊してます。
※タイトル通りコメディです
※腐女子用語を調べて、使ったことない言葉も使ってるので、不自然かもです。
センリツは腐女子である。
休日はアイドルのライブに通い、勝手にBL展開を考え、妄想を膨らませていた。
しかし、ノストラードファミリーに入ってからというもの、目まぐるしい日々が続き、そんな時間はなくなっていた。
(早く……早く、推しカプを接種しないと……)
センリツは限界だった。
(でも、明日はやっと休み! 一日中アイドルのDVDを見て幻覚をキメる!!)
その目は血走っていた。
そこへ、クラピカがやって来た。
「センリツ、すまない。明日、護衛の任務についてもらえないだろうか?」
「!!」
(そんな……もう、だめ……)
センリツはよろよろと床に倒れ込んだ。
「センリツ!? 大丈夫か!?」
クラピカは慌てて彼女を支える。
「ええ、大丈夫よ。少し推しを摂取できてな——」
センリツは顔を上げ、クラピカを見た。
そして、固まった。
さらさらの金髪、大きな瞳、高い鼻、控えめな唇。黄金比でできたような美しい顔が、目の前にあった。
(なんで今まで気付かなかったの!? あるじゃない! ここに供給源がっ!!)
「? センリツ?」
「あなたは、絶対に受け……」
「受け?」
ガチャッ。
そこへリンセンが入ってきた。
「ボス、ちょっといいですか?」
クラピカはセンリツを椅子に座らせてから、リンセンのもとへ向かった。優しい。
「ボス、この件なのですが……」
二人はタブレット端末を覗き込みながら話をしている。顔が近い。
センリツはその光景をじっと眺めた。
(シチュはいい……ただ、問題はリンセンが地味!!)
センリツはため息をついた。
(私は美形×美形でないと推せないの!)
そう、センリツは美形好きだった。
ガチャッ。
「クラピカ、ちょっといいか――」
「バショウ、あなたは絶対に違うから部屋から出て行って」
「何で!?」
センリツはそれから、クラピカの攻めとなる人材を探し始めた。
しかし、悲しいかな、ここにはマフィアしかいない。どこを見てもゴツい男や厳ついおじさんばかりで、お眼鏡にかなう者はいなかった。
そんなある日。
ネットで好きなアイドルの同人誌を漁っていたセンリツの目に、一冊の本が飛び込んできた。
表紙に描かれていたのは、中性的な金髪の美少年と、その肩を抱く黒髪の美形。額には十字の刺青がある。
クラピカと、幻影旅団の団長クロロだった。
(クロクラ!! これ以上ない美形×美形!! 盲点だったわ……!)
しかし、センリツはふと真顔になった。
(でも、復讐する者と、復讐される者……許されない関係ね……)
小さく息を吐き、俯く。
そして、顔を上げた。
(……設定まで最高かよ!! 情緒が死ぬ!!)
センリツは迷わず注文ボタンを押した。
数日後。
センリツは同人誌を読んでいた。職場で。
泊まり込みの仕事が続き、なかなか家に帰れない。職場に持ち込むのもどうかと思ったが、欲望には勝てなかった。
休憩中、夢中になってページをめくる。
「監禁ものなのね……やだ、好きな展開だわ……」
一人でニヤニヤする姿は、どこから見ても不審者だった。
しかも、内容はかなり過激だった。
(さすがに職場に持って来るのはまずかったかしら……。それにしても、この作者、クラピカにもクロロにも妙に詳しいわね)
ふと、冒頭の説明に目を留める。
「この冒頭、クラピカの緋の眼のことも書いてある……」
「緋の眼がなんだって?」
「わーーーーっ!!」
驚きのあまり、センリツは本を床に落とした。
振り向くと、クラピカが立っていた。
「ク、クラピカ! ど、ど、どうしたの?」
「驚かせてすまない。しかし、先程、緋の眼と言わなかったか?」
「あっ、あっ、あの、その……」
「何を読んでいたんだ?」
クラピカが本を拾い上げる。
「ぎゃー!! だめよ!!」
しかし、時すでに遅し。
クラピカは本を開いてしまった。
それは、彼にとって希望すら残らないパンドラの箱だというのに。
「……!! これは!?」
(あなた、今どこを読んでるの!? どちゃくそエロいところもあるんだけど! 性癖がばれちゃう……!)
「なぜ、私がクルタ族で、緋の眼を集めていることを……」
クラピカが読んでいたのは、冒頭の説明部分だった。
(まだ間に合う!!)
センリツは慌てて本を奪い取った。
「センリツ、その本を見せてくれ。私の素性が詳しく書かれている。他に何が書かれているのか確認したい」
クラピカが手を伸ばす。
センリツは本を抱え込み、ぶんぶんと首を横に振った。
「……クラピカ、これはあなたが見てはいけない」
「何故だ?」
「とても過激なことが描いてあるの……。あなたのトラウマになるわ」
「!!」
(まさか……クルタ族襲撃のことか……?)
「いや、私は何が書かれているのか知りたい」
「いいえ、読んではいけない。とても詳細に描いてあるの。クラピカが読んだら死んでしまうわ(私の心が)」
「センリツ……。では、何が書かれていたのか教えてくれ」
(R18特殊性癖の同人誌の内容を説明する? 本人に? むりむりむりむり!! お互い死ぬ!!)
センリツは俯いた。
「センリツ。私には知る権利がある」
(肖像権か……。訴えられたら負ける。正直に話すしかない……)
センリツは恐る恐る顔を上げた。
「あなたが、監禁されるの」
「……何?」
「幻影旅団のクロロに」
「なんだと!?」
「そして、拷問を受ける(とてもエロい)」
「それは、幻影旅団の計画書ということか!? どこで手に入れた?」
「クラピカとか一般の人は聞いたこともないと思うんだけど……仄暗い腐女子が見るサイトで……」
「仄暗い? ダークウェブか?」
「ええ。まあ、そうと言えなくもないわ」
当然、全然違う。
しかし、センリツにはうまく説明できなかった。
クラピカは、怯えきったセンリツを見つめた。
「センリツ。怯えなくて大丈夫だ。あとは、私がなんとかする」
そう告げると、クラピカは部屋を出ていった。
「……助かった……?」
センリツはそっと胸を撫で下ろした。
数日後。
センリツはクラピカに呼び止められた。
「センリツ、来てくれ」
「クラピカ、どうしたの?」
「蜘蛛の一人を捕まえた」
「えっ!?」
「今、ダウジングチェーンを使って尋問しているところだ。先日、君から聞いた私の拉致計画について問いただした」
「拉致……あれは創作ではなかったの?」
「ああ。どうやら、本当に計画されていたらしい」
「そんな……あれは二次のはずじゃ……」
「にじ?」
「あっ、いいえ。それで、どうしたの?」
クラピカは難しい顔をした。
「相手は嘘をついていないようなのだが、どうにも話が噛み合わない。本人いわく、婦女子にしかわからないそうだ」
「えっ!? 腐女子って言ったの!?」
「ああ。婦女子と言っていた。ここにいる女性は君だけだ。申し訳ないが、尋問に立ち会ってもらえないだろうか」
「わかったわ」
(巻き込まれた挙げ句、私の性癖までばれるんじゃ……)
センリツは胸騒ぎを覚えた。
部屋に入ると、マチが椅子に拘束されていた。センリツの姿を見るなり、マチが口を開く。
「あなたも腐女子なの?」
「ええ、そうよ」
「推しカプは?」
「……クロクラ」
マチの口元がにやりと歪んだ。
「ふふふ……。ようやく私の布教の成果が出てきたわね」
「布教? 何かの宗教なのか?」
クラピカが怪訝そうに尋ねる。
「そうね。私はあなたとクロロを信仰しているわ」
「信仰だと? お前たちの目的は何だ? なぜ私を殺すのではなく、拉致監禁しようとした?」
「クロクラでは、拉致、監禁、拷問はもはや三種の神器よ」
「わかるわ」
「わかるのか!?」
(やはり宗教儀式なのか!? 緋の眼が古くから宗教儀式に使われていたという記録もある……!)
「この緋の眼を儀式に使うつもりなのか?」
「違うわ。クロロに必要なのは、あなた自身よ」
マチの視線がクラピカを射抜く。
「そう。クロロは愛し方がわからないの。執着なのか、それとも本当の愛なのか……」
「センリツ!?」
いつの間にか、センリツも話に加わっていた。どうやら、語らずにはいられなくなったらしい。
そんなセンリツを見て、マチは上機嫌に続けた。
「あなたには、私の『蜘蛛の檻』をお勧めするわ」
「蜘蛛の檻!?」
センリツは口元を押さえ、わなわなと震えた。
「まさか……マチバリ先生……?」
「ええ、そうよ」
次の瞬間、センリツは涙を流して跪いた。
「センリツ!? どうしたんだ!?」
クラピカは慌てて駆け寄り、彼女の肩をつかんだ。
「クラピカ……この人は神よ……! こんなことをしてはダメ。どうか解放して差し上げて……」
「お布施を……どうか、お布施をさせてください……!」
「!!」
(センリツがおかしくなってしまった! 念で操られているのか……? この女、危険だ!)
その時。
ドゴォッ!!
突然、壁に大穴が開いた。
その穴から、クロロが姿を現す。
「マチ、帰るぞ! 締切が近い!」
「くっ……! まだ布教は終わっていないけど、仕方ないわね」
「待て! 話は終わっていないぞ!」
クラピカが叫ぶ。
クロロは振り返り、クラピカに視線を向けた。
「知りたいなら教えてやる。サークル名『クモの巣』で検索しろ。新刊は全年齢向けだから、安心して読め」
「ダークウェブか!?」
「違う。同人サイトだ」
クロロはそう言い残すと、マチを連れて去っていった。
後日、サークル「クモの巣」から新刊が発売された。
タイトルは『がんじからめの恋』。
クラピカとクロロの初恋を描いた、全年齢対象のラブラブ本である。
「これは、どういう意味だ。やつの休戦の申し入れなのか?」
真剣な顔で本を読み込むクラピカ。
(クラピカ……それはただの同人誌なのよ……)