村の奥にあった民家でクエストを受ける。
クエスト名は《森の秘薬》。
内容だが、自走捕食植物《リトルネペント》からドロップするアイテム《リトルネペントの胚珠》を探し出すというものであった。
普通のネペントからはドロップせず、花つきのネペントからのみドロップするアイテムで、花つきの出現率は一パーセント。
それと同じ確率で、実付きのネペントが出現するが、それは罠であって実に少しでも攻撃してしまうと、爆発し周囲に仲間のネペントを集めるという特性がある。
気になる報酬は片手用直剣《アニールブレード》で強化をしながらであれば三層の迷宮区近くまで使える結構な武器らしい。
ルサの装備は片手用直剣であった為に必要不可欠な武器であった。
俺の装備は短槍であったために必要ではなかったが、良い値段で売れると情報サイトにあったため、クエストを受けることにしていた。
「クリス君!作戦を考えましょう」
ネペントが湧く狩場まで歩いている途中にルサが話しかけてくる。
「えーと、実付きが出た場合にどうします?」
ルサがちょっと困ったような顔をして、首を傾げる。
βテストの時に嫌な思いでもしたのだろうか。
「まあ、逃げるのが得策だと思うけど……」
と、俺が思いついた最良の手を提示すると。
「クリス君、ナンセンスです! いかに難しい敵を工夫して倒すかがゲームの醍醐味じゃないですか!」
何をいっているのかさっぱり分からなかった。
普通のゲームだとその楽しみ方はありかもしれないが、このゲームは死ぬかもしれないんだぞ。
「このゲームの死は現実の死となる可能性があるんだぞ。逃げるのが最良の選択じゃないのか?」
少しむっとした表情で答える俺を尻目にルサは笑いながら。
「だからそのための、作戦会議です!」
「まずはその耳栓の理由を教えてくれませんか?」
やはり、耳栓のことは気になっていたらしい。
そりゃ耳栓と言うアイテムは音を遮断するアイテムでプラスの要素は全く無い。
俺自身もそんなものを付けている人がいたら聞いてしまうことだろう。
「もしかして、もしかすると。縛りプレイですか!?」
急に何かを思い出したかのようにはっとなり、尊敬のまざなしで俺を見つめてくる。
縛りプレイとは、ゲーム内で回復禁止や魔法を制限しながらプレイすることをいう。もちろんしたことは数えられるほどしかないが。
「いやっ、そんなもんじゃなくて。俺ってフルダイブ不適合者なんだよね」
と、言うとルサは少し曇った顔になった。
そりゃ、誰でも足手まといとはパーティーを組みたくないか……。
「フルダイブ不適合ですか……。どういった障害が起きてるんですか」
ルサはちょっと心配そうな目をしながら一直線に俺の目を見てくる。
「見てわかる通りに、五感の中の《聴》の部分に異常があってね、聞こえすぎちゃうから耳栓をしてるんだ」
ルサはそれを聞くと少し安堵した様子を浮かべた。
「それは、耳栓をすれば普通の大きさで聞くことが出来るようになるんですか」
「うん。人よりかはちょっと大きく聞こえるけど」
「じゃあ、外せばめっちゃ遠くの音が聞こえたりします?」
「もちろん、足音だけだったら百メートル先までわかるよ」
途端にルサが考え出し、うーん。やら、ほーん。などと唸っている。
唸ること数秒、
「それってすごくないですか?」
ルサは悩んでいたことを忘れていたかの様な、うきうきとした態度で顔を近づけてきた。
「百メートル先の音が聞こえる何てチート級じゃないですか! それなら索敵スキルを取らなくても良いってことですよ」
「あっ! 確かに……」
俺では考えしなかった発想だった。確かに俺には敵の位置が分かるし、大雑把に数も分かる。
しかも、最初に埋められるスキルスロットはたったの二つで、基本的には自分の使う武器と、もう一つのスロットには《索敵》か《隠蔽》のどちらかを取ることが多い。
俺自身は、投剣がかっこよかったため一つのスロットに埋めたが。《索敵》か《隠蔽》のどちらかに変えようと思っていた。
「じゃあ、私の索敵スキルいらないね。消去!」
俺が停止するよりも先にルサは索敵スキルを消去し、慣れた手つきでウィンドウを滑らし、空いたスロットに《軽金属装備》セットする。
「ばっ! 何やってんの!?」
焦った俺は柄にも無い声を出してしまう。
ソロでもっとも大切なスキルの一つが《索敵》で、経験地効率が上がるだけでなく、生存率にも大きく影響を及ぼす。
そのため、《索敵》スキルを持っていない俺はホルンカの村でプレイヤーに声をかけていたのだ。
《索敵》スキルを消す、と言う事はソロを捨てるという事と同意義なのだ。
「ふえっ!」
俺の声にびっくりしたのか、ルサも変な声を出す。
「だって、いらないよね……」
と、不思議そうに俺の顔を覗き込んでくる。
「確かに今はいらないのかもしれないけど、ソロに戻れなくなっちゃうよ」
ルサははっとしたような顔をして、泣き顔へと変化していった。
「これから先はソロとグループを組む奴に分かれるだろうし、はっきりと分かれてしまったならグループに入るのは少し難しいよ」
追い討ちをかけると、ルサは本当に困った顔になるが、次第に明るい顔へと戻っていく。
「じゃあ、クリス君が私とグループになっちゃえばいいんだよ!」
ルサはまたもや、すっとぼけたことを言い出した。
俺が? こんなかわいい子と、これから先もグループ組む?
それは、それで魅力的なことだが、こんな俺でもいいのだろうか……。
「フルダイブ不適合の俺でもいいの?」
「全然構わないよ! むしろ頼もしいよ。クリス君っ!」
ルサはまたもや笑顔に戻る。
「それじゃあ、話しがぐーんと戻るけど」
ルサは実付きのネペントが出た際の作戦を話し出した。