SAO/耳栓のランサー   作:しるべ

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カルンの村

ホルンカの村の《北の森》を抜けると、小さな《カルン》という村がある。

その村にある、《ホワイトタイガーの群れ》というクエストがとにかく経験地効率がよい。

そのクエストは殺戮系クエストといい、モンスターを何匹倒してほしいなどといった内容だ。

人がたくさんいると、モンスターの奪い合いになることが多いため、人があまりいない今が最大の好機といえる。

 

「最初に受けるクエストの話しなんですけど」

 

森の中を歩いている最中にルサの口が動く。

 

「クエストモンスターの《ホワイトタイガー》は攻撃力が他に比べて高く設定されているんですよ」

 

もちろん、そのことは知っていた。

《ホワイトタイガー》の強攻撃を食らってしまうと、レベル5の俺たちであっても軽装備では二回の攻撃でHPがゼロとなってしまうだろう。

そのために、ネペントとは違い、別々に狩りをするのは得策ではない。

 

「そこで、連携をとって狩ろうと思います」

 

ルサもそう思っていたらしく、パーティーでの狩りを提案してきていた。

もちろん断る理由もなく、了承する。

 

「そういえば、クリス君ってスイッチって知ってる?」

 

スイッチとは確かパーティー狩りの際の作戦の一つだった記憶がある。

もちろん、ルサと会うまでソロで戦っていた俺は実践した事はなく、情報サイトに載っていた記事を読んだだけなので詳しくはわからない。

 

「知ってるけど、実践をした事はないんだ」

 

正直に答える。

ここで、見栄をはることに意味はないだろうし、はるほどのプライドも持ち合わせていない。

 

「そうなんだっ、じゃあ現地に着いたら教えてあげるね!」

 

何故か、ルサがご機嫌になったような感じがした。少しだけだが歩く足でリズムを取っている。

まあ、ルサにレクチャーしてもらうのも悪くはない。

 

 

 

「クリス君っ、スイッチ!」

 

ルサが右手にある剣でホワイトタイガーにソードスキルで攻撃を仕掛ける。

剣が赤く染まり、宙に軌跡を描く。

ソードスキルを真正面から受けた《ホワイトタイガー》は反動で後ろへ仰け反る。

その硬直時間を使い、ルサが後ろへと引き、俺が前衛となる。

簡単に言うと、これがスイッチと言う技法だ。もちろん簡単ではなく呼吸の合ったチームプレイが大切である。

ホワイトタイガーはこれで十匹目。スイッチのタイミングも掴めてきていた。

ノックバックが終わらない間にソードスキルを放つ。

短槍専用単突技《オーバーポイント》、威力は少ないが、それを補っても余るくらいの速さを持っている技だ。

弱点を突いたが、先ほどのルカの攻撃を合わせても四割ほどしか削られていない。

槍を抜き、一旦距離を置く。

するとホワイトタイガーは前のめりになる。これは突進からの噛み付き攻撃の予備動作。

 

「スイッチっ!」

 

と、叫ぶと後ろからルサが現れ,盾を構える。

ものすごい勢いで飛び込んできた白い虎を受け止め、盾が白い光を放ちながら押し返す。

盾専用スキル《パリィ》が攻撃を仕掛けてきた白虎を弾き飛ばしノックバックさせる。

それに合わせて、ソードスキルを発動させる。

槍専用スキル《ダブルスピアー》。現在、俺が出せる最大威力の二連撃だ。

白虎の首と右肩に突き刺さる。

残るHPは三割。

ソートスキル後の硬直が終わった、ルサが直剣単撃技《スラント》を放つ。

白虎を切り裂き、淡い青色をしたガラスへと変えていった。

 

俺たちがカルンの村で受けたクエストの内容は、さきほど倒した白虎の討伐であった。

数はパーティーで百匹。

《ホワイトタイガー》を倒すのはソロに向いていないため、カルンの村に来ているプレイヤーは、見た感じ俺たちを合わせてもギリギリ二桁になるくらいの数であった。

もちろん、ソロで倒すのは不可能ではない。

ソロで狩っているプレイヤーは一人いたが、その人は白虎が放つ攻撃を全て避け、弱点である首へとソードスキルを吸い込ませていた。

マネなど到底できるはずもなく、ルサと協力して一匹、一匹を着実に倒していった。

 

「これで九十九匹目っ!」

 

ルサが剣を振り降ろす。

白虎は弾け飛んで消えていった。

現在の時刻は午後六時、空は夕日で赤く染まっている。

一度お昼休憩、兼アイテム補給で村へと戻ったが、それ以外はほとんど狩りに費やしていた。

狩りをし始めておよそ七時間で上がったレベルは1のみで、最初と比べ極端にレベルは上がりにくくなっている。

それでも、着実に経験地バーは伸び、強くなってく実感が出来る。それを励みにがんばることが出来ている。

あとは、元気に剣を振りまくっているお隣さんのおかげかな。

 

「最後の一匹っ!」

 

ルサは凄まじい速さで再POPした、白虎に飛び掛っていった。

ツメの攻撃を避け、突進を弾き返し、噛み付き攻撃を盾で受け止める。

その合間を縫って攻撃を仕掛けている。

白虎のHPが残りわずかとなるが、一度も前衛を交代していない。と、言うよりも入っていけないほうが正しかった。

最後の一撃を振りかぶったルサの表情は笑顔だが、とてつもなく怖い。表情と行動のギャップが激しかった。

白虎が最後の一撃をくらい、消え去ると同時に鈴がなる音が聞こえる。クエスト完了の合図だ。

 

「ルサ、お疲れ様」

 

最後の一撃に勢いをつけすぎたのか、尻餅をついているルサに水を渡しながら、労いの言葉をかける。

ルサはこちらを見て、照れた笑いをして、起き上がる。

 

「ありがとっ、こんなに早く終わったのクリス君のおかげだよ!」

 

そんなことはない、攻撃の手数は一緒であったが、守りはルサが一人で行なってくれていた。

どっちかと言うと、足手まといだった気がする。

 

「十二時間っ!」

 

俺の顔を見て、ルサが突然大声を出した。

 

「どっ、どうしたの?」

 

びっくりする俺を見ながら、先ほど渡した水が入っているビンの栓を開ける。

 

「私がソロで《ホワイトタイガー》を百匹倒すのに掛かった時間だよ」

 

ルサはにっこりと暖かな笑顔を見せながら。

 

「クリス君は足手まといなんかじゃないよ。おかげで五時間も短縮できたんだもん! ありがとね」

 

目に涙が溜まりそうになるのを押さえ込む。

涙を見せるわけにはいかない。男として。

 

「こっちこそありがとう」

 

と、言うと。

満足そうに頷きカルンの村へと歩き出す。

 

「それじゃあ、クエスト完了しに行こっ。クリス君!」

 

振り向きながら満面の笑顔を見せてくれる、ルサに感謝をしながら、同じように笑いながら一緒に歩き出す。

今日の夕飯は少し豪華にしようと心に決めた。

 

 

 

 

 

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