SAO/耳栓のランサー   作:しるべ

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初めての迷宮区

 

「ここが迷宮区か……」

 

ソードアートオンラインが開始され、三週間がたった今日。

今まで見ることしか出来なかった塔の内部に、ようやく入ることが出来た。

 

「懐かしい感じがするなー」

 

隣にいるルサは鼻をヒクヒクさせ、塔内部の匂いを嗅いでいる。

 

「匂いでわかるものなの?」

 

少し気になったためルサに聞いてみる。

 

「んー。雰囲気かな」

 

匂いを嗅いでいるところを見られて少し恥ずかしかったのか、首を横に傾け、はにかむ。

深呼吸をする。

確かに外にいたときよりも、空気が濃い気がしないこともないが。

 

「やっぱりわからない」

 

「えへへー。そうだよね、実は私もよくわからなかった」

 

一緒になって笑い出す。

今までで一番危険な場所に向かうにもかかわらず、俺とルサは平常運転だった。

 

 

ゲーム開始から三週間が経ち、現在の俺たちのレベルは8へと上がっていた。

レベルの高さでいうと、トップクラスになっていて。それ以上の人はほとんどいないと言ってもいいほどになっていた。

ゲームからの脱落者は千五百人は越えていると、情報を耳にする。このペースでは5層近くで止まってしまう可能性があると指摘されていたが、時間が立つにつれ退場する人の数も徐々に減っていった。

 

「前方に足音が聞こえるよ」

 

耳栓を外している時には、俺たちは一切話さない。

音が聞こえなくなるためでもあるが、耳栓を外していての会話は難しいからだ。

そのため、ルサが耳栓を付けるようにとジェスチャーをしてきたので、耳栓を装着する。

 

「えっと、多分ここらへんのモンスターはほとんどが《コボルド》だと思うんだけど、対処の仕方はわかるかな?」

 

迷宮区の亜人型モンスター《ルインコボルド・トルーパー》。通称コボルド。

武器は斧を使ってきて、敵がソードスキルを使ってくるようになるのはコボルドが最初だ。

攻撃力も高く、そして素早い。ソードスキルは自分にとっては頼りになるが、相手が使ってくるとなると凄まじい脅威だ。

一応、情報サイトに対処法はいくつか載っていたが、あまり記憶には残っていなかった。

 

「ごめん、ちょっとわからない……」

 

と、言うとルサはひそひそ声で。

 

「えっと、肩に斧を乗せたらソードスキルの発動の予備動作だから、クリス君が前衛の時はすぐさまスイッチ。私が前衛の時はそのままで」

 

ひそひそ声をする必要はないだろうが、迷宮区の薄暗さや敵が近くにいる緊張感が合わさって雰囲気的に声が小さくなっているのだろう。

 

「うん、りょうかい」

 

「それと分かってるかもだけど、ソードスキルを受けきったらすぐさま攻撃を仕掛けてください」

 

俺も釣られて声が小さくなってしまう。

少しだけ面白い出来事だったが、いまは目の前の問題を片付けるのに専念しよう。

 

「大丈夫」

 

頷きながらルサのほうを見る。

若干、久しぶりの戦闘らしい戦闘に心なしかうきうきしているようにも見える。

 

「それじゃあ、私が先頭で最初の攻撃はクリス君の投剣でよろしくお願いします」

 

その言葉を聞き、頷くと満足そうな顔を浮かべる。

ルサが走る体制になり、カウントダウンをし始める。

 

「3、2、1、ごー!」

 

ルサが走り出す、続いて後を追うように俺も走り出した。

数メートル先にコボルトが見える。

持っていた《ショートスピア》が光だし、閃光となって放たれる。

強化内容に《正確さ》を加えた、自慢の槍はコボルトに命中し、少しのノックバックを発生させる。

続いて、ルサの剣が赤く光る。

ノックバックしている、無防備なコボルト目掛けて直剣水平二連撃《スネークバイト》を発動させる。

目にも留まらぬ速さでコボルトを左右交互に切る。

雄たけびをあげるコボルトは肩に斧を乗せる。

作戦通りそのままルサが盾を構えて受けきると、硬直時間が生まれる。

その隙にソードスキルを発動させ、コボルトに突き刺す。残りHPは三割弱。

ルサのソードスキルで縦に一閃。コボルトは砕け散り経験地とドロップ品が写ったウィンドウが開かれた。

 

 

コボルトを倒したり、隠し部屋を探したり、地図をマッピングしている間に午後六時となっていたため、急いで町へと帰る。

βテストとあまり隠し部屋の場所が変わっていなかったため、今日のもうけは大きい。

基本的にもうけは半分にする。ドロップ品は双方のどちらかが必要であったなら、そちらに譲るという形になっている。

反省会をするため、レストランに入り、いつも通りに黒パン、サラダ、スープと大きなグラタンを注文する。

 

「あのですね」

 

注文を頼み終えたところでルサは話しかけてきた。

 

「ドロップ品も貯まって来たので売却したいと思うんですけど」

 

今日の戦利品が多かったため、アイテム蘭はほぼ満タンになってしまっている。

 

「普通にNPCに売っちゃえばいいんんじゃないかな」

 

いつも通りの処理の仕方を提案すると。

 

「それでも、いいんですが。コボルトのドロップ品は斧の強化素材になりますし、装備もプレイヤー同士で売ったほうが高く売れると思うんです」

 

俺が確かに。と頷くと続けて。

 

「装備とかがプレイヤーの市場に出回ると攻略も早くなっていきますし」

 

NPCに売った装備やアイテムは自動的に消去されてしまうが、プレイヤー同士の売買はそのかぎりではない。

自分が売ったアイテムは市場に出回り、そして誰かが装備する。

そのおかげで装備を無駄にすることがないため、攻略のスピードも上がってくる。

理想は全てのアイテムをプレイヤー同士で売買することだ。もちろん出来るわけがないが。

今までそうしなかった理由は商売をするプレイヤーがいなかったのだ。ほとんどのプレイヤーが狩りへと足を運んでいったため、NPCに売ることしか出来なかった。

ゲーム開始から三週間たった今では商売をしている人も増えてきている。

 

「そうだなー。じゃあ、明日売りに行こうか」

 

ルサはその言葉を聞き、喜ぶ。

 

「ではでは、始まりの町に戻りましょう。今はあそこが一番プレイヤーの数が多いですし商売しているプレイヤーはあそこを拠点としているらしいですよ」

 

「でも、戻るとなると。一日かがりになっちゃわない?」

 

ルサの勢いは止まらず少し早口になりながら畳み掛けてくる。

 

「そうなっちゃいますが、やっぱりそうしたほうが世のため人のためですよ!」

 

ルサと目があうと,不自然に視線を外された。

このときのルサには二通りの可能性がある。一つはうそをついていること。もう一つは言っていることの裏に何かがあること。

この場合に前者はないため、後者となるだろう。

 

「つまり、休暇が欲しいと」

 

俺がそういうと,びっくりした顔になる。

 

「えへへー。ばれちゃいましたか」

 

ルサは照れ笑いをする。

確かに今までノンストップで狩りを続けていたため、この世界を楽しむことはしていなかった気もする。

 

「そうだね、明日の狩りは中止にしようか」

 

俺自身も少しこの世界をじっくりと見たかったため、同意することにした。

途端にルサが立ち上がり、ガッツポーズをした。

 

「やったーーー!!」

 

周りを気にせず叫ぶルサを抑えながら、明日のことを考え、少し楽しみになってきた俺がいた。

 

 

 

 




前回、戦闘シーンがグダグダになってしまったため再チャレンジしてみたのですが、うまくいったのか自分でもわかりません笑
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