理想のラスボス系うすほそになったので、完璧を求めて暗躍していたら悪が蹂躙されていた 作:ほそラス
かくして私はノロハレの力を取り込みラスボス系うすほそとしての第一歩を踏み出した。
ノロハレを取り込むことによる闇属性への適正の偏りは凄まじく、それまで使えていた魔術のことごとくが使えなくなった。
この世界で闇属性魔術は聖教会から異端とされており、使うものは少ない。
結構ピンチな状況だ。
しかし悪いことばかりではない。
まずなんと言っても、闇属性というのが最高だ。
これで特化した特性が土とかだったら最悪である。
全然ラスボスっぽくないぞ。
いや、それはそれで悪くはないんだけどね。
土属性って地味で不人気だから、それを逆手にとって転生者のおもちゃにされるのが鉄板だし。
私とは合わないってだけだ。
さて、闇属性特化になった私は、さっそくそれ用に自身のビルドを整えていく。
まずなんと言っても、闇っぽい魔術の開発だ。
世界的に異端とされている闇魔術を扱える人間はほとんどおらず、他者から学ぶという方法は使えない。
だから自分でなんとかするしかないというわけ。
幸いにも私には高い魔力の制御技術がある。
多少適当でも、魔力を制御して大概に放出してしまえばそれだけでいい感じの魔術になるのだ。
いっそ無詠唱で魔術を使うのもアリだな、この世界は詠唱による魔術行使が基本だから、一人だけ無詠唱って特別感ある。
というわけで、私は色々と魔術を組みあげて行った。
その一つが、例の"影"である。
こうしてどんどん能力がラスボスっぽくなっていくと、それはもうたのしー! となってテンション爆上がり。
鍛錬の傍ら、息抜きとしてラスボスムーブをより洗練させるべくポーズの練習まで始めてしまった。
ラスボスとして大事なのは、とにかく自分自身の行動に自信を持ち、一挙手一投足で強さを誇示すること。
私の取った行動一つ一つが、相手に私をラスボスだと思わせるのだ。
少しでも、行動に油断があってはならない。
その言動に、恥じらいが合ってはならないのである。
実は最初のうち、私はこの辺りに少しだけ照れがあった。
女性らしい言葉遣いというのが、前世ではまったく縁のないものであったし、何より前世の私はただのオタクでしかない。
自分がラスボス系うすほそになってしまったから、こうして完璧を目指しているのであって、本来ならラスボス系ヒロインを横から眺めていたかったのだ。
まあなってしまったものは仕方がないので、照れを何とかするために努力を重ねる他ない。
その点において、役立ったのが二つ。
一つは言うまでもなく、ミリザへの耳元囁き。
ここ最近はミリザへの囁き内容が雑魚煽りになってきて、私の羞恥心を更に煽ってくる。
なんかこう、雑魚って罵倒すると喜ぶんだよ、最近のミリザ。
ミリザの姓はコメスティアというのだが、身も心もミリ・ザコメス・ティアになってしまったのだろうか。
とにかく、羞恥心を押し殺して罵倒するという経験は、私に自信を与えてくれた。
ラスボス系うすほそたるもの、敵を優雅に罵倒して煽ることも時には必要だからね。
そういう意味でも、ミリザの存在はありがたかった。
そしてもう一つが――
「――ご主人様ぁ! このコノアが、ご主人様のために手足となって働きますわ!」
コノアである。
ノロハレから解き放って、眼の前でそれをもぐもぐしてからしばらく。
彼女は私のことをご主人様と呼び、慕うようになっていた。
ただ慕っているだけではない、もはや心酔という言葉すら生ぬるいほどに私へ狂信しているのだ。
で、こんな風に私へ忠誠を近い、何でもしてくれと言ってくるわけ。
とりあえず、人前でこんな態度を取られると周囲から何だと思われ、私の両親を心配させてしまう。
なので外ではこれまでと変わらず、冷たい態度を取るよう指示しておいた。
本人は泣いてそれだけは勘弁してくれ、と言ってきたのでお互い外では不干渉を貫くように、という妥協点に落ち着いたけど。
最初のうちはどうしたものかなぁ、と思っていたけれど私に忠誠を誓ったうえで日常生活ではそれを表に出さずにいてくれるというのであれば、そこまで大きな問題はなかった。
ところで心酔して私に忠誠を使ったから敬語口調何だと思うんだけど、なんでですわ口調?
いや、コノアがどれだけ私に心酔しても、その本質は変わってないから多分ノリなんだろうけど。
で、コノアの何が羞恥心克服にいいのかというと、彼女が私の部下であるという点。
部下の前では、絶大なるカリスマでもって威厳のある姿を見せないと行けない。
特にコノアは普段から私の姿を見ているわけだから、私は常時ラスボス系うすほそとして振る舞わなければ行けないわけだ。
心休まる瞬間など、母の作ってくれたハンバーグを家族三人で美味しく食べる時くらいである。
コノアに関しては、役立ったのはそれだけではない。
それまで魔術の魔の字すら学んだことのなかったコノアが、突然魔術を使えるようになったのだ。
流石に私みたいな繊細な魔術制御はできないけれど、そこそこ優秀な魔術師と余裕で渡り合えるくらいの力が身についている。
多分、出会った当初のミリザと互角に渡り合えるくらいかな。
今のミリザは、私の耳元囁きによる魔術制御能力の向上で、そこらの魔術師が全く敵わない強さになっているけれど。
さて、理屈としてはそれこそ、ミリザの魔術制御能力が向上したのと同じ理屈だろう。
緻密な魔力制御を、体に直接叩き込まれたのだ。
で、そうしてコノアが非凡な能力を手に入れると、私はあることを思いつく。
コノアにノロハレを探してきてもらうことにしたのだ。
私が強くなることにノロハレは必須。
そしてコノアは、どうやら自分以外のノロハレを救いたいと思っているらしい。
まぁ、普通なら迫害されて捨てられるところを、私が未然に防いだわけだからね。
斑点が体に現れてすぐ、誰かに見つかる前に私の元へやってきたことで、コノアは今も村で生活できている。
同じ用に各地のノロハレを救い出し、普通の生活に戻してあげたい。
それがコノアの願いというわけ。
これが私の目的と合致したため、私はコノアにノロハレを探してきてもらうことにした。
皆が寝静まった夜に、こっそりと、ね。
睡眠時間に関しては、もともとコノアは農作業とかを嫌がってサボっていたので、その時間を睡眠に当てれば問題ない。
私が治癒してあげることもできるし。
ここで大事なのは、私はあくまで自分の利益のためにそうしていると見せること。
何しろ私はラスボス系うすほそなのだ。
決して、善意で誰かを救ったりはしない。
私個人は秩序を重んじてはいるけれど、ラスボス系うすほそにとってはそんなことどうでもいいのである。
だから、自分の利益が善行と合致しているから行動しているだけ、という建前は大事だ。
コノアはそこら辺、よく解ってないと思うけど。
――で、そうしてノロハレの救出活動をしていく傍ら。
私の家にデカい姿見が設置された。
両者がどう関係しているのかは、一旦置いておくとして。
この時代の鏡は結構高級品で、身体を丸ごと映すとなると流石に手が出ない。
それを手に入れられるようになった、とだけここでは語っておく。
で、こうして姿見が設置されたことで、私は改めて自分がすばらしきラスボス系うすほそであると理解する。
いやね、ちょっと笑うだけでなんか狂気的なルナティックスマイルになるからね。
手をかざしてポーズを取ってみた日には……おおー!
すごい、とんでもなく傲慢に見える!
ちょっと笑ってポーズ取ってるだけなのに。
これがカリスマってやつかぁ~
それからすっかり、私は姿見の前でラスボス系ポーズの練習をすることになった。
これもラスボスムーブのために必要なこと、必要なことだ。
この時期には私の今の衣装――死神っぽく見える修道服――も完成しており、それを羽織ってポーズを取ることも増えた。
特にこう、この深すぎるスリットからおみ足をいい感じに出すと……危ない色気があるなぁ。
すばらしい!
とかやっていたら――
「――ご、ご主人様ぁ、何をしていらっしゃいますの?」
はうあぁ!?
コノアに見られた!?
両親は仕事に出ていて家には私だけだと思って、油断していた。
こ、今後は何か用事がある時は、念話魔術を使いなさいね。
私が魔力を取り込んだノロハレとの間でだけ成立する、便利魔術だ。
だから決して、決して私が部屋にいる時は念話を使わず入出してはいけないよ!
ノックされても気づかなかった私も悪いけどさぁ!
くそう、羞恥心を克服する道のりは、まだまだ長いということか……
一番の敵:羞恥心
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