最強になれば友達が増えると思ってた 作:もすもす
転生して間もなく、俺が思ったことは『今世こそは友達を作りたい』ということだった。
前世は平々凡々な人生だった。
……いや、正確に言うと、友達が一人もできなかったことを除いて平々凡々だった、なのかもしれない。
一般家庭に生まれ、公立の小中を卒業し、偏差値50くらいの公立高校に入学した。
部活は帰宅部で、週三でコンビニバイトをし、偏差値40後半の私立大学を目指して勉強をしていた。
趣味はゲームで、効率的にレベル上げしたり、RTAで最速タイムを目指すことが俺の生きがいだった。
友達は一人もおらず、昼飯は基本便所。
昼休みも机に突っ伏して寝ているふりをして過ごした。
コンビニバイトもおばちゃんかおじさんか外国人しかおらず、そこでも同年代の友人は一人もできなかった。
いじめられていたわけではない。
もちろん、あからさまに避けられていたわけでもない。
でも、クラスメイトとは明確な距離があり、話すことといえば事務的な会話だけ。
先生もそのことに気が付いていて、気を使われていたのか授業中に当てられることもなかった。
体育祭では目立った成績を出さず、かといって責められるほど悪い成績でもない。
文化祭準備期間も割り振られた仕事は淡々とこなして、それが終わり次第誰にも言わずに帰る日々だった。
友達がほしいと思ったことは何度もある。
でも、どうやって話しかければいいのかわからなかった。
『ねえ、ここの問題がわからないから教えてよ!』
隣の席のやつにそうやって話しかける妄想は何度もした。
そこから話が広がって、そいつと仲良くなり、そいつがまた友達を紹介してくれる。
そんな妄想を机に突っ伏しながら何度したことか。
でも、いざ話しかけようとすると心臓がバクバクと高鳴り、呼吸困難になってくる。
もし言葉が突っかかってキモがられたらどうしよう。
自分の声が小さすぎて相手に聞き返されたらどうしよう。
そんな恐怖がいつも頭をもたげ、ついぞ一度も話しかけることができないままだった。
結局、一人も友達ができないまま、俺は交通事故でその人生の幕を閉じ、新しい人生を歩むことになった。
転生したのはレベルやスキルの概念があるファンタジーの世界だった。
夢にまで見た異世界転生だ。
一人で暇なとき、俺はよくネット小説を読み漁っていた。
そこでは転生した主人公が新たな人生を歩み、仲間に恵まれながら強大な敵を打ち砕いていた。
だから、転生直後は簡単に友達ができて、周囲からすぐにチヤホヤされるものだと思っていた。
しかし、俺は辺鄙な田舎村の農民の長男で、兄弟姉妹もおらず、村の若者たちはこぞって都会に出て行ってしまった後だった。
俺の転生した異世界には汽車も自動車もあり、簡単に都会に出られるくらいには文明が発達していたのだ。
村に残っていたのは、腰の曲がった老人たちと、俺の家族と、子供のいない若い夫婦が一組だけだった。
以前、父に都会に出ないのかと尋ねたことがある。
それに対して父は言った。
「俺たちまでいなくなったら、村の爺さん婆さんたちが大変だろう?」
父は義理堅い男だった。
しかし続けてこうも言った。
「だが、お前まで村に縛り付けるつもりはない。もう少し大人になったら一人で都会に行くといい。都会には学園なるものがあるらしいからな。そこで知恵を身に着けて、立派に生きるんだ」
どうやら俺は15になったら都会に行けるらしい。
しかし、15まではボッチが確定した瞬間でもあった。
***
さて。
15までボッチが確定してしまったわけだが。
逆に言えば15になるまでの間に友達作りの準備を進められるというわけだった。
前世では何が悪かったか。
なぜ友達が一人もできなかったのか。
振り返ってみる。
クラスメイトで友達に囲まれていた奴らは、大抵顔が良かったり育ちが良かったりしていた……気がする。
イケメンだったり、実家がお金持ちだったりすると、友達ができるということだろうか。
しかし、今世の俺もパッとしない外見だし、生まれた家も田舎村の農民だ。
イケメンでもお金持ちでもない。
ということは、今世もまた、俺には友達ができないということだろうか。
……いや、諦めるにはまだ早い。
時間ならたっぷりある。
もう少し深く考えてみよう。
なぜイケメンだったりお金持ちだったりすると、友達が増えるのだろうか。
自分の立場で考えてみよう。
もし、俺がイケメンと友達になれる機会があったとする。
その場合、俺はイケメンと友達になるだろうか?
…………。
やばい。
俺に友達ができているという未来が見えなさ過ぎて、そもそもイケメンと友達になれる機会があることすら想像できない。
というか、そもそもイケメンだろうがなんだろうが、友達ができるのであれば誰だっていい。
俺なんかと友達になってくれる人が悪い人なわけがないし。
……うむ。
自分で考えるとなんの参考にもならないな。
ということで、父さんに聞いてみることにした。
「ねえ、父さん」
「なんだ?」
「父さんって友達、いた?」
「そりゃあなあ。若い頃にはたくさんいたさ」
「ほんと?」
「本当だとも。そもそも俺は若い頃、冒険者でパーティーを組んでたんだからな。母さんとはそこで出会ったんだ」
母さんとの馴れ初めには興味ない。
それよりもどうやって友達を作ったかだ。
「父さんはどうやってパーティーを組んだの?」
「おっ、ジルも冒険者に興味があるか」
「うん」
「パーティーはな、まあまず、それぞれメンバーに役割がある」
「ふむふむ」
「で、パーティーを組むってなったら、その役割をこなせるやつを一人ずつ探していくんだ」
「なるほど……」
「前衛、後衛、ヒーラー、荷物持ち、とかだな」
役割、か。
それは盲点だった。
友達作りにも確かに役割が必要なのかもしれない。
もしかしたら彼らの中にはツッコミ役とかボケ役とか、そういった役割が実はあって、最初にその友達の輪の中の役割に収まれなかったから友達ができなかったのかもしれない。
そう考えると俺に友達ができなかったこともしっくりくる。
俺はツッコミもボケも、そこまで得意ではなかったからだ。
父さんはさらに話を続ける。
「で、だ。その前衛や後衛とかでも、やっぱり強い奴から先に売れていくから、何としてでも強い奴を確保するのがかなり重要になってくるな。味方に足手纏いがいると、パーティーの生死に関わってくるからな」
ふむふむ……。
強さも大事だと。
それもそうだな。
優秀な奴が求められるのは世の必然。
自分の有用性をアピールするのが重要だと。
言われてみれば当然のことだったのかもしれなかった。
俺はただ友達って言葉に憧れている節があるけど、ほかの人たちにとっては違った意味合いがあるのだろう。
もっと実利的で損得勘定の中にあるものなのかもしれなかった。
前世でイケメンやお金持ちに友達が多かったのも、それが理由なのかもしれないな。
うむ。
今後の方針が決まった。
まずは自分の有用性を高める。
できれば前衛、後衛、ヒーラーあたりの役割を十二分にこなせるレベルにはなっておく必要があるだろう。
すべての役割を高水準でこなせるようになれば、潰しも効くようになるだろうし。
さすがに一つの役割だけを鍛えていくのはリスクが高い。
もしパーティーメンバーに誘われたとき、『あっ、ウチは前衛は足りてるんでやっぱりその話はなしで』とか言われたら立ち直れる気がしない。
最悪そうなっても『俺、後衛でもヒーラーでもいけます』とアピールできるようにならなければ。
都会の水準もよくわからない。
ので、とにかく今は鍛え続けるしかないだろう。
俺には前世で培ったレベリングやRTAの知識がある。
それを駆使して15になるまでにほかの人から自然と声がかかるほどの有用性を身に着けよう。
「ありがとう、父さん。おかげでやりたいことが決まったよ」
「そうかそうか。お前も俺の血をしっかりと継いでるんだな……」
俺はなぜか感激している父さんを放っぽりだして、早速レベリングへと向かうのであった。