餓死寸前の獣人少女に餌付けをしたら、ヤンデレハーレム村の村長になっていた 作:破滅
「作り方教えるからみんな手伝ってくれ」
ホットドッグ一つでは満腹にならなかった食べ盛りたちが集まって来る。
「手伝う!」
「オレ二つ食べたい!」
「教えて!」
大きい子たちは遠慮しているのか離れたところから見ていて、幼い子たちは警戒するように大きい子の足の後ろに隠れている。
この村に来たのは昨日のことだし、すぐに慣れて貰えないのは仕方がないか。
むしろ集まってきた子たちが、選りすぐりの食いしん坊ということだろう。
無限食料庫からトレーに山のように盛られたソーセージと、丸々のキャベツを二玉、そしてコッペパンを出していく。
「ミチル、この丸い葉っぱは細かく糸のように斬れば良いのか?」
ツバキさんが、包丁を手に取りながらキャベツを一つ取って流れるような作業で千切りの山を作っていく。
千切りの速さには自信があったが、俺よりもずっと細くて速い。
「流石本職の剣士。上手いもんだね」
「良い妻になれそうだと思うか?」
「まあ、なれるんじゃない?」
「そうか……」
顔を赤らめて頬を緩ませながら尻尾をぶんぶん振らせるツバキさん。
なんか言わされた感が強いけど、反応可愛いから良いか。
「腸詰の焼き方はアタシがみんなに教えるね?」
トングを手に取ったアカネちゃんが、トレーに盛られたソーセージを鉄板に次々と並べていく。子供たちが鉄板に手を伸ばす。
「待って、熱いから手で触っちゃだめ!」
小さな子供が手を引っ込める。
「私が焼くからみんなはパンを取って来て!」
そう言って、アカネちゃんはカチカチトングを鳴らしながら集まってきた子供たちに指示を出す。こっちは良いお姉ちゃんになりそうだな。
子供たちがパンを取りに来るので、切れ込みを入れて渡してやる。
鉄板に直で触れてしまいそうな危なっかしさを見ると流石に刃物は渡せないし。
「ミチル、切り終わったぞ」
「あ、ありがとうございます! じゃあみんなはこのマヨネーズをパンに間に塗ったらキャベツを取りに来てね」
俺はマヨネーズチューブを5つほど出してからフライパンへ向かう。
「んー、開かない!」
一人の子が、マヨネーズの蓋を噛んで一生懸命引っ張っていた。
「あー、これはね、ここをパカッて開けるようになってるんだよ」
目の前で実演をすると、真似して無事に開けれるようになる。
日本の製品は結構直感的に使える構造になっているものが多いけど、見たことないと最初は戸惑うか。
「わっ! いっぱい出ちゃった!」
気の弱そうな男の子が力の加減を間違えてぶちゅっとマヨネーズを多めに出して、手にも溢して舐めていた。
「んっ、これ美味しい」
美味しそうにぺろぺろ舐めている。
「ツバキさん、パンをさっきみたいに切れ込み入れて渡してあげてください」
「了解した」
ツバキさんにパンの切れ込み大臣を任せて、俺は千切りになったキャベツを火に掛けカレーキャベツを作る。
マヨネーズを塗ったパンを持って来た子たちに乗せてやる。
それをアカネちゃんのところに持って行けばソーセージが乗っかって、あとは台に置いてあるケチャップとマスタードをお好みで掛ければホットドッグ完成だ。
ぐぅぅっ、とお腹のなる音が響いた。
遠慮がちに見ていた高校生くらいの女の子が、恥ずかしそうにお腹を押さえて厨房の方へ来た。
「各々順番に回って作って行ってください。足りなくなったら追加するので好きなだけ食べてください」
一連の流れを見ていたからか、各自でパンを取ってナイフで切れ込みを入れ、マヨネーズを塗り、キャベツを挟み、鉄板に乗っているソーセージを取ってホットドッグを完成させていく。
ホットドッグのセルフサービスが完成した。
大きな子たちがアカネちゃんの隣で各々でソーセージを焼き始めている。
こうしてみるとバイキングビュッフェみたいだ。まあその実、分解したホットドッグの具材が並べられてるだけだけど。
俺も自分の分をもう一つ作って、食べる。
少し物足りないな。でも、もう一つホットドッグを食べたいというほどではない。
あと一口、食べたい。
ジュウジュウとソーセージが焼かれている鉄板を見る。……目玉焼きで良いか。
生卵を取り出してそのまま鉄板にパカっと割った。
ジュゥゥと音を立てて焼けていく様を、アカネちゃんやソーセージを焼いている女の子たちが涎をじゅるりと鳴らして眺めていた。鉄板に垂らさなくて偉い。
じゃなくて。
「……みなさんも食べます?」
「良いんですか?」
「各自で適当に取って作ってください」
卵の十個パックを三つほど机の上に取り出した。……これ開け方理解んない可能性あるか。切り取り線をビリビリ破いて、開けてから机の上に置いていく。
「卵、こんなに。一人一つまでですよね?」
「別に好きなだけ食べて良いですよ」
そんなにみんな食べたい感じなら、もっと出しておこう。
追加で更に10パックほど出す。
「卵、こんなに……。良いんですか? こんな高級品」
ぐぅぅとお腹を鳴らしていた女の子、大人しそうな黒髪おかっぱに白いケモ耳の少女が顔を寄せるようにして卵の匂いを嗅いでいた。
「卵って高級品なの?」
「当たり前じゃないですか! 卵って言ったら貴族や大商人しか食べれない貴重な食べ物ですよ!」
「貴重なの?」
「そりゃそうでしょ。日の出と共に鳴く日ノ鳥自体そんなに数が多くないのに、雌しか産まなくて、それだって数日に一回とかですよ?」
「養鶏場とかないの?」
「養鶏場ってなんですか?」
そう言えば、昔は日本でも卵は高級品だったという話を聞いたことがある。
昭和の子供にとっては卵とバナナが贅沢品だったとかなんとか。
あんまりイメージが沸かない話だ。
最近は値上がりが激しいとは言え、卵は10個パック三百円以内で買える。
肉よりも安価に手に入るたんぱく源だったので、弟妹たちの栄養バランスと家計を両立させる上でかなり重宝した、節約食材のイメージがあったからだ。
でも、卵が安価で手に入るようになったのは品種改良によって鶏が早く育って毎日卵を産むようになったここ50年程度の話か。
であれば、竪穴式住居みたいな家がまだ残ってるこの異世界では高級品という扱いをされていてもおかしくないか。
「まあ、高級とか気にせず食べてよ。栄養豊富だし」
この村の人たちは長い飢えで栄養失調気味だし、それを補給するという意味で卵は最適だろう。むしろ昨日も芋煮に卵を一つずつ落としても良かったかもしれないとすら思う。気が利かなかった。
「たったそれだけの理由で、こんな沢山の卵を?」
「十分な理由だと思うけど」
そもそも、出せる食料に限りはないわけだし。
おかっぱの少女は俺の手を握って着流しの中に入れてきた。温かくて、ふにっと柔らかい感触。大きくはないけど張りはあって、これはおっぱい……。
「って、な、何してるの!?」
「第二婦人で良いから、私のことも貰ってよ」
「だ、第二婦人!? 言ってる意味理解ってる? なんで?」
「だってこんなにたくさんの卵を栄養豊富だからって理由で出せちゃうくらいお金持ちでお人好しってことでしょ? なら二番目でもなんでも、一緒に居れば食いっぱぐれなさそう」
「別に、こんなことしなくたってお腹いっぱい食べさせるつもりだけど」
「でも正直、この村に男の人いなくなっちゃったし? 私もそろそろ結婚とか考える歳だから、それなら食べさせてくれそうな貴方で良いなって思っちゃうけど」
目を細めて、ぐいぐいと距離を詰めてくる。離そうと引いた手にふにふにと柔らかい感触を押し付けるように。
「お兄さん、卵焼けてますけど?」
カンカンと鉄板を鳴らし、柔らかい感触を強引に引き剥がしたのはアカネちゃんだった。
「サクラ姉、お兄さんにはアタシの方が先に唾つけてたんだけど? なるとしても三番目だから」
「え? アカネはまだ結婚できない歳だから私の方が先に結婚するけど?」
「年齢的にはそうかもだけど、先に約束したのはアタシだよね?」
そう言って必死に胸を俺の手の甲に押し付けてくるけど、見事なまでに絶壁だった。……そもそも、サクラちゃんと言うらしいこの食いしん坊娘と結婚する予定もないんだけど。
困っていると、ツバキさんが目の前にいた。
「アカネ、そういう話はまだ早いんじゃないか?」
陽光を反射して光銀の刃をアカネちゃんに向けていた。
「ひっ、ツバキ姉ちゃん。ナイフ向けるのは反則じゃない?」
「ああ、済まない。パンに切れ込みを入れる最中だったものでな」
左手に持っていたパンにスッと刃物を落として切れ込みを入れる。
「お前に私以外の妻を迎えるななんて言う権利は私にはないが、アカネはまだ子供だからな?」
「はい……」
言われるまでもなくやましいことをするつもりはなかったが、肝に銘じておこう。意味深に輪切りにされたコッペパンが少し怖かった。