餓死寸前の獣人少女に餌付けをしたら、ヤンデレハーレム村の村長になっていた 作:匿名希望
「美味しい、このお芋、ほくほくしてて甘い」
「肉、お肉。うぅぅ、美味しい」
「うわぁぁ」
「はぁっ、温かい」
ケモ耳娘&ショタっ子たちが、一心不乱に芋煮をかき込んで涙を流していた。
腹減り過ぎてる時に温かい飯を食うと涙が出てくるのは異世界でも同じらしい。
彼らを見ていると、お腹が空いて来た。朝ご飯から大分時間が経っている。俺も、お椀に芋煮をよそって食べる。
サトイモのムチンが溶けだして、とろみがついたみそ味の汁はさつまいもやカボチャの甘みが溶けだしていて優しい味になっている。
脂身の多い豚肉も噛むほどに味わいが舌に広がってとても美味しい。
ほぅっ、と湯気が口を出る。
ツバキさんが近づいてきて、物欲しそうな顔をしていた。
さっきのはどこにやったんだろう。まあ別に良いけど。
黙ってお椀に芋煮を注いでやる。
「……良いのか?」
「ああ。皮だけ剥いて自分は食えないってのは寂しいだろ」
「そんなことはないが……ありがとう」
ツバキさんは顔を綻ばせて大事そうにお椀を抱えて口をつけた。
「熱っ」
「ふーっ、ってして冷まさないと熱いぞ」
「わ、わかっている。子供じゃないんだから……」
恥ずかしそうに顔を赤らめてからふーっ、と芋煮を冷ましていた。
ずずっ、と音を立てて飲む。
「ほぅ。これは、優しい味だな。臓腑に温かみが染み渡っていくようだ」
「飢えると胃腸が弱るからな。消化に良いものをと思ったんだ」
サトイモに含まれるムチンなんかは、それこそ胃の粘膜を保護する効力とかもあるらしいし。
ツバキさんは目を丸くしていた。
「ミチルは、ただ飯を与えてくれるだけじゃなくて、そんなことまで考えてくれていたのか」
「絶食後に下手なものを食べると胃が受け付けなくて吐いた経験をしたことがあるだけだよ」
「そうか、ミチルも飢えた経験が……」
神妙そうな面持ちで、お椀に映る自分の顔を眺めているようだった。
「ぷはっ! 食べ終わっちゃった」
「おかわり、ありますか?」
あっと言う間にお椀を空にしてしまった獣人っ子たちが空のお椀を持って集まってきた。鍋にはまだ芋煮がたくさん残っている。
「悪いな、今はないんだ」
「ええ……そんな」
「はい」
シュン、と耳をペタンとさせる二人にチクリと胸が痛む。
「なぁ、まだ残ってるだろう。足りなければ私の分は良いから……」
ツバキさんが寄って耳打ちしてくる。
「飢えで消化器が弱ってるから、一気に食べると良くないんです。夜にまた出すのでツバキさんから説得してくれませんか?」
「そういうことなら……承知した」
子供二人の頭に手を乗せたツバキさんは、しゃがんで目線を合わせた。
「おかわりを作るのには時間が掛かるそうだ。夜になったらまた食べれるからそれまで待てるか?」
「夜になったら食べれるの?」
促すようにツバキさんと目が合う。
「ああ、俺はしばらくこの村にいるつもりだから。夜も明日も明後日も、お腹いっぱいご飯を食べさせてあげるよ」
「本当に?」
「ああ、本当だ」
「やったー!!」
「みんなに伝えてくる!」
獣人っ子二人がとてちて走って、村人たちに伝えにいく。空になったお椀を名残惜しそうに持っている人も、まだ食べてる途中の人もパッと笑顔が咲いた。
一方で、ツバキさんは眉を潜めていた。
「ミチル、しばらくと言ったが、いつまでこの村にいるつもりだ?」
「あー、いや。まだ決めてはいなけど。出て行くときはなるべくたくさんの食料を置いて出て行くつもりだけど」
「そういうことを聞いているのではない!」
大きな声に、村の人たちの注目が集まる。でも一番驚いているのは声を荒げたツバキさん自身って雰囲気だった。
「いや、それは勿論ありがたいのだが……」
何かを言おうと口を開いて、でもやめてを繰り返している様子だった。
「すまん、少しだけ席を外す」
そう言って、ツバキさんは立ち上がってどこかに行ってしまった。空になったお椀が残されていた。
芋煮が残った鍋を無限食料庫に収納し、キッチンを消滅させていく。
水道はみんな使いそうだし残しておく。お椀も消してしまおうと思っていたけど、みんな大事そうに洗って持っていたので残しておくことにした。
「この飢饉のご時世に、貴重な食料を恵んでくださってありがとうございます」
ボロの着物に、頭に巻かれた白い布、黒い髪と三角の耳、ふさふさの尻尾。
この村だと年長者ポジションなのか、背が高く大人しい雰囲気をした女性が近づいて来て頭を下げた。それでも二十代くらいに見えるし若いようだけど。
「この村には何もなく、お礼として差し出せるものはありませんが」
「大丈夫ですよ」
大地が割れるほどに地面が乾き、温かいものを食べただけで涙が出るほど飢えている人たちだ。何を渡されたとしても受け取れない。
「ありがとうお兄ちゃん! 美味しかった!」
「すっごく美味しかった! あんなに美味しいご飯初めて食べた!」
「ありがと! 私、大きく綺麗になったらお兄さんのお嫁さんになってあげるね!」
子供たちが駆け寄って来て、満面の笑みで元気よくお礼を言ってくれる。
最初にこの村に来た時は虚ろな目をしていたのに、笑顔で声を出せるくらいにはなったらしい。
「この笑顔が俺にとって一番のお礼ですよ」
「まぁ……」
半目で開かれたその瞳には警戒の色があった。
少し胡散臭く思われただろうか?
別に裏があるわけではないんだけどな……。
夜になるまで、村を案内してもらった。
案内してくれたのは、アカネという名の少女。短い赤茶色の髪と、三角の耳。
痩せているが笑顔が絶えず、可愛らしい雰囲気のある子だ。年齢は10歳くらいに見えるが、食料の乏しさを考えるともっと上かもしれない。
先ほど、大きくなったらお嫁さんになってあげるとかなんとか調子の良いことを言っていた子だ。
食べた後は満面の笑顔でお礼を言ってきた村人たちは、遠目で見るばかりで近づいてくる様子はない。
「あはは、ごめんね。みんなお兄さんに感謝はしてると思うんだけど、やっぱり人間は怖いみたいで」
「怖い?」
「うん、だって人間はパパやママを連れて行っちゃったから」
それは、戦争で、ということなのだろうか?
乾いた笑みを浮かべるアカネちゃんに、踏み込むことは出来なかった。
「アカネちゃんは怖くないの? 俺のこと」
「うーん、正直なところ少し怖いよ。貴重なご飯をあんなに沢山持ってて、綺麗なお水が出る井戸も作れて。それをいきなり私たちに恵んでくれた。……どうして? お兄さんが何を求めてるのかわからなくて、少し怖い」
「いや、見返りを求めているわけじゃないよ」
「最初はね、人間はみんなそう言うの。そうやって何かをくれて、受け取って、私たちは感謝して。気付いたらパパもママも連れていかれちゃってた」
アカネちゃんは、荒れ果てた土の上を歩く。
「ここ、畑だったんだ。川が止められて、水がなくなって、今ではただの乾いた土になっちゃったけど。……お兄さんが来てくれなかったら私たちは乾くか、飢えて死ぬだけだった。だから凄く感謝してる」
くるりと振り返ったアカネちゃんはそのまま頭を下げた。
「だからお願い、連れていくなら私にして。私は元々他所の村から来てるし、それに可愛いって評判なんだ。今は小さいけど、何年かしたら凄く綺麗になれると思うし、良い子にするって約束するから!」
こんな小さい子が必死に自分を売り込んでくる。
「この村にはもう大人が殆どいなくて大きい子を連れていかれたらどうしようもなくなっちゃうの。だから、私で手を打って。お願いします」
村のことを考えて、未来を考えられるくらいに賢くて、そして優しい子なのだろう。アカネちゃんの頭に手を乗せた。
「じゃあ大きくなってそれでもまだ気が変わってなかったら連れて行くよ」
「それって……」
「実はね、俺も昔は貧乏で空腹に苦しんだこともあるんだ。だから死ぬ間際に、食うに困らない力が欲しいって願った。そしたらあの水とか食料をいくらでも出せる能力が手に入ってたんだ」
「能力?」
「うん。信じてくれなくても良いけど、お腹を空かせてるアカネちゃんたちに出会った時。俺は君たちをお腹いっぱいに食わせる為にこの力を授かったって思ったんだ。使命って言ったら大袈裟かもしれないけど」
「使命……つまり、お兄ちゃんは神様ってこと!?」
「いや、そうではないけど」
「じゃあ、天使様だ! だから見返りも求めず私たちにご飯をくれるってこと!?」
「えー、いや……」
チートスキルで作ったご飯だからそんな気負わなくて良いよって伝えたかっただけなのに、妙な方向に勘違いされてしまった。
でもスキル自体は神様に貰ったものだし、否定もしづらい。