餓死寸前の獣人少女に餌付けをしたら、ヤンデレハーレム村の村長になっていた 作:破滅
お茶を出される。ごわごわとした質感の重い湯呑。土器というほど原始的ではないが、陶器でもない。お手製の湯呑って感じがする。
取って匂いを嗅ぐと、爽やかな草の香りがした。
裏山に生えてるとかでクマザサの葉を、おとうとがよく摘んで持って帰ってきてたけど、それによく似ている。
「懐かしい味ですね」
「ミチルの故郷でも飲まれていたのか?」
日本でお茶と言えばチャノキの葉っぱを煎じたものが殆どで、クマザサ茶はメジャーというわけではなかった。
スーパーに並んでるのを見たことはないし。
ざらざらとした厚みのある湯呑みは、風情がある。
「上等なものではないが、ミチルが気に入ってくれたなら良かった」
同じようにお茶を啜ったツバキさんが、どこかあどけなさの残る笑みを浮かべた。
尻尾がふるふる動いて、藁の上の布を撫でている。
手を回すように、尻尾を腰に絡めてきた。
もふもふふさふさの感触。それ自体は大型犬のそれなのに、綺麗な女性についているからなのか、妙にドキドキさせられる。
「ツバキさん」
「ミチル、私では不足だろうか?」
白い手が、胸板に添えられた。
揺らめく焚火の微かな灯りの中で、開けた着物の間から柔らかそうな谷間が覗いている。
艶かしい吐息、潤んだ瞳。
男女が一つ屋根の下で布団を共にするということが、単に一緒に睡眠を取るという意味ではないと状況が物語る。
ツバキさんは綺麗だ。
水浴びをしてきたのか黒髪はしっとりしていて、風呂も中々入れない状況だったはずなのに不思議と嫌な臭いはしない。
肌は荒れたりせずつやつやしていて、痩せてはいるけど村の人と比べれば肉は付いている。
イチモツのついた男が、情欲を抱かないなんて不可能だ。
「ツバキさんは綺麗だし、正直抱きたいです。でも、こんな村の状況で身体を差し出してきた意味が理解できないほど鈍いつもりもありません」
昔、妹が20ほど歳の離れた彼氏を連れて来たことがあった。
話を聞いてみると、妹が付き合うなら貧乏な我が家に金銭的な支援をするという話らしかった。
俺は、ふざけるなとキレてそのおっさんをぶん殴って別れさせた。
貧しいし喉から手が出るほどお金は欲しかったけど、それでも妹を売り渡すような真似はしたくなかった。
おっさんは被害届を出すなど言って逃げたっきり、家にも妹にも二度と近づくことはなかった。被害届も出されなかった。
当時妹は未成年だったし、援助交際を目論んでたとバレたら向こうも困るだろうからな。
つまり、今のツバキさんを見ていると当時の妹をどうしても思い出してしまう。
ここで欲望に流されてしまえば、あのおっさんと同じ穴の狢になってしまう。
「こんなことしなくたって、俺はこの村が食っていけるようになるまでみんなを食わせ続けます。信用が出来ないって言うなら三年分の穀物を今すぐ出したって良い。だから、自分を安売りするような真似はしないでください」
言って、少しだけ後悔する。
童貞卒業のチャンスを逃してしまった。生まれてこの方女性にモテたことなんてないから、もうチャンスなんて来ないかもしれない。
でも、ここで据え膳を食えば、貧しかった頃の俺に顔向けが出来なくなる。正しい選択をしたはずだ。
「安売りをするな、か。ミチルを今のこの村に留めおくこと以上にこの身体に高く価値がつくことなどないだろうが。そういう話ではないんだろうな?」
ふっ、と息を吐いて可笑しそうに笑った。
「念のため聞くが、別に私に魅力を感じないから抱きたくないってわけではないんだな?」
「え、ええ。そりゃあ、俺も男ですし。ツバキさん、普段は凛々しくて綺麗な感じだけど、ふとした時に見せる一面は可愛かったりするし」
「上手いな。実は女慣れしてるだろ?」
「全然、こういうこと初めてですよ。これでもずっと心臓が口から飛び出しそうなのを堪えてるんです」
「心臓が口から。面白い表現をするな」
楽しそうに笑うツバキさんを見てると、肩の力が抜けていく。
別にエッチなことをしなくたって、こうして話しているだけで十分楽しい。
「お前ほど誠実な男に、村のためなんておためごかしを使うのは不誠実だったな。ミチル、私はお前と番になりたい」
「つ、番……!?」
ぎゅっと手を強い力で握られる。楽しい会話で油断したところに殴り込まれた告白紛いの言葉に、面食らってしまう。
「い、いや、だから、そういうことしなくたってこの村を見捨てたりはしないって」
「お前が固辞しようが、今夜私はお前を抱くぞ!」
「ええっ!?」
半ば強引に服を脱がされて、押し倒される。凄い力だった。身体はかなり軽いはずなのに、ひっくり返せる気がしない。
刀という数kgはありそうな鉄の棒をぶらすことなく人の首に押し当てながら問答ができるほどの実力者なのだ。
「いや、どうして……」
「好きになった」
「ご飯をあげたから……?」
「それだけでここまでするほど軽い女に見えるか?」
「知らないですよ。今日会ったばかりだし」
「言っておくが、私は処女だぞ。だが、ミチルが初めてを捧げるに足る男だとすでに確信している」
「一日で!? それは流石に早とちりじゃない?」
「口ではどれだけ真面目ぶっていても、こっちは私を抱きたそうにしているな?」
腰の上に跨っているツバキさんは股間をぐりぐりと押し付けながらはらりと着物を脱ぎ棄てた。
貧しい村なのだ。当然下着をつけているはずもなく、あっと言う間に半裸になってしまう。
焚火の明かりはツバキさんの身体をシルエット程度にしか見せてくれないけど、細身ながらに出るところはしっかりと出ている身体付きをしている。
ふさふさの尻尾が内腿をなぞるように這った。
食料の代わりに身体を差し出させるなんてことはあってはならないと思うのに、ここまでされたら否が応にも反応してしまう。
っていうか、この場合ってどうなんだ?
大前提、差し出した食料の代わりにツバキさんを抱くのはNGだ。
あれは死の淵で神様から貰った能力。それで食わせる代わりになんて言って身体を要求したら天罰が下ってもおかしくない。
でも、それは一回断った。
なのにツバキさんは何か強引に押し倒してきている。なんでかはわからないけど、番になりたいと告白? までされている。
あれ? じゃあ倫理的に問題ない?
いやでもツバキさんとは今日会ったばかりだし、こういう行為はもっと順序を踏んでから……。デートしたり、一緒に食事をしたり、家に遊びに行ったりして。
後半二つは既にしてるな。村まで案内してもらったことをデートというなら、全部達成してると言って良いかもしれない。
じゃあ、シても問題ない? 童貞卒業?
いや、待て。やっぱりこういう行為は神聖な行いなわけで、好き同士でしないと。でもツバキさんは好きって言ってくれたよな。
じゃあ逆に俺はどうだ? ツバキさんのこと、どう思ってる?
村の人のことを大切にしていて、情にも篤くて、堅物そうなところはあるけど実はそそっかしかったり抜けているところがあって、そんなところは可愛いと思ったりもしていて……。
あれ、思ったより好きだぞ、俺。ツバキさんのこと。全然、番になってこのままこの村に永住したって良い気持ちになってる。
じゃあ、このまま流されても問題ない?
いや、それは良くないな。女性のツバキさんがちゃんと言ってくれたのに、男の俺だけ流されるままなんてのは絶対に良くない。
「ツバキさん!」
「ん?」
俺の両手首を押さえつけ、首筋の匂いを嗅いでいたツバキさんが中断して言葉を待ってくれる。
「俺も好きです。実はずっと可愛いなって思ってて。だからその、番になりたいって話……」
最後まで言葉を待たずに、唇を重ねてくる。
こつんと歯が当たる。その勢い余った感じが本当に慣れてないんだなと思いつつ獣じみた滾りを感じ取れて凄く良い。
ツバキさんは押さえていた手を離してごろりと横に転がった。
「今度はお前の番だ」
覆いかぶさって、キスをしろということだろうか?
掴んでみるとツバキさんの手首はあんな力が秘められてるとは思えないほど細かった。唇を近づけて重ねる。震えているのはどちらのなのか。
重ねると口が開いて、自然と舌が絡み合っていく。
心臓がうるさい。身体が熱い。
砂糖なんて舐めてないはずなのになぜか甘い舌を夢中で貪る。ぷはっと息を継ぐように話した。
「これで、両想いだな」