餓死寸前の獣人少女に餌付けをしたら、ヤンデレハーレム村の村長になっていた   作:破滅

9 / 9
第9話 ホットドッグ2

 50本のソーセージが並んだ鉄板に徐々に熱が行き渡り始め重々と音が鳴る。アカネちゃんはトングを使って鼻歌交じりにひっくり返していた。

 

 キャベツを千切りにしていく。旬になると一玉100円で売られてしかも結構お腹に溜まるので家計の助けとして重宝していたから、千切りには自信がある。

 

 千切りにしたらフライパンに油を引いて軽く火を通し、カレーパウダーで味をつけていく。

 

 本場だとザワークラウトというキャベツの酢漬けを使うらしいけど、このカレーパウダーはどこルーツなのだろうか?

 そこはかとなく昭和の日本を感じるチョイスだが。

 

「朝食を作ってるのか?」

 

 フライパンの火を止めると、覗き込むように声をかけて来た。

 

 紫色の和服と黄色い帯、腰には刀を差しているツバキさんだった。ボロの着流しを着ている時は浪人感があったけど、着物が綺麗だと両家のお嬢様に見える。

 白いひもで括り上げられたポニーテールが健康的で凄く良い。

 

「何を作ってるんだ?」

 

「ホットドッグっていう、パンに野菜と腸詰を挟んだ料理を」

 

「ほぅ。……まさか犬を食べるのか?」

 

 アカネちゃんと全く同じことを言うな。

 

 って言うか、この世界でもドッグ=犬なんだ。まあ、日本語が普通に通じてる時点で今更感はあるけど。

 

「豚肉ですよ」

 

「豚なのにドッグ。何か由来でもあるのか?」

 

「なんか腸詰が座った犬みたいに見えるからって感じだったと思います」

 

「……名付けた人は想像力が豊かだったんだろうな」

 

 鉄板に並んでるソーセージを見たツバキさんが呟いた。

 

「アカネ、手伝ってるのか?」

 

「うん。ってツバキお姉ちゃん、服綺麗になってる! お兄さんから貰ったの?」

 

「ああ。良いだろう?」

 

「えー、羨ましい。お兄さん、私もお洋服欲しいな?」

 

 くるりと翻ったアカネちゃんが上目遣いでおねだりしてくる。なんか悪い大人になりそうだ。

 

「後で村の人全員に配る予定ですよ」

 

「それは……ありがたいけど、ちょっと複雑かも」

 

 アカネちゃんは少し不満そうな顔をした。

 

「どういうこと?」

 

「言ったら性格悪い感じになるから教えない」

 

 そっぽを向いてソーセージをトングでひっくり返す作業に戻った。この年頃の女の子が考えることはよくわからないな。

 

「ミチル、私にも手伝えることあるか?」

 

「このパンに縦の切り込みを入れてください」

 

「縦に……こうか?」

 

 包丁を振り下ろしてスパッと真っ二つに切り裂いた。ふんっ、と鼻息を鳴らして得意げに胸を張っている。

 

「あー、いや、こんな感じで途中まででお願いします。こうやってキャベツを挟んであとで腸詰も乗せるので」

 

「な、なるほど。すまない」

 

 シュンと三角の耳が下がった。

 

「まあこれでも食べれるんで」

 

「すまない。こうで良いのか?」

 

 今度は半分まで切り込みを入れる。少し浅い。

 

「もう少しだけ深く」

 

「こうか?」

 

「そうそう。ばっちりです」

 

「なるほど、了解した」

 

 以降、ツバキさんは均一に切れ込みを入れていく。まるで工場の機械を使ったみたいに正確な太刀筋。

 

 受け取ったコッペパンに切れ込みにマヨネーズを塗り、キャベツを挟んでいく。

 

「なんだか、こうして共同で作業していると夫婦みたいだな」

 

 ぶちゅっ、とマヨネーズが多めに出てしまう。

 

「焼いた腸詰はこれに挟めば良いんですよね?」

 

 カレーキャベツを挟んだパンをアカネちゃんが奪うように取ってソーセージを上に乗っけた。

 

「なっ……!?」

 

「一晩お楽しみしただけでもうお嫁さん気取りですか? 重いよ、ツバキ姉ちゃん」

 

「重っ……っていうかなんで知って」

 

「あっ、本当にシテたんだ」

 

「謀ったな……!」

 

「ツバキ姉ちゃんが馬鹿正直すぎるだけだよ」

 

「ぐぬぬ」

 

 ニマニマと揶揄うマセガキアカネちゃんに悔しそうに歯噛みをするツバキさん。仲良いな、この二人。姉妹みたいだ。

 

「なあ、ミチル。その、今のは重かっただろうか?」

 

「えっ、あっ、いや……」

 

「責任を取れなんて言える立場でないことは理解っているが、私たちは褥を共にした仲なわけで」

 

 泣き出しそうな顔で、こちらの目を見てくる。

 

 ここで否定したら「一度ヤッたくらいで彼女面すんなよ」って言うタイプのクズ男と同じになってしまうじゃないか。

 

「言ったでしょ。ツバキさん含めて、この村の人たち全員俺が食わせるって」

 

「でもミチルは、村が立ち直ったら出て行くのだろう?」

 

 この状態の村が食っていけるようになるには何年か、或いは何十年か掛かるかもしれない。それだけ居れば愛着も沸くだろうし、そこではいさようならという自分を想像が出来ない。

 

 けど、今この場でツバキさんを安心させる為だけに一生愛しますなんて誓うのも軽薄でしかないとも思う。

 

「未来のことはまだ理解らない。けど、その時になってもし俺と離れたくなかったらついて来てよ」

 

「……良いのか?」

 

「外は何かと危なそうだし。強い剣士が一緒なら心強いからね」

 

「なんだ。私はただの護衛か」

 

 急に不機嫌そうな声になった。

 

「うーん、これはお兄さんが悪いよ。途中まで良かったのに、最後ので一気に刀目的みたいになっちゃったから」

 

「そんな身体目的みたいな語感で」

 

「そっちの方が良かった」

 

「!?」

 

 刀目的より身体目的が良かった!?

 頬を膨らましてそっぽを向くツバキさん。年頃とか関係なく、女心が難しい。

 

 ソーセージを挟んだホットドッグを紙に包んで、それからケチャップとマスタードソースをかけていく。

 小さい子供には辛いかな?

 

 なのでケチャップのみのものも作っていく。

 

「で、出来たよ~」

 

「話の続きは今夜に持ち越しだな?」

 

 肩にポンと手を置いて、ツバキさんは小声で怖いことを言い残してから明るい笑顔に切り替わる。

 

「みんな列に並んでくれ。ミチルが朝食を作ってくれたぞ」

 

 手を叩いて、いつもの調子で村の人たちを並ばせていく。

 こうやってみると、頼りになる村のお姉さんって感じなんだけどな。

 

「お兄さん、こうやって紙に包んでこの赤と黄色のソースをかけて行けば良いんですよね?」

 

 アカネちゃんは仕上げ作業を手伝ってくれていた。

 

 マセてるけど、気が利く。ツバキさんがしっかりとするならこっちはちゃっかりって感じで頼りになる。

 

「僕のやつ黄色いのが掛かってない。ずるい!」

 

「これ辛いよ? それでも良い?」

 

「うん、食べれる!」

 

 ケチャップのみに不満を持った男の子にマスタードソースをかけてやる。クンクンと臭いを嗅ぐとツーンとしたのか涙目で目を瞑ってた。

 だから言ったのに……。

 

「ケチャップのみと変えようか?」

 

「うん、ありがとう」

 

 なんてこともありながら、アカネちゃんとツバキさんの手伝いも相まってあっと言う間にホットドッグが全員に行き渡る。

 

 付け合わせに、コンソメキューブを溶かしただけのスープも用意した。

 

 玉ねぎを刻んで入れるか迷ったけど、犬や猫には毒みたいな話を聞いたことがあった。獣人にとってもそうなのかは理解らないけど、ツバキさんに聞いても玉ねぎという食べ物を知らないと言われたので大事を取って入れないことにした。

 

 特にまだみんな飢えが残っていて体力も万全じゃないだろうし。

 

「ん~~、美味しいっ!」

 

 小さな子供の獣人が大きな口でホットドッグにかぶりついた。口元にケチャップをつけながら幸せそうに笑みを浮かべている。

 

「お肉だ! お肉の味がする!」

「この中に入ってる葉っぱ、嗅ぐだけでお腹が空く匂いがする!」

 

 みんなガツガツと食べていた。ホットドッグは好評みたいだ。

 

 俺もかぶりつく。

 

 パンパンに膨らんだソーセージの皮をぷつりと噛み千切るとジュワッと熱い肉汁と一緒にガツンと塩気があふれ出して来る。それが口の中でパンとキャベツに絡み合って、ちょうどいい塩梅に落ち着く。

 

 凄く美味しい。

 

「美味い。こんなに美味いものを食べたのは初めてだ!」

 

 先ほどまでの不機嫌はどこへやら、口元にケチャップとマスタードをつけたツバキさんがぶんぶんと尻尾を振って報告してくる。

 布巾を創り出して、ツバキさんの口元を拭った。

 

「す、すまない、しかし美味いな。これ」

 

「お兄さんお兄さん、私もお口にソースが付いちゃった」

 

 アカネちゃんがちょんちょんと袖を引くと、口元と鼻先にケチャップが付いていた。

 

「貸せ、ミチル。私が拭いてやろう」

 

「むーっ、お兄さんに拭いてもらいたかったのに!」

 

「見てたぞ。わざとソースをつけてただろ」

 

 ツバキさんがアカネちゃんの口をぐゎしぐゎしと拭いている。なかよしだ。

 

 そうこうしている間に、ホットドッグをあっと言う間に間食してしまう。スープも飲み干してしまった。けどまだ物足りない。

 

「おかわりはありますか?」

 

 子供たちも近づいて来て物欲しそうに見てくる。

 

 そうだな。何か作るか。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

転生したら怪異に愛されたので、現代ダンジョンに解き放つ(作者:ダンカイ)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

転生したことで一度死を経験した安屋敷カイは、死人扱いされ生きていながら怪異から同類扱いされるようになった。▼そんな彼が転生したのは現代ダンジョン世界。▼自身の力を使えば楽に生きていけると考えたカイは、怪異をダンジョンに解き放つ。▼結果ダンジョンの魔物たち怪異から逃げ惑い、人々は見えない暗殺者に恐怖する。▼それ以降もカイは怪異を用いてダンジョンを恐ろしい方法で…


総合評価:2824/評価:8.5/連載:4話/更新日時:2026年10月11日(日) 12:52 小説情報

男女比1:1000の世界に生きる希少男子が、専属メイドに出会って人生を謳歌する話(作者:木刀)(オリジナル:現代/恋愛)

2025年のバイオテロで男児が生まれなくなっておよそ100年。じきに男女比も1:1000になろうとしていた。女性は社会貢献度で、男性は繁殖能力の高さで評価される時代で生きる圭人少年の元に、一人の専属メイドが現れる。▼専属メイドは、平時は男性を警護すると共に生活のサポートを行い、精子提供時には苦痛に苛まされる男性を介助する役割を担っていた。▼しかし、先祖返りし…


総合評価:3018/評価:8.81/連載:9話/更新日時:2026年10月16日(金) 01:05 小説情報

これ僕の! ボクのぉ!!(作者:バリ茶)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

おねショタ漫画に出てくる猿みてぇなガキになって長身銀髪デカパイメイドに無様腰ヘコしたかった


総合評価:6403/評価:8.68/短編:1話/更新日時:2026年10月04日(日) 19:05 小説情報

処女の女冒険者に気をつけろ(作者:三つ眼の荒木)(オリジナル:ファンタジー/恋愛)

冒険者は命がけの仕事だ。▼だからパーティを組めば、いつの間にか誰かと誰かがくっつく。▼フリーでやっていて弱い女には、体目当ての依頼しか回ってこない。▼つまり、フリーで長く続いていて、下世話な噂が一つも聞こえてこない女冒険者。▼そういう相手は、体を売らずに済むほど強く、それでいて誰ともパーティを組めなかった人間ということになる。▼強くて訳アリの女。▼「処女の女…


総合評価:3712/評価:7.13/連載:12話/更新日時:2026年09月29日(火) 20:00 小説情報

ヤンデレに監禁されるわけwww(作者:むにゃ枕)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

ヤンデレから逃げようと思ってる。▼ヤンデレのみんなには悪いけど抜け駆けで▼ヤンデレは逃走とかされたことないから、びっくりするかもしれないけど、もう逃げたい気持ちを我慢できないから▼


総合評価:3911/評価:8.09/連載:15話/更新日時:2026年09月28日(月) 21:16 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>