二人は暗い道を歩いていた。
男が先を歩き、その手は目に涙を溜めて俯いている従者と繋がっている。
どこへ続くとも知れない道に、二人の足音だけが響いていた。
何かを思い出したようにふと男が立ち止まると、突如男の脳内にどこかで見た眩い光景が溢れ出した。
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都内のある高校の庭。
四本の腕を持つ男が校舎の縁側に腰を下ろしていた。
「せんせーい! 聞いてよ、最近やっと領域の要件をイジれるようになったんだ! 久しぶりに手合わせしてよ〜」
サングラスをかけた白髪の青年がこちらに近づきながら大きな声を上げる。
隣にいた長い黒髪の青年が彼を窘めた。
「悟、先生も歳なんだ。あまり困らせるなよ。」
四本腕の男はクックッと笑い
「悪童共が随分偉くなったな。放課後庭に来い。二人まとめて遊んでやろう」
「珍しくやる気ですね。なら、この前捕まえた面白い呪霊をお披露目させて頂こうかな」
要件を伝えるだけ伝え、二人の青年は満足そうな顔で通り過ぎていく。
男はその背中が見えなくなるまで、縁側から見送っていた。
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幾度も季節が巡った。
2人の悪童は高専を卒業し、それぞれ教鞭を取り生徒を率いる立場になった。
男も前線に出ることは少なくなり、高専の長として後進を眺める時間の方が増えている。
ある春の日。
三人の新入生が男の前に立っている。
桃色の髪をした青年が男の異形の肉体を珍しそうに眺めた。
「先生ってさ、いつからそんな感じなの?」
同窓の黒髪の青年と茶髪の少女が、諫めるように彼の頭を叩く。
「バカ。お前なんて事聞くんだ」
「アンタ怖いものとかないの?」
子供らのやり取りを横目に、男は難しいなぞかけを考えるように自身の四本の腕を見下ろす。
――双子として産まれ。
――片割れを喰い。
――世界から呪われ。
――世界を呪った。
屍の積み重なる平安の世。
己を殺すために集う術師たち。
千年の時を経た受肉。
人ならざるものとして振るった力。
そして、二心同体で過ごした小僧。
――「お前たちは! どうして普通に生きられない!」
――「絶対的な強者。それ故の孤独。あなたに愛を教えるのは」
――「もう一度、誰かの為に生きてみようと思う」
景色が過ぎていく。
最後に残ったのは、小僧だった。
崩れゆく異形を掬い上げ、その姿を見下ろしている。
呪いの王が今際の際で耳にした言葉は、呪いとは正反対のものだった。
――――「お前は俺だ」
静寂。
高専の庭で、三人の新入生がこちらを見つめて立っている。
男はしばらく桃色の髪の青年を見つめていた。
やがて口元を緩める。
「クックック……いつからだろうな……」
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黒い道。
先ほどまで観た昔の夢のような光景が徐々に記憶から消え去っていくのを感じながら男は立ち竦んでいた。
俯いていた従者が顔を上げる。
「宿儺様……?」
一瞬の沈黙の後
「いや……なんでもない」
男は前を向いた。
「この俺にも…存在したかもしれない記憶だ」
「?」
再び歩き出す。
不思議そうな顔をした従者の手を、先ほどより少し強く握る。
道の先に、全身に継ぎ接ぎの痕を持つあの呪霊が見えた。
二次創作も小説執筆も初めての為、作法や形式を何一つ理解しておりません。
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