プロローグ「遠くからでも」
三門市。
それは、ある日を境に世界で最も危険な街の一つになった。
ある日突然、異世界への門――「門」が開いた。
そこから現れたのは、人間には理解できない怪物。
人々はそれを――
近界民。
そして彼らが使役する兵器を――
トリオン兵と呼んだ。
当時、十歳だった少年は、その日を今でも覚えている。
⸻
「尚輝!」
誰かが叫んでいる。
街中に警報が鳴り響く。
遠くから爆発音。
建物が揺れる。
人々が走っている。
泣いている人。
叫んでいる人。
誰かを探している人。
その中を、尚輝は母親に手を引かれて走っていた。
「お母さん……!」
「大丈夫。もう少しだから」
「でも……!」
「大丈夫だから」
母親は何度もそう言った。
けれど。
その声が震えていることに、幼い尚輝は気づいていた。
避難所へ向かう途中。
突然。
目の前の道路が吹き飛んだ。
轟音。
粉塵。
人々の悲鳴。
そして。
瓦礫の向こうから、巨大なトリオン兵が姿を現した。
「……っ」
足が止まった。
怖い。
逃げなければいけない。
頭では分かっている。
なのに。
身体が動かなかった。
「尚輝!」
母親が抱き寄せる。
トリオン兵が近づいてくる。
一歩。
また一歩。
地面が揺れる。
――怖い。
何もできない。
ただ母親にしがみつくことしかできない。
その時だった。
「伏せろ!」
声が響いた。
次の瞬間。
――パンッ!
銃声。
トリオン兵の身体が弾ける。
さらに。
――パンッ!
――パンッ!
遠くから次々と弾丸が飛んでくる。
トリオン兵がこちらへ近づくより先に、攻撃が集中する。
そして最後の一発。
巨大なトリオン兵が崩れ落ちた。
尚輝は呆然とその光景を見ていた。
少し離れた場所。
一人のボーダー隊員が銃型トリガーを構えていた。
隊員は尚輝たちを確認すると、短く頷いた。
「もう大丈夫だ」
その人は、別の場所へ走っていった。
尚輝はその背中を見つめた。
近づいてきて戦うわけでもない。
目の前に立つわけでもない。
ただ。
遠くから撃って、守った。
その姿が、幼い尚輝の目に焼き付いた。
「……お母さん」
「どうしたの?」
「俺も……」
言葉が出てこない。
拳を握る。
「俺も、あんなふうになれるかな」
母親は一瞬だけ黙って。
そして優しく笑った。
「なれるよ」
「本当?」
「うん」
その言葉を。
尚輝はずっと覚えていた。
⸻
八年後。
十七歳。
影海尚輝は、ボーダー本部の前に立っていた。
手には隊員証。
腰にはトリガーホルダー。
もう、あの日の少年ではない。
「……遠くからでも」
小さく呟く。
「守れる」
その言葉を胸に。
尚輝は本部の中へ入っていった。
ここから。
影海尚輝の物語が始まる。
そして。
まだ本人も知らない。
その先に――
那須玲という、一人の少女との出会いが待っていることを。
こんにちはこんばんはここまで読んでいただきありがとうございます。
ワールドトリガーで那須さんが推しなのでAIに力借りて描きました
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