おまわりさん、能力者です   作:pemotaro

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第14話 唸れ上腕筋!最高のマッスルトレーニング!(飛行おじさん4)

前回の反省を踏まえて、おじさんは一つの真理に到達していた。

「屋外で飛ぶのは、社会的リスクが高すぎる」

 

おじさんは自室でいつものようにトレーニングをしながら考えていた。

しかし飛びたい。どうしても飛びたいのだ。

 

外がダメなら中。

しかし、自室で飛んだところで、すぐに天井にぶつかってしまう。

そこで発想を逆転させてみることにした。

 

「そうか。自室でどれだけ精密に飛べるかを極めればいい!」

自室であれば通報されるリスクもゼロである。

完璧な名案だった。

 

床からわずか三十センチの低空ホバリング。

 

おじさんは毎晩、特訓を重ねた。

これまでは力任せに腕を振り回していたが、今回は違う。

 

目標は「ふわり…ふわり…」

 

鳥ではなくて風船のように浮き上がることだ。

細かく、かつ精密に腕を振る技術。

最初は高さ一メートル付近を上下して、なかなか制御ができなかったが、毎日の特訓の成果により、高度は安定してきていた。

 

「うなれ俺の上腕筋!最高の笑顔で…テイクオフ!」

 

おじさんは鏡に映る自分の顔を意識する。

笑顔を崩さないまま、おじさんの身体が床から三十センチの高さで見事に静止した。

 

(完璧だ!俺は今、重力を支配している!)

 

ゆっくりと一定の高度で浮き続ける行為は、勢いよく飛ぶよりも遥かに体幹と筋肉を消耗する。

限界は普段より遥かに早く近づいてくる。全身の筋肉が悲鳴を上げ、笑顔の口元が震え出した。

 

「ぶはぁぁぁぁぁっ!!!」

 

息を吐き出すとトレーニングマットへ身体が落ちる。

「し、死ぬかと思った…」

 

全身に今までにない負荷を感じながら、少しずつ上達していく充実感。

 

「でも、やっぱり大空を飛びたいなぁ…」

 

 

翌日。

おじさんはいつものスポーツジムへと足を運んでいた。

 

おじさんがプロテインをシェイクしていると、お馴染みの筋肉仲間が目を輝かせて近づいてきた。

「おい田中!何だかいつもより大胸筋と背筋がキマッてるな!一段とデカくなってないか?一体どんな追い込み方をしたんだ!」

仲間からの称賛が気持ちいい。

 

「いやぁ…実はね。最近、空を飛ぶポーズの研究をしていてね」

「空を飛ぶ!?」

仲間は目を丸くした。おじさんは慌てて言葉を濁す。

「いや、まぁ。あくまで例え話なんだけどね。ただポーズを取るんじゃなくて、静止した状態での全身の動かし方が大事なんだよ」

「なるほど!!」

「さすがベテランビルダー!新しい追い込み法の視点が違うぜ!インナーマッスルとアウターマッスルを極限まで連動させる静的アプローチか。勉強になるなぁ!」

「まあ…俺もまだまだ研究中だけどね!」

 

「よし、明日は背中の日だ!」

おじさんは笑いながらプロテインを口にした。

ジムの窓の向こうには、どこまでも青い空が広がっている。

(いつか、思いきり飛べる場所を見つけよう)

おじさんは心の中でそう誓い、今日も笑顔でトレーニングするのであった。

 

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