ちょっと小さめの少女には、人に言えない秘密があった。
裸になると、とんでもない怪力を発揮できるのだ。
ただし、人前で裸になんてなれないし、力加減も難しい。
ラッキー。今日は早く帰れたなぁ!
そんなことを考えながら、少女はいつもの道を通っていた。
残暑も厳しい季節、平日の昼間で、人通りが増えるにはまだ少し早い時間帯だ。
ふと、道沿いにある古い公園が目に入る。
そういえばこの公園って古いし、監視カメラも少なさそう!検証に使えないかな?
最近、力加減については少しだけコツが掴めてきた気がする。とはいえ、家の中で試すだけでは限界を感じるし、できれば人目につかない場所を探したい。
ちょっとした思いつきで、公園に入ってみることにした。
人通りも少なそうだし、結構広い。ここならちょうどいいかもしれない。
そう思いながら公園内を歩いていると、奥の方から小さな泣き声が聞こえてきた。
声の方へ向かってみると、古い鉄のブランコが倒れていた。
その下には小さな男の子が挟まれて、泣いている。
「大丈夫!?」
急いで駆け寄り、ブランコを持ち上げようとするが、びくともしない。
彼女自身が非力なのも確かだが、鉄の塊は余りにも重い。大人が何人もいないと動かせそうにない。
彼女はスマホを取り出しかける。
「119?110?いや、これは…」
救助を呼ぶのが一番確実だし、間違ってはいない。ただ、少し時間がかかるだけだ。
その間も、男の子は泣き続けている。
彼女は倒れた遊具を見る。
「私なら、動かせる…」
少し迷って、周囲を何度も見渡した。
子供の他に、人影は全く無いようだ。
「よし!すぐだから!」
少し離れたところに公園のトイレが見える。
彼女はそこへ駆け込むと、手早く服を全て脱いだ。
そして公園の監視カメラの位置を確認しながら、植え込みの陰を縫うように走っていく。
「すぐ行くから待っててね!」
慎重に、慎重に…なんとか倒れた遊具の近くまで戻ってきたが、
「おじさん、ここ!たかしくん!」
「おい、大丈夫か?」
女の子の焦った声と野太い声が聞こえてきた。そっと物陰から伺ってみると、公園の入り口側から体格のいいおじさんと小さな女の子が、男の子の方へ走り寄っていくのが見えた。
「よーし、ちょっと待ってろよ!」
おじさんは圧倒的な筋肉を誇示するようにブランコを持ち上げて、横にずらすと、男の子を隙間から助け出す。
「もう出られるぞ。怪我はないか?」
「うわあぁぁん!」
「おじさん、すごーい」
「病院に行った方がいいかな。ボク、家はどっちだい?」
そうして軽々と男の子を抱きかかえると、公園を去っていく。
裸の少女は植え込みの陰から彼らのそんな様子を見ていた。
「…もう、私が出ていく必要ないよね」
自分の言葉にそっとうなずく。
「助かったんだからいいか!」
あの子は助かったし、力も使わずに済んだ。むしろラッキーと考えよう。
そう思ってトイレの方に戻ろうとする。しかし、トイレ側から人影が…。
「やば!」
あわてて植え込みの陰に戻る。
さっきまで誰もいなかったのになんで?
息を凝らしてトイレの方をうかがっていると、背後から声が聞こえる。
「お姉ちゃん、何してるの?」
「っ!?」
びっくりして振り返ると、先ほどおじさんを連れてきた女の子が、いつの間にか後ろにしゃがみこんでいた。
「かくれんぼ?」
「…違います」
「お姉ちゃん、なんでそんな恰好してるの?」
「…趣味です」
「何してるの?」
「虫を見ています」
「どんな虫?」
「珍しい虫です」
「どこ?」
「…いなくなりました」
女の子は不思議そうに彼女を眺めている。
「なんでお姉ちゃん泣きそうなの?」
「……聞かないでください」
女の子は「ふーん」と言うと立ち上がって、そのままどこかへ走り去っていった。
その後、人がいなくなったのを見計らい、裸の少女はトイレに駆け込んで服を着直した。そして、逃げるように帰宅するのであった。
数日後。
「物騒な世の中になったわね」
そう言いながら母親が回覧板を彼女に渡してきた。そこには新しい注意書きが貼られていた。
『不審者情報:公園で、子供が不審な女性を目撃したようです。近隣の皆さん気をつけてください!!』
「こわいわねぇ。あなたも気をつけなさいよ?」
「…うん」
「もっと、気をつける」