おまわりさん、能力者です   作:pemotaro

2 / 6
第2話 道はあるのに八方塞がり(怪力少女2)

あの日から数日が経った。

今日は家族が夜まで出かけている。多少の物音を立てても気にする必要もない。

 

色々と能力を測ってみよう!

 

彼女は自室のドアに鍵をかけ、カーテンを下ろした。

 

手には、いつも開けられない紅茶のペットボトル。

「んんんーっ!やっぱり開かない!」

 

彼女は不敵に笑い、服を脱ぎ捨てる。

「しかし、今日こそはお前をたおーす」

 

大きく息を吸い込んで止め、ボトルのキャップに手をかけた。

「せーの!」

 

力を込めた瞬間──

グシャァッ!

蓋が開くよりも早く、ペットボトル自体を握りつぶしてしまった。破裂音と共に、紅茶が身体と部屋中に勢いよくブチ撒けられる。

 

手に残るのは、無惨に変形したプラスチックの塊。ベタベタになった室内で、彼女は濡れたまま呆然と立ち尽くすしかなかった。

 

 

しばらくすると、彼女はタオルで紅茶を一通り拭き取り、懲りずに次の検証を始めることにした。

 

荷物を持ち運ぶくらいなら、いけるでしょ。

 

そう思って段ボール箱に雑誌をあるだけ詰め込む。

いつもなら数冊ずつ運ぶところだが、まとめて入れてしまっても大丈夫だろう。

「せーのっ!」

 

しかし悲劇は再び起こる。

「グシャッ!」

 

今度は抱き上げた段ボールを潰してしまった。

(えっ!?)

 

焦って箱の縁を持ち直そうとするが、そのまま指が段ボールを突き破ってしまう。

結果、床には破れた段ボール箱と雑誌が散乱した。

彼女はまたも呆然と立ち尽くすしかなかった。

 

 

しばらくしてから、我に返った彼女は雑誌をまとめ直して部屋の隅に片付けた。そして、それでも懲りずに、次の検証を開始した。

そうして、彼女に最大にして最後の試練が訪れた。

 

丈夫なものなら大丈夫だよね!

 

以前から考えていた部屋の模様替えを行うことにする。1階にある洋服ダンスを、2階の自室へ運ぶのだ。

1階へ降り、玄関の鍵をしっかりと閉める。念のため窓のカーテンも閉めた。

 

実際に持ち上げてみると、タンスを潰してしまうことはなさそうだ。

何度か立ち止まって休憩しながらも、とりあえず階段下に持ってきた。

 

前に検証したときは、30秒くらい息を止めていられた。

これだけあれば階段くらい昇れるよね!

 

(昇れる!軽い!)

一段。

(これなら余裕じゃん!)

二段。三段。

(…あれ?)

四段。思ったより、息が苦しい。

 

タイムリミットまでにはまだ時間があるはずだった。

(あと…半分……っ!)

だが、全身が激しく震え、息が苦しい。

(なんで?なんで!?)

 

よく考えれば当然のことであった。スマホのタイマーを見ながら30秒間呼吸を我慢できたとしても、力をこめ続けながら同じだけ息を我慢できるかは別である。

しかし、酸欠でパニックに陥っている彼女は気づかない。もし気づいたとしても、今さら後の祭りであった。

 

そして限界がやってくる。

「ぷはっ!!」

息を大きく吐き出した瞬間、タンスが一気に重たくなる。

 

「っ!?」

それでもなんとかバランスを保ち、階段の途中で踏みとどまることができた。

しかし、もうタンスの重さを支え続けることは不可能だった。

 

動けない。

少しでも手を離せばバランスが崩れて潰される。

(力を使わないと、重くて動けない…!)

変に動けば、タンスごと階段を転げ落ちる。

「はぁー…はぁぁー…」

必死に耐えるが、息を止めて無理をしたせいで呼吸は完全に乱れている。

 

今から、もう一回息を止めるなんて絶対無理っ!

大声で近所の人に助けを呼びたい!

でも、きちんと戸締まりをしてしまったし、そもそも今の自分の格好は、他人には絶対に見せられない!

 

「…っ!」

最後の力を振り絞って息を止め、力を込めてタンスを階段の壁へと立てかける。

 

ギシギシと軋んでいるタンスの下から這い出て、そのまま階段の踊り場にへたり込んだ。

「はぁ…はぁ…はぁ……っ!」

しばらくの間、酸欠で指一本動かすことができなかった。

 

「これ、どうしよう…」

彼女の目の前には、絶妙な角度で巨大なタンスが立てかけられている。

階段を完全に塞いでいた。

 

「にゃー」

階段の下からは、猫がこちらを見上げている。

 

「超能力なんて、ない方がよっぽど平和に暮らせる!!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。