破面ヒーロー『アランカル』   作:揚げパンcat

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個性把握テスト②

第一種目 50m走

 

『3秒04!』

 

(……速いな、飯田。見たところ個性は「エンジン」みたいなものか?)

 

 どうやら出席番号順にテストを受けるようだ。早速、相澤先生のらしさ(合理性)が出てる。

 俺の出席番号は16番*1だから、走るのは……

 

「あ、顔怖い人!」

「……そういう君は、そもそも顔が見えないな」

「うん、私の個性"透明化"なの!」

 

 透明化。服は浮いて見えるが、透明化しないのかできないのか……もし出来るのなら、隠密で大きな力を発揮できる個性だ。二番隊*2に入るなら、活躍は必至だろうな。

 

「私、葉隠透!よろしくね!えっと……」

「魄面リオ。よろしく、葉隠さん」

「よろしく、魄面くん!」

 

 ……魄面くん、か。

 ヤバい、前世含めて他人と関わりがあんまりなかったせいで年頃の女子に免疫が無い……!

 

「……顔赤くない?」

「いや、大丈夫。熱じゃないよ……」

「ふーん……照れてるんだ?」

「やめなさいそういうの。順番次だよ」

「ちぇっ、面白そうだったのに」

 

 面白そうはひやひやするぞ……!葉隠さんみたいな女子の「面白そう」は陰の者にとって致命傷になり得るんだ……!

 

『位置ニ着イテ……ヨーイ、ドン!』

 

 測定はロボットがするらしい。広大な敷地といい、入試のバカでかい街だったり、このロボットだったり……どんな金してんだ雄英は。

 

『6秒11!』

『6秒70!』

 

 ……速いな?

 

「速くない?」

「鍛えてますから!」

「……そりゃ、いいヒーローになれそうだ」

 

 

第二種目 握力

 

「両腕平均208キロ、か。この身体とはいえ、ちゃんと鋼皮(イエロ)ってついてるのか……?」

「……32!負けたー!」

 

 

第三種目 立ち幅跳び

 

「208cm」

「180ぴったし……なんでそんなに飛ぶの……!?」

「身体をバネみたく力貯めて放出するんだよ」

 

 

第四種目 反復横跳び

 

「うおおおおお!……何回!?」

「39回」

「くっそ負けた!」

「そりゃまあ素体が違うし」

 

 

第五種目 ボール投げ

 

「ふんっ!」

「……52.7m。次魄面。お前はデモンストレーションで一回やってるからあと一回だけだ」

「はい」

 

 さっき撃った虚弾(バラ)は、一応手のひらの皮脂とか産毛とか使って撃ったから威力は弱めだった……そもそも虚閃(セロ)より弱いけど。

 

「……普通に投げるか」

「……60.5m」

 

 ……で。

 ずっと気にかけてはいるけど、ここまで凡庸な記録しか出せていない緑谷くん。オールマイトから個性を受け継いだ、くらいの知識はあるけど……本当に真実なのか、この結果を見て正直疑っている。

 

「……46m」

「な……今確かに使おうって……」

「個性を消した」

 

 ……!?

 

「つくづくあの入試は……合理性に欠くよ。お前のようなヤツでも入学できてしまう」

「消した……あのゴーグル、そうか!抹消ヒーロー"イレイザーヘッド"!!」

 

 なるほど、個性を消す個性の持ち主……!!危険な個性の持ち主が暴れた場合の鎮圧にも、敵退治にも向いてる強力な個性……!

 

「見たとこ、個性の制御が出来ないんだろう?ま(・)た(・)行動不能になって、誰かに助けてもらうつもりだったか?」

「っそ、そんなつもりじゃ」

「お前がどんなつもりでも、他者がそうせざるを得ないんだよ。……昔、ある暑苦しいヒーローが……大災害から1人で千人以上を救い出すという伝説を作った」

 

 同じ蛮勇でもお前は1人を助けて木偶の坊になるだけ……お前はヒーローになれないよ。

 

 確かに、一理ある。いや何理もある。

 緑谷くんの個性が制御できないというのなら、おそらく入試を突破したのは救助ポイントのはず。そしてそれはおそらく0ポイント相手だ。……1人を助けて行動不能。それはヒーローとして危険だし、命そのものが粗末に扱われすぎてる。

 

(……それを他人のために行えるのは、間違いなくヒーローだけどな)

 

「個性は戻した。ボール投げは2回、早く投げろ」

 

 そもそも緑谷くんは元無個性。個性に慣れるのではなく使うことに意識を割きすぎてる。その訓練を積むのに、ここほど最適な場所があるはずがない。なんとしても残らなければいけないが……どうする?

 

「……」

 

 ……ん?

 

「力の調整なんて僕はまだできない……一朝一夕で身につくものじゃないってオールマイトも言ってた……この土壇場でできる可能性に賭けたとしても、その可能性は限りなく低い……むしろ狂って全身お陀仏……なら今の僕ができるのは……」

 

 ……ん???何あれ。何?え、何ブツブツ呟いてんの??

 ……いや待て。緑谷くんってもしやデータを分析するタイプか?

 オールマイトとの相性が悪かったとしたら、そもそも教わる土台すらできていないんじゃないか……?

 というか扱えてないのかその証明になる!

 

「SMASH!!!」

「……705.3m」

 

 指一本に集中させて、今回を乗り切った……が、身体を壊すことを避けられたわけじゃない。オールマイトと緑谷くんの関係性を知ってるのは、多分校長あたりとほんの一部のプロヒーロー。生徒じゃ多分……俺だけだ。

 

(俺が教えるしかない)

 

「先生、まだ……動けます!」

「こいつ……!」

*1:
本来の16番は葉隠だが、この小説では砂藤くんが傑物に通っているため障子〜葉隠の出席番号がひとつ前にずれている。

*2:
漫画『BLEACH』にて登場する組織「護廷十三隊」における、二つめの隊。隠密に秀でた隊士が多く、隊長である砕蜂(ソイフォン)は隠密機動総司令官も務めている。

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