アリス「コーラルをキメます」   作:宙は空である

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ようこそ!ビジター!
おや?先生でしたか、違う?では猟犬でしょうか?
どちらにせよ私のご友人同然です!
あぁ、新しいご友人が訪ねてくる。感激だ……♡
私はあなたをうまく楽しませることはできるでしょうか…不安だ。
けれど、ずっと楽しみです!

では踊りましょう!ご友人!

スロー、スロー、クイック、クイック、スロー…♡

※前半はAC6要素皆無です。すみません


先生、成長を知る()

今、先生はある問題に直面している。

今までも転勤初日に職場が無くなりかけたり(プロローグ)、エベレスト並みに積み上げられた書類の山だったり、生徒と共に銀行強盗を行ったり、生徒のために女子高生の足を舐めたりしてきたが、

そのどれもが絆の力で解決できる問題だった。

だが、今回のは難しいかもしれない。

 

「ちょっ、ちょっと!アリスちゃんそれは食べ物じゃないよ!」

 

「先生も何か言ってあげてください!」

 

目の前で私たちが連れてきた推定記憶喪失の少女がゲーム機のコントローラーに歯型をつけるという惨劇が繰り広げられている。

 

…とりあえず、現状を整理しよう。

 

 

 

数日前、私の職場ことシャーレに一つメッセージが届いた。

 

『__勇者よ。』

 

『あなたのことを待っていました。』

 

『今こそ話しましょう。太古、天族と魔族が…「ちょっとお姉ちゃん!?」…なんなのさミドリ?』

 

『私だって今のプロローグだと面白くないのはわかってるよ?ありきたりすぎて私だったらあっこれやめとこってなるタイプの語りだったし』

 

『そんなこと言ってるわけじゃない、これ先生に送る録音でしょ?だったらふざけたこと言ってないでもっと真面目なこと言わないと!』

 

『えー、でも、堅苦しすぎたら気が滅入って来てもらえないよ!それに依頼の始まりが物語のは入りみたいだったら最高じゃん!』

 

『まぁ…それはそうだけど、時と場所を考えなきゃ〜〜』

 

そんな微笑ましいやり取りから始まった依頼は廃部寸前のゲーム開発部の立て直しだった。曰く冷酷無慈悲の算術使いユウカに廃部通告をつきつけられたらしい。

 

わかる!わかるよぉ……!私もユウカの冷酷な算術によって財布を握られてしまっている被害者、気持ちが痛いほどわかる。それになんとモモイは私が大好きな『ARMORED CORE』シリーズのファンらしい。依頼のついでにAC6のソフトを貸すことを約束してしまった。

 

そんな同士のためにも廃部回避活動の要請に快く応じたのだが、

蓋を開けてみれば、いきなり廃墟に同行させられた挙句、野生のオートマタに追い回され、廃墟に眠る少女を発見した。しかも少女が起きる、いや起動したときに『ピピピッ』という起動音がした。

 

…てか野生のオートマタってなんだよ。廃墟から機械音がする少女が出てくるってなんだよ。

簡単に私の廃墟に対する印象を塗り替えるのはやめてほしい。

 

まぁ、そこからモモイの鶴の一声(悪知恵ともいう)によりゲーム開発部の部室にこの子を新部員という名目で連れ込んだというのが今の現状だ。

 

「もう…アリスちゃん?あれはゲームコントローラーっていって〜〜」

 

改めて私に口元を拭かれながら、コントローラーは食べ物ではないと諭されている少女を見る。

 

それにしても頬、柔らかいな…

それだけではない肌の血色、髪の質感そのどれもが人のものと大差ない。

その正体が人に似ている機械とは思えない。

これだけなら新しいゲーム開発部員として迎え入れることができるのだが…

 

「…認識を修正します。これは食べ物ではなく、操作装置です」

 

口調がなぁ…

ついさっきモモイも言っていたが、人に甘いユウカでもさすがにアリスを部員として認めないだろうなぁ…

 

「?」

 

明らかに「機械です」と宣言するような口調で話したアリスはあたりを見回し、ポテポテと私から離れていく。

 

「先生、アリスちゃんが話し方を学習できるような教材ありませんか?」

 

"う〜ん、あるにはあるけど。短期間でってなると難しいかな"

 

"そもそも話し方って実際に友達と話すことで覚えていくことだし…"

 

「そうですよね……やっぱりアリスちゃんと話し続けるしかないのかな」

 

「正体不明の物体を発見、正体を確認します。」

 

そう言って私の視界の端からアリスが、一冊のゲーム雑誌を持って現れた。

 

「あっ、そ、それは……っ!?」

 

「えっと……ちょっと恥ずかしいけど、実はその中に、私たちが作ったゲームが載ってるの。まあ、すごい酷評されちゃったんだけどね。」

 

ユウカが言っていたクソゲーランキング一位のゲーム、『テイルズ・サガ・クロニクル』のことだろうか。

そもそもある程度の知名度がなければそんなランキングに乗るはずがないので初めて作成したゲームとしては十分成功してると思うのだが……

まあ、レビューに「このゲームに何が足りないかを数えだしたらキリがないけど……まあ、一番に足りていないのは『正気』だ」とか言われたら傷つくよな…

 

「あ、そうだ!」

 

「アリスちゃん私たちのゲーム……やってみない?」

 

「「会話」をしながら進められるから、ゲームをやってみるのも話し方の勉強になるかも。」

 

「……? ここまでの言動の意図、完璧には把握しかねます」

 

アリスの疑問に対し、ミドリはどうしていいか分からないといった様子でこちらを見てきた。

これは助け舟を出したほうがいいかな。

 

”アリス、全部理解してからじゃないと行動しちゃいけないなんてことはないよ”

 

そういうと私はそばにあった『テイルズ・サガ・クロニクル』を指さす。

 

”理解できないのなら、やってみるといいよ。それに”

 

”ゲームは楽しいからね”

 

「……」

 

アリスは、コントローラーへ視線を落とした。

 

「肯定、アリスはゲームをプレイします。」

 

「ほ、本当に!?ちょ、ちょっと待ってて、すぐにセッティングするから!」

 

そう言うとミドリはいそいそとゲームの準備に取り掛かった。

それにしてもゲームで話し方を学ぶ、か…

私では考えつかなかったであろう学び方、やっぱり生徒の発想力にはいつも驚かされるなぁ。

 

「よし、準備完了!」

 

ミドリは弾んだ声を上げると、待ちきれないとばかりにコントローラーをアリスの前へ差し出した。

それを受け取ったアリスは、コントローラーを持ち上げて表を眺め、くるりと裏返す。しばらくそうして隅々まで観察したあと、ミドリへ視線を戻した。

 

「アリス、操作装置を確認。ゲームの起動方法の説明を要求します」

 

「あっ、そうだよね。この電源ボタンを押したら起動するよ」

 

アリスは指差されたボタンに親指を持ってくる。

 

「…アリス、ゲームを開始します……!」

 

 

 

_______________

 

_________

 

____

 

 

 

(1時間後……)

 

 

__

 

____

 

________

 

 

 

 

「こ、ろ、し、て……」

 

か細い声が部屋に響く。そこには髪をぼさぼさに乱した、何とかエンディング場面にたどり着いた疲労困憊の勇者がいた。先ほどの初めてのゲームを心待ちにしていた少女の姿からは想像もできない産物である。

 

「すごいよアリス!開発者二人が一緒とはいえ、1時間でトゥルーエンドなんて!」

 

…モモイは初見殺しをわざと隠してたからいた意味をあまり感じなかったが……

 

「そ、それもそうだけど、アリスちゃんの喋り方のパターンが、どんどん多彩になってきている……!?」

 

私としては「ごめんなさい。私は植物人間ですので、女性に対して気軽に声をかけることはできません」のような言葉を覚えてしまわないか心配だったけど……

 

「勇者よ、汝が同意を求めるならば、私は肯定しよう。」

 

言葉のレパートリー増えてるし……このまま様子見でもいいかな

 

「と、ところでその……」

 

「……?」

 

ミドリは両の手を組んだり、離したり忙しなく動かしていたが、手を握りこむようにして口を開いた。

 

「わ、私たちのゲーム、どうだった?面白かった?」

 

あれだけ批評を食らったのだ。誰だって自信を無くすものだろう。でも、

 

私はアリスの方を見る。そこにはひどく心を動かされたものに対して真剣に向き合う少女がいた。

 

「……面白さ、それは明確に存在……」

 

「まるで、別の世界を見ているような……」

 

「夢を見ているような、そんな気分……でした」

 

「おお!かなり面白かったってことじゃない?!」

 

「あんな体験を……もう一度」

 

「……もう一度」

 

するとアリスの目から一つの線が落ちる。

 

「あ、アリスちゃん?!どうして泣いてるの?!」

 

「決まってるじゃん!それだけ私たちのゲームが感動的で楽しかったってことだよ!」

 

「え、えぇ、さすがにそこまでは……というかこのゲーム、ギャグ寄りのRPGだし……」

 

「ありがとうアリス!あー、早くユズにも教えてあげたいなぁ」

 

背後にあったちょうど人一人入りそうなロッカーがギギギ……という音を立てて開かれる。

 

「……ちゃ、ちゃんと見てた」

 

声のした方に顔を向けると赤髪の小さな少女が立っていた。

 

「ユズ!」

 

ユズと呼ばれた少女が俯きながらぎこちない動きでアリスに近づく。

そして、頬を紅潮させながら、顔を上げた。

 

「……??」

 

「……あ、あ、ありがとう。面白かったって言ってくれてありがとう」

 

「楽しかった、面白かったって言葉、ずっと聞きたかったんだ」

 

「……ユズ」

 

あぁ、若いっていいなぁ…

私は今、一人の少女の小さな一歩、だが、明確な成長への一歩を見ている。

それはある意味止まってしまった私たち大人には内容に感じた。

 

「と、とにかくあらためまして」

 

「ゲーム開発部の部長、ユズです」

 

「これからよろしくね」

 

「よろ、しく……理解」

 

「ユズがパーティーメンバーに加わりました、パンパカパーン!……あっていますか?」

 

「う、うん、大体そんな感じかな」

 

「よし、じゃあさっそく次アリスにおすすめするゲームはこれ!」

 

そう言うとモモイは一つのゲームパッケージを掲げる。

 

「『英雄神話』!かなり難しくてやりごたえがあるんだよね!」

 

「何言ってるの、アリスちゃんはゲーム初心者だよ?『ゼルナの伝説・夢見るアイランド』から始めるのが一番だって!」

 

「これだけは譲れない、次やるべきは『ロマンシング物語』だよ。あ、でも第3弾だけは個人的にやらなくても……」

 

うん、最初はこの依頼どうなることかと思っていたが、

次にやるゲームについて話しているゲーム開発部を見ていると彼女たちならどんな困難にも打ち勝つことができる、そう思った。

だって、そうだろう?もう彼女たちは立派なパーティーメンバーなんだから。

 

「あ!そういえば先生!約束してた『AC6』持ってきてくれた?」

 

”うん、持ってきてるよ”

 

鞄から一つのゲームソフトを取り出す。それをモモイは興奮が収まらない様子で受け取った。

 

「ほんとにACだ!」

 

「いやー、ほんとは私も発売当日に買いたかったんだけどね…ちょうどソシャゲの欲しいキャラがピックアップされて。それに持ってたお金、全部使っちゃったんだよね」

 

わかる…!ソシャゲにお金をつぎ込んでしまって、この前もオカン(ユウカ)に怒られた。

一度生まれた悪癖はそう簡単には死なない。

 

「よし、じゃあさっそくAC6をプレイさせてもらうよ!」

 

「もう、お姉ちゃん?先にアリスにゲームしてもらうのが先でしょ?」

 

「あ!そうだった、そうだった!ごめん、先生プレイした感想、また後日でもいい?」

 

”いいよ、私はもう全クリしてるから気長に待つよ”

 

「ありがとう!」と言いながらみんなの輪の中に戻っていくモモイを見送る。

後のことを考えれば私は迂闊だったかもしれない。

なぜなら、

 

「おや、起きたのですね。素敵な朝です!さぁ、踊りましょう!モモイ!」

 

「え?あ、アリスどうしたのってうわぁぁ?!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「スロー、スロー、クイック、クイック、スロー…♡」

 

「先生が来る、新しいハンドラー、私は彼とうまく踊れるでしょうか…不安だ」

 

くるりとモモイを振り回す。

 

「けれど、ずっと楽しみです!」

 

「せ、先生!アリスちゃんが!アリスちゃんがぁ!」

 

こんな頭の痛くなる光景を見なくて済んだというのに……




一応、ミルクトゥース仮面なし版も描いたのですが、見たいですかね?

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