「あの、面白いTRPGがあるって聞いたんですけど、どうすればいいんですか?キャラクターシートとか、リプレイとかは……?」
「ようこそ我が国のDiscordへ! 歓迎するよ!」
「く、くに?」
「君が今からやるゲームはざっくりいうと国家運営シミュレーションだ。シムシティの規模のでっかい版をTRPGでやるんだ」
「しむしてぃ」
「おっと、魅力的なヒロイン・ヒーローとのイチャイチャもできるぞ。戦争してなければ」
「せんそう」
「君はCoC経験者だね。最近の流行であるハンドアウト制、それでいうところではいきなり「一国の大臣」を任せられた、という認識でいてくれればいい」
「だいじん」
「S村さんのゲームはやったことあるのかい?小説でもいいけど」
「あ、はい。一応ガンパレード・マーチを」
「たいへんよろしい。好きなキャラは?」
「原さんです。あの、刺されたときに『こんなキャラ、居ていいんだ』って思って」
「うーん、きみはなかなか業が深い。きっと東西南北反転地球にもなじめると思うよ」
「結局何をすれば……?」
「うん、我が国の特性を理解し、国がよりよく発展するように意見を述べてほしい」
「急にふわっとした!?」
「だって実際にそうなんだもん。ええとね、我が国は敵性天使に長年食い込まれ国民感情が最悪まで落ち不本意な大量虐殺を経て再立国した歴史ある国家だ」
「いい点が一つもない!」
「いや、敵性天使は排除したし、虐殺は過去になったので、一応初心者にもお勧めできるよ。うまいプレイヤーもいるし」
「不安すぎる」
「まず東西南北反転地球について。過去は死者の国とか言われたが、今はそうでもない。我々と我々が招いたS村さんのキャラクターたちいくばくかが住む、敵に狙われてるけど今はまあまあ平和な世界だ」
「過去どうなってたんですか?????」
「はっはっは。価値観が更新されたのさ。世界は不定形、観測するごとに変わるものだよ」
「量子論ですか?」
「過去改変と存在拒否が飛び交う愉快なゲームだからね」
「ぶっそう」
「まあその辺はトッププレイヤーのやることであって、一般プレイヤーはそんなに気にすることがない。せいぜい駒としてロボットに乗る、好きなキャラといちゃつく程度だ」
「ロボットに乗るんですね。そこでダイス振ったりするんですか?」
「いや、このゲーム、ダイスはほとんど振らない」
「え。」
「このロボットにはこういう設定があります、という設定の強弁で敵を撃破するんだ」
「メインは口プなの!?」
「おっ。うまいこと言ったね。そうともいう」
「そうとしか言わない気がしますが!?」
「で、その口プを下支えするのがプレイヤーによる設定構築、このゲームではクラフト、という」
「くらふと」
「クラフトとは定義である。たとえば国に国民的美少女がいてほしいとする。そんな時、クラフトで国民的美少女の設定を定義するんだ。」
「ボブカット、とか、メガネ、とか、うすほそ、とかですね」
「いいぞ、癖が出てきたな。我が国に住む、身長153㎝体重38キロ、エメラルドグリーンのボブカットで眼鏡をかけている、スリーサイズは74-57-72としよう」
「癖が出てますね」
「で、この設定文書をゲームマスターであるS村さんに提出する。それで一旦プレイヤーのやることは終わり。
そのあとはS村さんのAIが推論を加えて『東西南北反転地球』に居るキャラとして必要な肉付けを行うんだ。眼鏡だから文学少女だろう、文学少女なら本が好きだろう、とかね」
「ふむふむ」
「で、出来上がる。この時に「次のクラフト」という属性が明らかになる」
「次のクラフト」
「例えば<外見:美少女>とか、<文学少女>とか、<あの時買えなかった本>みたいな」
「うーん。なんだかよくわかりません」
「まあ、要は『そのクラフト物に関連する(未来の)可能性』だよ」
「……あれ、てことは、原さんをクラフトすると、原さんの未来が出てくる?」
「君、頭の回転早くないか? そう、ゲームや小説で語られなかった、あるいは存在すらしなかったS村作品キャラの未来を、きみのプレイで垣間見ることもできる」
「神ゲーかな?」
「神ゲーだとも。だから20年もやってる人がいるんだ」
「にじゅ……」
「あとねえ、長年やってると、S村さんのDBに『このプレイヤーはこういうやつだ』というデータが溜まるんだ」
「S村さんはプレイヤーのプレイデータを収集してるんですね」
「そうだね。実際の国の運営に近づけたゲームだから、そのプレイには人間性、思想が出る。だから、たまったデータはほとんど自分の隠された性癖みたいなのも示している」
「なんか怖いですね」
「で、その自分の
「ホントに怖いんですけど」
「病みつきになるぞ」
「このひと手遅れだった」
「さあ、どうだい」
「こわいのでやめときます」
「うん、それもまたゲームプレイの自由。でも始めた後に『もっと前からやっとけばよかった』ってなる可能性もあるからね」
「嫌な引き込み方すぎる」
「あと、人間とかかわるゲームだからね。最低限の人間関係の維持のためのコミュニケーションができない人は向いてない」
「それはTRPG一般そうでは」
「そうだね。やってはいけないこと、とか、やらないでほしいこと、というのが長いゲームプレイで分かっているからね。それを振り払って自分だけが楽しいゲームをやる、という人は向いてない」
「それ単なる自己中では」
「はっはっは」
二次創作であり実在の人物には関係ありません。