第一話 始まりは何時も終わりから
沈みゆくフェリーの中、操舵室に一人の女性がいた。
これといった特徴も無く、至って普通の女性。
しかし、その身体には大量のガラスが刺さっており、特に左腕に関しては、二の腕から先がなくなっていた。
足元には、血溜まりが入ってきた海水と混じり合っていた。
そんな状態だというのに、彼女は只々、
微笑んでいた。
もう助からないと諦めているわけでも、気狂いしたわけでもない。
優しげに、慈愛に満ち溢れた、赤子を抱く母のように。
爆発でできた穴から、只々夕日に染まる水平線を見つめて、唯々、
微笑んでいた。
彼女は一人、フェリーと共に海中に没した。
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ーー夢を見ていた。
『人は、[愛]なくしては生きられない』
ーー懐かしい、あの日の夢を。
『本当にそうなのかはわからない。たが』
ーー私の生きる目的となった、父のあの言葉を聞いた日。
『ただ一つだけ、たった一つだけ、わかることがある。それは…』
ーー忘れられるはずのない、あの言葉。それは…
『「人は、[愛]のために全てを捨てることができる」』
消え行く意識の中、何時も仏頂面だった父が、笑っていたように見えた。
ーーーーーー
死んだと、思っていた。
…いや、今もある意味では[死んで]いるのだが。そういう意味ではなく、ただ純粋に死んだと思っていた。なのにーー
砂浜に手をつき、海面に映る林と
何故、私は
「…どうしてこうなった」
その問いに、返答などあるわけなかった。
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海面に映る自分の姿を見る。そこに映るのは見慣れた顔ではなく、子供らしいシワ一つない顔、まるで雪のように白い肌と同色のロングヘアー。大きな目と
身体も、幼女と呼ぶのに相応しいほどに小さく、細く、柔らかい。正に北方棲姫そのもの…なのだが、
(左の二の腕から先は義手になっている…)
あの時に無くした場所から先が、ゴテゴテの金属義手になっており、どことなくむせる感じがする。
しかし誰が、何のためにつけたのかはわからない。その誰かが私を復活(?)させたのかもわからないし、どうして復活させたのかもわからない。だが、
(この義手のセンスは超一流だ、友達になれそう)
…なんてボケをかましても、笑ってくれる人もノリ良く乗っかってくる人もいない。何せここは、無人島なのだ。
はぁ、と大きく溜息をつきながら立ち上がる。
ここでくよくよしてたってしかたがない。私は、この島のことを知るために歩き始めた。