リコリスリコイル 不可能犯罪   作:鼻眼鏡26号

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赤いアギト

 UNKNOWNが、二本の剣を構えた。

 

 その瞬間。

 

 アギトが踏み込む。

 

 相手よりも早くアギトは懐に飛び込みアンノウンの胸部に拳を叩き込む。

アギトの拳により体が吹き飛び壁に叩きつけられる。

 

そして、アギトはベルトの両腰にあるボタンの右のボタンを押した。

 

ボタンが押されたことによりアギトのベルトのオルタリングは赤い発光が起こりベルトの中央からセイバーの柄が飛び出ていた。

 

アギトはそれを掴み勢いよく引き抜くと赤く細長いセイバーが現れセイバー鍔はアギトの角を模していた。

 

さらに、アギトの走行にも変化が現れた。

黄金の胸部がオルタリングの赤い発光と同じく赤の装甲へと変化していた。

加えて右肩も赤の装甲に変化した。

 

「赤くなった!」

 

千束が興奮気味に驚き

 

「武器もあるんですか!?」

 

たきなも出てきたセイバーに驚く。

 

アギトは武士のようにセイバーを構えて相手の出方を伺う。

 

壁にめり込んでいたアンノウンが戻りその様子は怒れるのがよくわかった。

2本のソードを構えアンノウンは踏み出した。

 

 ガキィンッ!

 

 フレイムセイバーと二本の剣が激突した。

 

 激しい火花が散る。

 

 UNKNOWNが右。

 

 続けて左。

 

 さらに身体を回転させ、横薙ぎ。

 

 アギトはそのすべてを、最小限の動きで受け流していく。

 

 剣を弾く。

 

 半歩下がる。

 

 踏み込む。

 

 一閃。

 

 UNKNOWNが後退する。

 

「……」

 

 千束は銃を握ったまま、動けなかった。

 

 撃てない。

 

 正確には――撃つ必要がなかった。

 

 アギトとUNKNOWNの動きが速すぎる。

 

 二人の間に割って入れば、千束の動体視力をもってしても誤射の危険がある。

 

「……たきな」

 

「はい」

 

「私たち……」

 

「……はい」

 

 二人はただ見ていた。

 

 援護できない。

 

 銃を構えたまま、戦いを見守るしかない。

 

 UNKNOWNが大きく踏み込む。

 

 アギトの胸元へ二本の剣が迫る。

 

 だが――。

 

 キィンッ!

 

 フレイムセイバーが片方を弾く。

 

 もう一本。

 

 アギトは身体を捻る。

 

 剣先が装甲を掠めた。

 

 その瞬間。

 

 アギトの肘がUNKNOWNの腕を打ち上げた。

 

 剣の軌道が逸れる。

 

 そして――。

 

 ズンッ!

 

 強烈な蹴りがUNKNOWNの腹部へ叩き込まれた。

 

 UNKNOWNの身体が宙へ浮く。

 

「……!」

 

 千束が息を呑む。

 

 UNKNOWNは空中で体勢を立て直し、着地する。

 

 だが。

 

 その身体は、明らかにふらついていた。

 

 アギトは追撃しない。

 

 ただ、フレイムセイバーを静かに構える。

 

 UNKNOWNが異形の言葉を発した。

 

「――――」

 

 その声を聞いた瞬間。

 

 アギトの動きが止まった。

 

 言葉の意味が、頭の中に直接流れ込んでくる。

 

 ――お前もまた、抹殺すべき存在。

 

 ――力を持つ者。

 

 ――人間の中に生まれた異端。

 

「……」

 

 アギトは黙ってUNKNOWNを見る。

 

 その奥で、ユイトの意識が静かに反応する。

 

 ――俺も……こいつらに狙われるのか。

 

 UNKNOWNが剣を構え直した。

 

 もう一度、襲いかかる。

 

 だが――。

 

 アギトは一歩も退かなかった。

 

 フレイムセイバーを握り直す。

 

 腰を落とす。

 

 剣先を低く構える。

 

 その姿は、まるで静かな炎を纏った剣士だった。

 

「……ここで終わらせる」

 

 アギトの腰。

 

 ――オルタリングが、強く輝いた。

 

 黄金の光がフレイムフォームの全身を駆け巡る。

 

 フレイムセイバーにも、赤と金の光が集まっていく。

 

「……何か来る」

 

 千束が呟いた。

 

「はい……」

 

 たきなも銃を下ろした。

 

 もう、自分たちが戦う場面ではない。

 

 ただ――見届ける。

 

 UNKNOWNが最後の突撃を開始する。

 

 アギトも走った。

 

 互いの距離が、一瞬で消える。

 

 UNKNOWNが二本の剣を振り下ろす。

 

 アギトは――。

 

 一歩、踏み込んだ。

 

 キィィィンッ!

 

 フレイムセイバーが二本の剣を同時に弾き上げる。

 

 UNKNOWNの両腕が開く。

 

 そこへ。

 

 アギトの身体が滑り込んだ。

 

「――!」

 

 一閃。

 

 フレイムセイバーが、UNKNOWNを斬り抜ける。

 

 だが。

 

 それだけでは終わらない。

 

 アギトは剣を振り抜いたまま、静かにUNKNOWNへ背を向けた。

 

 UNKNOWNが振り返る。

 

 その身体に、無数の光の亀裂が走った。

 

 千束が目を見開く。

 

「……!」

 

 アギトが振り返る。

 

 フレイムセイバーを構え直す。

 

 そして――。

 

 UNKNOWNの頭上に、巨大な光の輪が現れた。

 

 まるで天使の輪のような、黄金の光。

 

 UNKNOWNの身体が光に包まれていく。

 

 アギトは最後の一撃を放つため、剣を高く掲げた。

 

 フレイムセイバーが眩い光を放つ。

 

「――終わりだ」

 

 振り下ろす。

 

 瞬間。

 

 ドォォォォンッ!!

 

 黄金と赤の閃光が、路地を埋め尽くした。

 

 UNKNOWNの姿が光の中へ消えていく。

 

 巨大な光の輪が砕ける。

 

 そして――。

 

 UNKNOWNの身体が、黄金の光となって爆発した。

 

 ドンッ!!

 

 衝撃波が路地を駆け抜ける。

 

 千束とたきなの髪が大きくなびいた。

 

「……」

 

 二人は言葉を失った。

 

 やがて光が消える。

 

 そこには――。

 

 UNKNOWNの姿は、もうなかった。

 

 残されているのは、わずかな光の粒だけ。

 

 それすらも、空気へ溶けるように消えていく。

 

 アギトは静かにフレイムセイバーを下ろした。

 

 その姿には、勝利を誇るような動きはない。

 

 ただ静かに。

 

 戦いが終わったことを確認するように立っている。

 

「……終わった」

 

 千束が小さく呟いた。

 

 たきなも、アギトから目を離さない。

 

「……はい」

 

 二人とも分かっていた。

 

 今、自分たちが見ていたのは――。

 

 ただの怪物同士の戦いではない。

 

 人間には到底及ばない力を持った、二つの異形の戦いだった。

 

 そして。

 

 黄金の戦士――アギトは、ゆっくりと千束とたきなの方へ振り向いた。

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