リコリスリコイル 不可能犯罪   作:鼻眼鏡26号

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オリ主です

まぁ、別世界のアギトとでも思ってください。




目覚めるその魂

 

朝

 

神居ユイトは、家政婦のアルバイトへ向かう。

 

「……今日は掃除と買い物か」

 

スマホの依頼内容を確認しながら、ユイトは小さく息を吐いた。

 

昨日と何も変わらない朝。

 

そう思っていた。

 

仕事はいたって普通。

 

掃除をして、洗濯をして、依頼主の昼食を作る。

 

ユイトは穏やかな性格で、依頼主からも、

 

「ユイトさんが来てくれると助かるわ」

 

と言われる。

 

ユイトも、

 

「いえ、これが仕事ですから」

 

と笑う。

 

しかし、昼過ぎ。

 

買い物から帰る途中――

 

ドクン。

 

突然、心臓が大きく脈打つ。

 

「……?」

 

ユイトが足を止める。

 

周囲を見渡す。

 

普通の街。

 

歩行者。車。コンビニ。信号。

 

何もおかしくない。

 

なのに。

 

ドクン。

 

ドクン。

 

心臓だけが警告する。

 

そしてユイトは、理由も分からないままある方向を見つめる。

 

その先には――昨日、サードリコリスが全滅した事件現場。

 

ユイト自身は、その事件について何も知らない。

 

ただ、

 

「……嫌な感じがする」

 

そう呟く。

 

そして夜

 

仕事を終え、帰宅。

 

テレビをつける。

 

ニュースでは事件について報道されている。

 

しかしDAが情報統制しているため、詳細は出ていない。

 

ユイトは特に気にせず、夕食を作る。

 

ところが――

 

ニュースの映像に一瞬だけ、事件現場の遠景が映る。

 

その瞬間。

 

ドクンッ!!

 

今までとは比べ物にならないほど強い鼓動。

 

ユイトは包丁を止める。

 

「……なんだ、これ」

 

胸を押さえる。

 

そして頭の中に、一瞬だけ浮かぶ。

 

白い怪物。

 

巨大な爪。

 

自分を見つめる何か。

 

「……っ」

 

頭痛。

 

膝をつく。

 

だが、次の瞬間には消える。

 

ユイトは荒い息をしながら、

 

「……夢?」

 

「俺……何か知ってるのか?」

 

夜。

 

仕事を終えたユイトは、一人で帰路についていた。

 

家政婦のアルバイト。

 

掃除に洗濯、買い物に料理。

 

今日もいつもと変わらない一日だった。

 

「……疲れたな」

 

小さく息を吐く。

 

街にはまだ人が多い。

 

会社帰りのサラリーマン。

友人と笑いながら歩く学生。

コンビニへ向かう人々。

 

そんな、どこにでもある夜。

 

――だった。

 

「……?」

 

ユイトの足が止まる。

 

胸の奥。

 

そこに、奇妙な違和感が走った。

 

ドクン。

 

「……またか」

 

昨日から感じ始めたもの。

 

心臓が、何かを知らせるように脈打っている。

 

だが――

 

今日のそれは、今までとは違った。

 

ドクン。

 

もう一度。

 

ユイトは顔を上げる。

 

「……近い」

 

何が近いのか。

 

自分でも分からない。

 

ただ、身体がそう告げていた。

 

ユイトは周囲を見渡す。

 

そして――

 

一人の少女に目が止まった。

 

少女は一人で歩いている。

 

時折、不安そうに後ろを振り返っていた。

 

「……?」

 

その瞬間。

 

街灯の陰から――

 

何かが現れた。

 

人間ではない。

 

異様に大きな身体。

 

人間のものとは思えない四肢。

 

暗闇の中で、異形の輪郭だけが浮かび上がる。

 

少女はそれに気づいていない。

 

「……!」

 

ユイトの身体が勝手に動いた。

 

「逃げて!」

 

「え?」

 

少女が振り返る。

 

その直後――

 

ズガァッ!!

 

アンノウンの腕が振り下ろされた。

 

ユイトは少女を突き飛ばす。

 

地面が砕けた。

 

「っ……!」

 

あと一歩遅ければ、少女は直撃していた。

 

「な、何……!?」

 

少女が腰を抜かす。

 

ユイトは立ち上がり、少女の前に立つ。

 

「早く逃げて!」

 

「でも……!」

 

「いいから!」

 

アンノウンがゆっくりと顔を上げる。

 

その視線はユイトではない。

 

逃げようとしている少女へ向けられていた。

 

「……こいつ」

 

ユイトは気づく。

 

こいつは――

 

あの子を狙っている。

 

アンノウンが口を開いた。

 

「――グァ……ゼェ……ヴァル……」

 

「……?」

 

意味が分からない。

 

言葉ですらない。

 

低く、歪んだ音。

 

まるで、人間とは異なる何かが発している声だった。

 

少女が震える。

 

「な、何を言ってるの……?」

 

ユイトにも分からない。

 

だが――

 

その声を聞いた瞬間。

 

なぜか確信した。

 

こいつは、あの子を殺そうとしている。

 

「……させるかよ」

 

ユイトが一歩前へ出る。

 

アンノウンが少女へ向かって踏み込む。

 

「行かせない!」

 

ユイトが立ちはだかる。

 

アンノウンの腕が迫る。

 

ユイトは身を捻ってかわした。

 

風圧だけで髪が揺れる。

 

「くっ……!」

 

続く二撃目。

 

三撃目。

 

避ける。

 

だが、完全には避けきれない。

 

拳が肩を掠める。

 

「ぐっ!」

 

身体が数メートル吹き飛ぶ。

 

地面を転がりながら、ユイトは歯を食いしばる。

 

「……なんて、力だ……」

 

アンノウンは止まらない。

 

ゆっくりとこちらへ歩いてくる。

 

その向こう。

 

逃げる少女の姿が見える。

 

アンノウンが再び少女へ視線を向けた。

 

「――ギィ……アァ……ヴァ……」

 

異形の言葉。

 

意味は分からない。

 

けれど――

 

その声には、明確な意思があった。

 

狩る。

 

ただ、それだけ。

 

「……っ!」

 

ユイトは立ち上がる。

 

「お前が何なのかは知らない」

 

拳を握る。

 

「何を言ってるのかも分からない」

 

アンノウンが迫る。

 

「でも……」

 

胸の奥が鳴る。

 

ドクン。

 

「……あの子を殺させるわけにはいかない」

 

ドクン。

 

「俺が……止める」

 

その瞬間。

 

アンノウンが跳んだ。

 

ユイトへ向かって、巨大な腕が振り下ろされる。

 

――避けられない。

 

そう思った瞬間。

 

ドクン――ッ!!

 

世界が止まったように感じた。

 

胸の奥から、強烈な鼓動が響く。

 

身体の奥。

 

何かが目を覚ます。

 

「……何、だ……これ……」

 

光が溢れる。

 

ユイトの身体を包み込む。

 

アンノウンの腕が、その光を叩き潰そうと振り下ろされる。

 

しかし――

 

その拳が、止まった。

 

光の中から現れた腕が、アンノウンの攻撃を受け止めていた。

 

静かに。

 

ただ、圧倒的な力で。

 

やがて光が消える。

 

そこに立っていたのは――

 

人間ではなかった。

 

赤い複眼。

 

異形の装甲。

 

人間を思わせながら、人間ではない姿。

 

仮面ライダーアギト。

 

アギトは何も言わない。

 

ただ、目の前のアンノウンを見据える。

 

アンノウンが一歩下がる。

 

「――グルァ……ッ」

 

アギトは構えた。

 

その動きに、荒々しさはない。

 

焦りもない。

 

まるで長年鍛錬を積んだ武士のように――

 

静かに。

 

正確に。

 

敵を見据える。

 

そして。

 

一歩。

 

アギトが踏み込んだ。

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