リコリスリコイル 不可能犯罪   作:鼻眼鏡26号

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これで一通り




風を纏いし戦士

 

 

 ――キィィィィィン……!

 

 黄金の光が、ゆっくりと収束していく。

 

 そこに立っていたのは、仮面ライダーアギト。

 

 銀色の装甲。

 

 胸部を覆う青い装甲。

 

 そして、暗闇の中で赤く輝く複眼。

 

 アギトは一歩も動かず、二体のUNKNOWNを見据えていた。

 

 対するUNKNOWNたちも、警戒を解いてはいない。

 

 一体は槍を構え、もう一体は両腕を広げている。

 

 異形の言葉が、夜の道路に響いた。

 

「――グルァ……アギト……!」

 

 アギトは答えない。

 

 ただ、静かに腰を落とした。

 

 その姿に、無駄な力みはなかった。

 

 まるで、相手の呼吸を読む剣士のように。

 

 先に動いたのは、槍を持つUNKNOWNだった。

 

 ――ドッ!!

 

 アスファルトを砕き、一気に距離を詰める。

 

 槍の穂先が、アギトの胸部へ一直線に伸びた。

 

 アギトは身体をわずかに傾ける。

 

 穂先が装甲の脇を通り過ぎた。

 

 そのまま一歩、踏み込む。

 

 ――ドッ!

 

 拳がUNKNOWNの胴体へ叩き込まれた。

 

 巨体が揺れる。

 

 アギトは追撃を急がず、相手の反応を確かめるように半歩退いた。

 

 UNKNOWNが咆哮する。

 

「――ギィィィッ!」

 

 槍を引き戻し、今度は横薙ぎに振るう。

 

 アギトは身を沈めて回避。

 

 その動きに合わせて、もう一体のUNKNOWNが背後から迫った。

 

 挟撃。

 

 左右から同時に襲いかかる。

 

 しかし――。

 

 アギトは慌てなかった。

 

 槍の軌道を見極め、身体を回転させる。

 

 穂先を紙一重でかわすと、その回転の勢いを利用して後方のUNKNOWNへ肘を叩き込んだ。

 

 ――ゴッ!

 

 続けて、低い位置への蹴り。

 

 ――ドゴッ!

 

 UNKNOWNの膝が沈む。

 

 アギトはすぐに距離を取った。

 

 二体の間合いから離れ、再び構える。

 

 その一連の動きに、焦りはなかった。

 

 だが――。

 

 敵も、ただ力任せに攻めているわけではなかった。

 

 槍を持つUNKNOWNが後退する。

 

 もう一体が前へ出て、アギトの動きを封じるように腕を振るった。

 

 アギトがかわす。

 

 その隙に、槍が横から襲いかかった。

 

 ――ガキィンッ!

 

 槍の柄が、アギトの肩を打つ。

 

 アギトの身体がわずかに傾いた。

 

 初めて、明確な一撃を受けた。

 

 UNKNOWNたちは、その隙を逃さない。

 

 拳。

 

 槍。

 

 連続する攻撃が、アギトへ押し寄せる。

 

 アギトは一つずつ回避する。

 

 しかし、二体の連携は崩れない。

 

 片方を攻めれば、もう片方が隙を突く。

 

 通常の姿のままでは、決定打を与えられなかった。

 

 ――その時。

 

 アギトの腰にあるオルタリングが、淡い光を放った。

 

 アギトは一瞬だけ、ベルトへ視線を落とす。

 

 次の瞬間。

 

 腰の左右に備わったボタンへ、左手を伸ばした。

 

 そして――。

 

 カチッ。

 

 左のボタンが押し込まれる。

 

 ――キィィィィィン……!

 

 高音が、再び夜に響いた。

 

 オルタリングから黄金の光が溢れ出す。

 

 その光は、アギトの全身を包み込んだ。

 

 UNKNOWNたちが後退する。

 

「――アギト……!」

 

 異形の声が響く。

 

 黄金の光が、身体の輪郭を塗り替えていく。

 

 胸部の装甲が変化する。

 

 肩の形状が変わり、全身を覆う色彩が青を基調としたものへと移り変わっていく。

 

 そして――。

 

 光が収束した。

 

 そこに立っていたのは、先ほどまでのアギトとは異なる姿。

 

 青い装甲。

 

 風を思わせる、しなやかな佇まい。

 

 両腕に宿る、研ぎ澄まされた力。

 

 アギト・ストームフォーム。

 

 アギトは静かに右腕を掲げた。

 

 その手元に、青い光が集まる。

 

 光が細長い輪郭を形作り、柄が生まれる。

 

 続いて、長い刃が展開した。

 

 風を切り裂くような、鋭い三日月形の刃。

 

 柄の先端には、もう一つの刃。

 

 長柄の武器が、アギトの手へ収まった。

 

 ストームハルバード。

 

 アギトはそれを片手で握り、軽く構えた。

 

 その動作に、迷いはなかった。

 

 槍を持つUNKNOWNが、異形の言葉を発する。

 

「――グラァァァッ!」

 

 そして、突進。

 

 アギトは動かない。

 

 槍の穂先が迫る。

 

 あと一歩。

 

 その瞬間、アギトは柄を傾けた。

 

 ――キィンッ!

 

 ストームハルバードの刃が、敵の槍を横から弾く。

 

 軌道を逸らされた槍が、アギトの脇を通り過ぎた。

 

 アギトはそのまま踏み込み、長柄を滑らせるように持ち替える。

 

 柄の先端が、UNKNOWNの腹部を打った。

 

 ――ドゴォッ!

 

 巨体が後退する。

 

 間髪入れず、アギトが刃を返す。

 

 青い軌跡が、夜の空気を切り裂いた。

 

 ――ザンッ!

 

 刃がUNKNOWNの武器を捉える。

 

 槍が中央から断ち切られ、地面へ落ちた。

 

「――ギィッ!?」

 

 UNKNOWNが後ずさる。

 

 アギトは追いすがらない。

 

 ストームハルバードを静かに構え直し、相手の動きを待った。

 

 その姿に、勝ち誇る様子はない。

 

 ただ、次の一手を見極めている。

 

 武器を失ったUNKNOWNが、怒りに任せて突進した。

 

 両腕を振り上げ、アギトを叩き潰そうとする。

 

 アギトは半歩、横へ移動した。

 

 拳が空を切る。

 

 その瞬間――。

 

 ストームハルバードの柄が、敵の腕を打った。

 

 ――ガキッ!

 

 体勢が崩れる。

 

 アギトは柄を返し、刃の側面をUNKNOWNの胸部へ叩き込んだ。

 

 ――ドゴォォッ!!

 

 UNKNOWNの巨体が吹き飛ぶ。

 

 道路脇の壁へ激突し、土煙が舞い上がった。

 

 アギトは、ゆっくりと武器を下ろした。

 

 だが、戦いはまだ終わっていない。

 

 もう一体のUNKNOWNが、背後から迫っていた。

 

 その腕には、黒い文字が浮かび上がっている。

 

 頭上に光の輪が現れ、そこから新たな武器が出現した。

 

 剣。

 

 UNKNOWNはそれを握り、アギトへ斬りかかった。

 

 ――ギィンッ!

 

 ストームハルバードが剣を受け止める。

 

 火花が散った。

 

 押し合う二つの異形。

 

 しかし、アギトは力比べを続けなかった。

 

 柄をわずかに傾け、剣の刃を滑らせる。

 

 UNKNOWNの腕が流れた。

 

 その一瞬。

 

 アギトが踏み込む。

 

 ストームハルバードの柄が、敵の脇腹へ突き刺さった。

 

 ――ドッ!

 

 UNKNOWNの身体が折れる。

 

 続けて、アギトは武器を大きく振り回した。

 

 青い風が巻き起こる。

 

 刃が弧を描き、UNKNOWNの胴体を打ち据えた。

 

 ――バギィッ!!

 

 異形の巨体が宙を舞う。

 

 地面へ叩きつけられ、アスファルトが砕けた。

 

 UNKNOWNは立ち上がろうとする。

 

 だが、身体が思うように動かない。

 

 アギトは数歩、静かに近づいた。

 

 ストームハルバードを両手で握り直す。

 

 そして、ストームハルバード振り回す。回るストームハルバードは速度が上がり風が起きる。さらに速度が増してそれこそストームが発生した。

 

アンノウンはその風に身動きが取れなくなった。

 

 アギトは一瞬も目を逸らさず、敵を見据えていた。

 

 ――次の一撃で、終わらせる。

 

 アギトが踏み込む。

 

 青い閃光が走った。

 

 ――ザァンッ!!

 

 ストームハルバードの一閃が、UNKNOWNを斬り裂く。

 

 その瞬間。

 

 UNKNOWNの身体から、黒い光が噴き出した。

 

 異形の言葉が、途切れ途切れに響く。

 

「――ア……ギ……ト……!」

 

 次の瞬間、巨体が爆発した。

 

 ――ドォォォンッ!!

 

 黒い煙が夜空へ立ち上る。

 

 アギトは、爆風の中でも動かなかった。

 

 ただ、煙が晴れるのを待つ。

 

 やがて――。

 

 最初のUNKNOWNが、瓦礫の中から姿を現した。

 

 まだ生きていた。

 

 身体を引きずりながら、アギトへ向かってくる。

 

 アギトはストームハルバードを構え直した。

 

 その赤い複眼が、敵を捉える。

 

 UNKNOWNが最後の力を振り絞り、飛びかかった。

 

 アギトは、静かに身を沈めた。

 

 攻撃をかわす。

 

 すれ違いざま、ストームハルバードの柄を敵の胸部へ叩き込む。

 

 ――ドゴッ!

 

 UNKNOWNの動きが止まった。

 

 アギトは武器を引き、半歩退く。

 

 そして、刃を水平に構えた。

 

 一閃。

 

 ――ザンッ!!

 

 青い軌跡が、夜を切り裂く。

 

 UNKNOWNの身体が硬直した。

 

 次の瞬間、黒い光が全身から噴き出す。

 

 ――ドォォォンッ!!

 

 二度目の爆発。

 

 煙が、道路を覆い尽くした。

 

 静寂。

 

 風が吹き、煙を少しずつ散らしていく。

 

 そこにはもう、二体のUNKNOWNの姿はなかった。

 

 アギトは、ストームハルバードを静かに下ろした。

 

 赤い複眼が、周囲を見渡す。

 

 敵の気配はない。

 

 戦いは終わった。

 

 ◆

 

 道路脇。

 

 ミズキは、薄れゆく意識の中で、その一部始終を見ていた。

 

 青い装甲。

 

 長い武器。

 

 風のように静かな動き。

 

 そして――。

 

 二体の怪物を倒した、黄金の戦士。

 

「……ユイト……」

 

 かすかな声が漏れる。

 

 あの青年が、どうしてあんな姿になったのか。

 

 どうして、あんな力を持っているのか。

 

 分からないことだらけだった。

 

 けれど。

 

 彼は、助けに来てくれた。

 

 自分たちを守るために。

 

「……ほんと……」

 

 ミズキは、かすかに笑った。

 

「……何者なのよ……」

 

 その言葉を最後に、意識が遠のいていく。

 

 ◆

 

 ストームフォームのアギトは、静かに立っていた。

 

 その手には、ストームハルバード。

 

 背後には、動かなくなった二体のUNKNOWN。

 

 そして、少し離れた場所には、破損した車。

 

 車内には千束とたきな。

 

 道路脇にはミズキ。

 

 守るべき人たちは、まだ無事なのか。

 

 アギトはストームハルバードを消し、ゆっくりと振り返った。

 

 そして――。

 

 最初に、千束とたきなのもとへ歩き出した。

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