俺が生まれてから四年がたった。
そして、気づいた。
「あ。おれ、転生者だわ」
思ってみれば生まれてから今までずっと違和感があったんだ。
どんな違和感なのかと言うと、俺は生まれてすぐに意識があった。目はよく見えないし、耳もそれほど聞こえない。
でも確かに意識があった。
そして、今日ついに違和感の正体に気づいたのだ。
自分が転生者とわかってしまえば、自分の頭の中にある違和感にどんどん答えがついてゆく。
名前は……名前はこれっぽっちも思い出せないな。
でも仕事は思い出せる。大工だ。
親父も祖父も大工で、なんとなく成り行きで大工になっていた。
それで、親父が引退するときに会社を畳んで、俺は雇われのセコカンになったんだ。
あー、なんだか思い出してきたぞ。
資格持ってたからゼネコン入ってセコカンしてたら、確か現場でー……。
絶対にロクな死に方してねーじゃん、思い出すのやめとこ。
それで何の因果か知らないが、なんと今世の親父も大工だった。
また大工になるのかな?なるんだろうなーと思っているのが四歳になった今だ。
四十代のおっさんが四歳になって一番驚いたのが体の軽さ。
めっちゃ軽い!びっくりした。思わずジャンプしてみたら軽く二メートルくらい跳んだ。
跳びすぎじゃね?
何なの体?この世界はこんなもんなの?
「バン!ちょっとこっちにこい!」
親父に呼ばれた。
そうだ、俺の名前は『バン』だった。
ちなみに親父は『アルト』でお袋は『ミラ』だ。車かよって今さら思った。
「何、お父さん」
俺は子供っぽく親父のもとへ走っていったら、いきなり頭を叩かれた。
「痛ぇ!」
親父が叫んだ。
え?何で?俺全然痛くないんだけど。
親父めっちゃ痛がってる。
「いつも言ってるだろう!目立つことはするなと」
親父はちょっと涙目になりつつ怒鳴ってる。
何なんだよこれー、でもしかたないから謝っとくか。
「ごめんなさい、お父さん。楽しくなっちゃって」
子どもっぽいかな?ちょっとわざとらしいか?
そんなことを考えていたら親父が頭を撫でてきた。
「いきなり怒って悪かったな」
しんみりと俺の顔を見つめてくる。
え?ナニコレ?なんかフラグたてそうでめっちゃ怖いんだけど。
「お前も、もう四歳か」
やばいって、なんかわからんけど絶対にフラグだって。
「夕食の後、話があるから起きていなさい」
それ絶対にフラグ!親父死ぬな!やめてーもうちょっと養ってー!
俺は嘆きに嘆いた。
夕食は、いつも通りの質素なスープと、硬い黒パンだった。
親父は黙々と食べ、お袋は俺の頭を軽く撫でながら「よく食べなさい」と優しく言った。
俺は子供らしい笑顔を作りつつ、内心で深呼吸を繰り返していた。
フラグだ。絶対にフラグだ。
四十代のオッサンが四歳児の体で、こんな展開に巻き込まれるなんて……。
前世でも現場で「危ないぞ」って言われた瞬間に何かが落ちてきた気がするし、今度こそ穏やかに生きたいんだが。
食事が終わり、お袋が妹を寝かしつけると、ついにその時が来てしまった。
流石に緊張するわ。
前世が四十代でも今は四歳ボディーなんだもの。
「バン、お前に伝えておくことがある」
ヤバイ。
かなりド定番なの来ちゃった。
1.お前は私たちの子じゃない
2.お前は伝説の勇者の血を引く
3.いつから現実だと錯覚していた?
こんな感じ?
どうしようめっちゃ緊張する。俺このボディーにめっちゃ影響受けてない?なんか子供っぽくなってる気がする。
そして親父は口を開いた。
「お前は俺の子じゃない。ミラ、母さんとお貴族様の子だ」
あれー?ちょっと角度ずらしてきたな。
え?お袋浮気したの?
そう思ってお袋の顔を見るとちょっとドヤ顔してるし。
親父もお袋見てうっとりしてるし、ほんと何なの。
「お父さん、お母さん、それはどういうことなの」
いきなり子供にする話じゃねーだろって思いを子供っぽくぶつけてみた。
「バン、よく聞いてね?私はお父さんと結婚した後にお貴族様に見初められてあなたを生んだの」
だから四歳児にする話じゃねーって。
僕どんな顔したらいいかわからないの。
「だからね、バン。あなたは魔力持ちなのよ」
へ?
なんか路線変わった?
魔力って魔法使える系のやつ?急にファンタジー味強くない?
「僕、魔法が使えるの?」
剣と魔法の世界かーと俺は勝手に納得してした。
しかし、次の一言で裏切られた。
「使えないわ。教えてくれる人がいないから……」
「でもね!魔法が使えなくても魔力持ちだというだけですごいの!」
「私たちとは比べものにならないくらい力も強いし、滅多に病気にもならないの!」
落とした後にあげられた気分。
魔法使い(物理)ってこと?ピーキーすぎないその設定?
「魔力持ちについてもっと教えて?」
頭に?が浮かびまくった俺はとりあえず最初の疑問について聞いてみることにした。
そして、なんとなくわかった。
ほんとなんとなく、うっすらとわかった。
親父とお袋の話を総合すると、お貴族様は『大魔法使い』なんだ。
それで、大魔法使いとお袋のような平民の間に子供が生まれると、ちょっと力を受けついだ『小魔法使い』が生まれるってわけ。
そうかー俺は小魔法使いなのかーとちょっと落ち込んだらめっちゃ謝られてビビった。
何でも小魔法使いですら平民三十人じゃ足りないほどの力があるんだって。
こわっ。なにそれ。
それじゃ大魔法使いはどうなんだって、ぼそっと呟いたら親父が教えてくれた。
「俺が戦争に行ったとき、そこで初めてお貴族様の魔法を見た。キラキラと光ったと思ったら、あたり一面が青い業火に包まれて数万の敵兵が焼き尽くされたんだ」
その光景を見て俺たちの部隊はみんなお貴族様の力にビビったもんだ。
親父はそう語った。
なにそれ、貴族こわっ。
レベチ過ぎない?
俺が狼狽えていると親父が急に真面目な顔になり俺の肩をがしっと掴んだ。
「ここからが大事な話だ」
まだあるの?ぼくちゃんもうおなかいっぱいだよーという嘆きを無視して親父は語りだした。
「お前は魔力持ちだ、だがお貴族様には遠く及ばない」
だがな、と続く
「平民もお前のような魔力持ちには遠く及ばないんだ」
親父の目はいたく真面目だった。
「例えばお前が遊びのつもりで叩いても、平民なら良くて大けが、大抵は致命傷だ」
何度目かになる、なにそれ、こっわ、だ。
だから親父に叩かれたのに、俺は無傷で親父は怪我してたのか。
「難しい話かもしれない。だが聡明なお前ならきっとわかるはずだ」
流石にわかります。それなりに社会人やってたんで。
とは言えなかったので、
「わかったよ、これからは気を付けるようにする」
俺がそう言ったら親父もお袋も、ほっと胸をなでおろした。