エルオ大陸の転生者   作:kasyo

13 / 13
おべんきょうのじかん

若様との衝撃の歓談が終わったらすぐにお勉強の時間が始まってしまった。

何でも貴族デビューをするための知識をぶち込まれるのだそうだ。

 

ちょっと憂鬱。

何でかなー俺は大工と木こりをしてるだけで十分だったんだけど……。

 

最初は騎士さんの授業だったんだけど、その初めからあっけにとられた。

 

今まではちょっと怖いというかあんまり近寄りたくない雰囲気だったんだけど、それが百八十度変わったんだよね。

もう完全な味方ポジションというか、忠義の臣って感じになっていて、貴族ってこういうことなのかと思ったよ。

 

それで最初に教えてもらったのは『貴族』とは何かということだった。

まぁ当たり前といえば当たり前なスタートだ。

 

簡単に言ってしまえば、貴族とは襲い掛かる成熟魔獣から大地を守るスーパーヒーローだった。

魔獣が暴れれば大地が汚染されて、人が住めなくなってしまう。これは俺も魔獣を見たことがあるからわかった。

 

それでここからがポイントだ。爆弾もない、ミサイルもないこの世界で、魔獣から大地を守り生きていくにはどうすればいいのか。

そう、スーパーヒーローに頼るしかないんだ。

 

俺はなんとなく勘違いしてたけど、この世界の貴族は、「強くて偉い」んじゃなくて「強いから偉い」なんだ。

それが分かって、今までモヤモヤしていた部分がすっきりした気分。

 

強いから偉いなら、弱いなら?

魔力持ちを平民がやたらと持ち上げる理由が分かった。モヤモヤが一つ消えて新しいモヤモヤが生まれた気分だ。

 

そして貴族と騎士についても教わった。

これに関しては俺の知っていることと全く違っていて、へーっと思ったね。

 

村では鎧着ていて従祖の人をみんな騎士様と呼んでいたみたいだけど、どうやら違うらしい。

貴族にはいくつか仕える騎士家というのがあって、その家のトップだけを騎士と呼ぶんだそうだ。

 

それから言葉の端々から感じたのが、自分の力は自分の物ではないといった感じのニュアンス。

あくまでも力を預けてもらっているというような言い様だった。

 

俺は魔力持ちは強いと思うんだけど、この世界では魔力無しは弱いといった感じに思える。

これも貴族とは、というところから始まってるからなんだろうな。

 

一通りの講義を受けて、今日は終わりということになった。

貴族の話ではあったのだけれど、この世界の成り立ちというか根っこの部分を聞かされたようで、けっこうヘビーだったかも。

 

俺が部屋に帰ると、カリーナとコロナが迎えてくれた。

今日あったことと、これからのことについてどう話そうかと思ってたけど、もうテッシュさんが説明してくれていたみたい。

 

今までの家族が変わってしまうんじゃないかと思って不安なところがあったけど、別に今まで通りでいいらしい。

ただ、家族の部屋の中では今まで通りでいいけど、貴族の仕事をするときには公私を分けるようにとは言われたそうだ。

 

まぁその辺りは仕方がないか。

それでも今まで通り家族で暮らせるんだし、その辺は割り切っていこうと思う。

 

「ねぇバンさん。私大丈夫かな?バンさんみたいに頭がよくないし……」

 

それから明日からはカリーナにもメイドさんがついて、これからの生活について色々教えてもらえるらしい。

でもカリーナ本人は読み書きが達者じゃないと思っていて、村の外のことすら殆ど知らないので心配みたいだ。

 

まぁ俺も前世の記憶が無かったらそうとう慌てていたと思う。

うちの人たちは仕事でけっこういろんな街に行ったりしてるけど、村人の殆どは生まれた村を出たことないなんてざらにいるしな。

 

「大丈夫だよ。俺も一緒に頑張るし、それに家族で暮らせるんだ」

 

正直言えば俺も不安だ。

貴族になるなんてこの世界に生まれてから一回も考えたことすらなかったし。

 

でもコロナのためにも、これから生まれてくる子供のためにも頑張らないといけない。

 

思えば何も知らずにこの世界に生まれて、何とかやって来たんだ!

やってやるぞ!と俺は気合を入れた。

 


 

「案外あっさりと受け入れたものだな」

 

俺は文官から差し出されたバンについての様子が書かれた木簡を捲った。

そこには日々の様子や言動について記されている、俺が読んだら清書されニューネリーに送られるのだろう。

 

「ご理解が早く、私共としても助かっております」

 

バンに関してはインスタント貴族養成講座が連日開催されているのだが、なかなか優秀な成績を納めているらしい。

マナー講師による対面レッスンのようなこともしているそうだが、短時間ならそれなりに取り繕うことが出来る程度にはなっているので、大したもんだと思う。

 

「父様の前に出しても問題はなさそうだな」

 

「はい。それについては問題ないと思われます。バン様は不用意な発言をする御方でもありませんので」

 

何とも含みのある言い方である。

バンに対してのものだろうか、それともたまに意味の分からないこと言い出す俺の事だろうか。

 

「他には何かあるか?」

 

「奥様に執着気味なところが気がかりではあります」

 

あぁ、なるほど。俺から見ればいたって仲睦まじい夫婦といったところだが、使用人たちから見れば気になるところだろう。

貴族となるならば主祖の嫁を貰い、主祖の跡継ぎを産んでもらわねばならない。

本来、祝福の子は性欲旺盛で、あっちにこっちに種をばら撒いて従祖ラッシュとなるのだが、側につけたメイドに手を出さないところを見て気をもんでいるのだろう。

 

「そのあたりの事情も教えているのだろう?」

 

「バン様にはまだ。今は上級使用人より奥様への教育を致しております」

 

随分と過保護なことではあるが、男性貴族の性の繊細さを考えれば致し方なしといったところか。

ましてや元平民なのだからそのあたりの意識の切り替えはきちんと済ませておく必要がある。

他のオンナを抱いたバンに対して嫌悪感を抱くようではマズイのだ。それでバンのアレが萎えてしまっては貴族家創設案がポッシャってしまう。

貴族家にとっては、チンコ勃たずして家は立たずなのだ。

 

「父様はいつ頃いらっしゃるのだ?」

 

「当初の予定が変わりましたので、恐らく一週間後になるかと思われます。大旦那様には出立の報せがあり次第お伝えいたします」

 

そう、何とびっくりお爺様もバンのことを見に来るのだそうだ。

この辺りの事情はバンが現れたことで大きく変わった。

 

本来は俺がお爺様のいるアルデュケ要塞まで向かうはずだったのだが、突如現れた祝福の子により延期となっていた。

 

それからなんやかんやで、父様がバンを見に来るということになっていたのだが、それだけのために当主を動かすわけにもいかない。

そのため、アルデュケ要塞の視察のために向かう道すがらナンボナンに立ち寄り、バンをチラ見するという予定がでっち上げられた。

 

だが、それも変更になった。

 

お爺様がバンを見てみたいと言い出したのだ。何で急にと思ったが孫の顔が見たいおじいちゃん心理でもあったのだろうか。

そういうことで、急遽ナンボナンでクオルデンツェのトップスリーがそろい踏みの会談が開催されることとなった。バンはあくまでおまけだ。

 

変更に変更が重なり、バンの相手までしなくてはならない文官連中の苦労はお察しである。

 

「バンが現れてからお前たちは休む暇もないな」

 

俺は思わず笑ってしまったが、彼らにとっては笑い事ではないだろう。

文官も武官も使用人たちもひっくるめて、バンが現れてからというもの文字通り休みなく働いている。

さらにバンの貴族化が決まってからというもの、彼らの仕事量は増すばかりである。俺の脳内にふと過労死というワードが浮かんだ。

 

「この身に余る大役に携われることは大変な幸運です」

 

予想に反して文官の一人は目を輝かせていた。

どういうことかとあたりを見渡すと護衛の武官や使用人たちの中にも目を輝かせている者がいた。

どうやら彼らは新しく創家される貴族家に携わる者たちらしい。

 

まぁ貴族家の創家などまず経験することなどない。クオルデンツェ家のように伝統でガッチリ囲まれたところよりも、新しい家の立ち上げにかかわった方がよいと考える者もいるのだろう。

大企業よりも新しいスタートアップを選ぶような心理といえばよいだろうか。

 

「まぁ何よりまずはバンを父様とお爺様の前に出せるようにしなければな」

 

「承知しております」

 

そう言って彼らは目を輝かせた。

明日からのレッスンは今までよりも一段とレベルアップしたものになるであろうが、バンには頑張ってもらいたいものだ。

キラキラと目を輝かせる彼らを見て、ふと俺の脳内にはやりがい搾取という言葉が浮かんだ

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

剛腕転生~気合いと根性で殴り倒します~(作者:ラリゴラリゴラリゴ)(原作:無職転生)

自分の我を通した結果、壮絶な最期を迎えた少年は気付けば異世界の戦場に放り出された幼子となっていた。▼前世で磨かれた喧嘩殺法と、異世界に来たことで獲得したチート染みたスペックをもって彼は世界を生きていく


総合評価:2040/評価:8.75/連載:7話/更新日時:2026年10月10日(土) 19:00 小説情報

選択内容全部S(作者:青林)(原作:オーバーロード)

「あなたの分身がオーバーロード世界にいたら」の六つの選択内容が全部Sの主人公を妄想した二次創作。▼作中の設定や諸々に妄想が入ってるので苦手な方はブラウザバック推奨です。▼「あなたの分身がオーバーロード世界にいたら」▼https://overlord-anime.com/_season4/10th-anniv/▼タグ追加 9/5


総合評価:3912/評価:8.65/連載:3話/更新日時:2026年09月07日(月) 06:36 小説情報

北神三世の兄-弟に勝つため本気出す-(作者:ドゥンピドゥンピ)(原作:無職転生)

北神カールマンの孫であり転生者でもある、北帝アルフレッド・カールマン・ライバック。▼自信家で傲慢で調子乗りだが憎めない弟であるアレクサンダーと対等な存在になるため、彼は剣術修行の旅に出る。▼しかし、彼は致命的な程に鈍感で、朴念仁だった。


総合評価:8189/評価:8.82/連載:16話/更新日時:2026年10月19日(月) 16:25 小説情報

甲子園優勝投手村田、ドラ1で燕へ(作者:ドンクライ(泣くのはおよし))(オリジナル:現代/スポーツ)

 久し振りにパワ◯ロやった記念▼ 要は架空選手の無双系スレです▼ 小説というほどのものではありません。スナック感覚でどうぞ。▼ 10月19日最新話のアンケート更新、現在決戦投票中。


総合評価:4408/評価:8.16/短編:15話/更新日時:2026年10月19日(月) 12:56 小説情報

転生しました、主人公でした。(作者:道化の作家)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

 転生先が我らが主人公(ベル・クラネル)だったので、それまでは異世界ライフを楽しもうと思っていたが急遽予定変更し、世界を救う為の『英雄RTA』を開始することになっちゃった可哀想なベル君(転生者)。▼ 早熟スキルのかわりに伯母さ…ゲフンゲフンっ?!、お義母さんよろしく才能の権化と剣の才覚と偉業&精霊誘引体質をゲッチュしちゃったベル君は原作知識を活かして…


総合評価:4481/評価:8.57/連載:4話/更新日時:2026年10月15日(木) 07:02 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>