「バン、今日から仕事を手伝ってくれないか」
衝撃の真実を知った次の日、今日は何して遊ぼうかなーとプラプラしていた俺は親父に呼び出された。
まぁそうだよねーこんな中世っぽい世界なら子供でも立派な労働力ですよね、はい。
まぁ前世の俺の爺さんも子供の頃に奉公に出されたって言ってたし、俺もなんだかんだ馴染んでいたのかそれほど抵抗はなかった。
こんな子供だし、作業場の掃除くらいだろーと思っていたら、面食らった。
「バン、これを運んでくれ」
親父が指した場所には丸太の山。
え?これを?四歳児に?
「あぁ、お前なら大丈夫だ」
親父はそう言うと他の弟子の元へ向かってしまった。
えぇ……こんなの絶対無理でしょ……。
それでも俺はとりあえず丸太の一本に手をかけてみた。
それは大人でも手を回せないほどの太さで、長さは大人の背の倍ほどもある、ほんとに丸太っていう丸太だった。
「こんなの絶対無理だろ……」
それでも一応、力を入れてみる。
その時、体に妙な感覚が走った。
こう、何というか、体の中にある塊が急に溶け出していくような?風船が破裂したような?
とにかく自分でもよくわからない感覚だった。
すると。
ずずっと言う音と共に丸太が動き、持ち上げてしまった。
感覚としてはキュウリ一本持ち上げる感じだ。
「えぇ……」
思わず声が出てしまった。
そして、
「なるほど……こういうことか……」
親父とお袋が魔力持ちは凄いすごいと持ち上げるわけだ。
俺は納得した。
つまり、俺みたいな魔力持ちは前世で言うとこの『重機』みたいなもんだ。
荷物を持ち上げる『クレーン』みたいに使う事が出来るし、まだやったことはないが穴を掘れたぶん『バックホー』になるんだろう。
「魔力持ち便利すぎるだろ……」
そりゃ喜ばれるわけだ。
お貴族様の子供を産んだお袋がドヤ顔していた理由もわかった。
親父も喜んだだろうな、この仕事に便利すぎるだろ、俺。
とりあえず丸太の山を言われた場所まで持っていく。
何人かがぎょっとした目でこちらをみていたが、俺の顔を見ると納得したように去っていく。
「父さん、終わったよ」
「おぉ!流石だな!」
親父は驚くというわけでもなく、頭を撫でて褒めてくれた。
「前までは魔力持ちのお爺さんに頼んでいたんだが、もう年で魔力が出ないと引退してしまってな」
「え?お爺さんになると魔力がなくなるの?」
衝撃の真実である。
「父さんもよくわからんが、魔力が出たり出なかったりするんだそうだ。バンの今日の仕事はもう終わりだ!遊びに行ってきていいぞ」
まぁそれはそうか。自分で使っていても、考えるな感じろ!って感じなんだし魔力がないならそんなもんかな。
「それじゃあ、遊びに行ってくるよ!」
そう言っていつも遊んでいる山に向かった。
改めて思ったけど魔力ってすげーな。
今まで山を走ったりしても全然疲れないのを当たり前だと思ってたけど、これ魔力のおかげだったのか。
そして、俺はひらめいた。
さっき丸太を持ち上げた時の、あの不思議な感覚が魔法なんじゃないか?って事に。
いわゆる『パワーアップ魔法』みたいなものを発動したんじゃないか。
俺は足元に落ちていた石を掴むと、力を込めた。するとさっき感じた不思議な感覚が沸き起こり、石が砕けた。
これだ!これが魔法なんだ!
四十過ぎたおっさんが何そこまで喜んでんだ、と自分でも思ったが、とにかく嬉しかった。
俺は何個も何個も石を握り潰した。
魔力を使えば使うほど、その不思議な感覚が体に馴染んでゆく。
小魔法使いなんて地味だなーと思ってごめんなさい。これめっちゃすげーわ。
お袋に感謝。いやお袋を選んでくれたお貴族様に感謝かな?
……これ以上はなんか生々しいから考えるのやめとこ。
そこで俺ははたと気づいた。
お袋は「教えてくれる人がいない」から魔法が使えないと言っていた。
それなら、教えてくれる人がいたら?例えば親父がさっき言っていた、魔力持ちの爺さんとか。
それに気づいた瞬間に、俺は親父の作業場に向かって走り出した。
今まで気にしてなかったけど、走る時にもさっきの感覚をはっきり感じる。
ところで今六十キロくらいの速度で走ってる気がする。めっちゃ速い。
あっという間に作業場に着くと親父に尋ねた。
「父さん、さっき言っていた魔力持ちのお爺さんは何処に住んでるの?」
「ん?どうした?遊びに行ったんじゃなかったのか?爺さんの家を聞いてどうするんだ?」
「お爺さんに魔法を教えてもらおうとおもって!」
俺はそう聞いたんだが、親父はえらく渋い顔をした。
え?これなんか聞いちゃいけない系のワードだったの?と内心ちょっと慌てたが、そういう事でも無かったらしい。
「爺さんは村外れの、ちょっと大きい家に住んでるぞ」
あれだ、アレ。
親父が言う家に俺は心当たりがあった。たしかにデカい家だった気がする。
「でもな、爺さんは魔力が出なくなってから、戦争の古傷が痛むとかでほとんど寝てるぞ」
わーお。
これは期待薄め?
でもしょうがないか、とりあえずダメ元で会ってみるかな。
そんな事を考えてたら親父がポツリと重要ワードを漏らした。
「お前が治癒魔法を使えたら、少しは話を聞けたかもしれないな」
はい。
ありがとうございます、治癒魔法ってのがあるんですね。
今のところどんな魔法かさっぱり分からないけど、これで分からないことが分かっただけで一歩前進!
「とりあえず会ってみるよ!父さんありがとう!」
「あぁ、爺さんによろしく言っといてくれ。あとこれ爺さんの好物だから持って行ってやってくれ」
親父は干し果物の袋をくれた。
これ、たまにしか食えないめっちゃ美味いやつじゃん。やっぱり魔力持ちは待遇いいんだなと思ったよ。
「うん、わかった!行って来ます!」
そして俺は爺さん家に向かって走り出した。