「オスローグ公、どうぞこちらに」
「あぁ、わかった」
今日はナンボナン市の郊外までピクニックに来ています。
キラキラとした日差しがめっちゃでっかい河には反射してなかなか風光明媚なところです。
「では、あちらに向けてお願いします」
俺は言われるがままに魔力を揺らす。
すると、紅蓮の炎が大地を覆った。
「お見事です」
「あぁ、無事に会得できたようだ」
うわー!すげぇ!
なにが、無事に会得できたようだ、だよ!というかヤバイ!何だこの威力!
軽い気持ち?で撃ったらすごいことになってるー!主祖ヤバすぎだろ!こんなの一人軍隊だろ!
自分の魔法の威力にビビりまくったわけだが、今日は新しく教わった魔法の試し打ちに来ています。
さっきまではピクニック気分だったけど、こんなん軍事演習だろ……。
いや、最初から軍事演習だったのか?護衛の武官さんはナンボナンの兵隊さんも連れてきてたし。
俺は魔法の試し打ちですーって言われて気軽にオッケー!って言っちゃったけどこんなことになるなんて……。
事の始まりはちょっと前。
俺はいつも通りお留守番気分で暮らしてたんだけど、ある日魔導士さんに言われたんだ。
「新しい魔法を伝授するよう仰せつかりました」と。
何時もフレンドリーな魔導士さんがやけに緊張しているなーと思ったんだけど、内容を聞いて察した。
なんでも攻撃魔法を教えてくれるらしい。
俺は正直ビビった。
今までは戦いに使うような魔法は教わってなかったからだ。
え、おれ戦争いくの?無理だって……そんなマインド無いって……。
ビビり倒した俺はちょろっとキャバリエに相談してみた。ほんのちょろっとね。
俺こんど攻撃魔法教わるみたいだわーマジ大変だわーくらいなノリで。
そしたらキャバリエがマジ泣きして、こっちがあわあわしてしまった。
落ち着いたころに話を聞いてみると、嬉し泣きだったらしい。
なんで?
ありがとう、とか。喜んでくれて嬉しいとかそんな言葉をかけていたら、ぽつりぽつりと語ってくれてようやく理解した。
おれ察し悪すぎだろ!主人公かよ!
「バン様は……」と言ったところで、もう言葉にならない感じだったんだけど、意味は伝わった。
まぁ簡単に言うと信頼されている、ということらしい。
よーく考えれば、いや、よーく考えなくてもそうに決まってるだろ……。
初めて会った奴に「これ引き金引けば撃てるから」って銃渡さないみたいなことだ。
少なくとも俺はそれなりの信頼を得られているみたいだな。
いや、銃どころじゃないな。歩く核弾頭?ちょっと昔の格闘家の二つ名みたいだけど、魔法の威力を知ってしまうと冗談とも言えない。
……俺よく生きてるな。
最初、若様の前に連れ出された時に、首を刎ねれば云々言われてビビったけど、今考えればものすごく寛大だったのかもしれない。
こんな爆弾みたいなのよく殺さないでくれたよ……。
……たぶん、俺みたいに祝福の子で生まれて……いや、深く考えるのはやめよう。
そういえばキャバリエは治癒魔法くらいしか使えないって言ってたな。
使用人さんに昔のことを聞いてみても「いずれ、キャバリエ様からお話になられる日が来ると思われます」とか言われたし。
それ、とびっきりヘビーなのが来るやつじゃ?
そんなこんなで、なんとなーく裏の事情を知ってしまった気がして気が少し重くなりました。ハイ。
「それでは、次の魔法を……」
そう武官さんが言ったところで俺の探知魔法に引っかかるものがあった。
主祖が一人に従祖がかなりの人数いるように感じた。
「あちらに主祖の反応を感じるが」
俺がそう言って指をさすと、武官さんは手を額に当てるような感じでそっちを見つめた。
ゆらっと魔力が動く感じがするので視力強化か何かの魔法を使ったんだろうな。
「どうやらガルフィス様のようです。オスローグ公、途中ではありますが……」
「あぁ、わかった」
そう言えば、ガルフィス様がニューネリーに行くからここに寄るかもって言ってたな。
行けたら行くくらいのニュアンスだと聞いたからちょっとびっくりだ。飲み会の誘いだったら絶対に来ないヤツだよね。
「ガルフィス様、お久しぶりです」
「あぁ、久しいな。バン」
久し振りにあったガルフィス様は随分とフレンドリーな感じだった。
俺の暮らしぶりとかが色々報告されているみたいなので、無害な奴認定されたのかな?
「この後、お茶でもいかがですか?」
見たところ走って来たみたいだしちょっと休憩を兼ねて誘ってみた。
隣にいる武官さんとか明らかに疲れてるし。お付きの人はやせ我慢してるけど、これはガルフィス様身体強化全開でここまで来たな。
俺も身体強化の練習で武官さんに掛けたことあるけど、急に魔法を切るとこんな感じになるんだ。
「ありがたい。だが、今は先を急いでいるゆえ、また今度頂こう」
「そうですか。道中のご安全をお祈りいたします」
武官さんご愁傷さまです。
ここからニューネリーまでまたダッシュだな。
「世話をかけて済まぬが、川の向こうの者たちを頼む」
「えぇ、わかりました」
要塞から連れてきた兵隊さんは河の向こうに置いてきたということだ。
何でも船が多くて渡れないからガルフィス様は小舟で一人渡って来たんだとか。
え?あの河向こう側見えないくらいあるよ?
「こちらの兵を借りてゆく。後は任せた」
そう言うとガルフィス様はさっさと行ってしまった。
兵隊さんたちがこっちに渡る時間も惜しいらしい。
それでナンボナンの兵隊さんを連れてニューネリーに行くみたいだ。
任せた、って軽く言われたけど、任せて大丈夫ですかね?
俺そのへんからポッと湧いた奴なんですけど……。
それにしても、そんなに急ぐことがあるのかな?
何かきな臭い感じ?あとでちょっと聞いてみようかなー。
とかゆっくり考えてたらガルフィス様帰って来た。
一泊二日くらいの弾丸ツアーだ。
もちろん、お茶を飲んでる暇もなくそのまま河を渡って行ってしまった。
今度はちゃんと船を避けておいたから兵隊さんも一緒に渡って行くことが出来たみたい。
ちらっと話を聞いたところ、レヴィオス王国に行った若様にトラブルがあったらしくて、急遽帰国したんだそうだ。
何でも王様が怪我したり、魔獣が出たりと大騒ぎだったらしい。それでガルフィス様も急遽ニューネリーまで様子を見に行ったんだとか。
若様は大丈夫だったのかちょっと心配したけど、魔獣を一体ぶち抜いてきたんだって。
すごすぎない?まぁあの魔力を考えるといけるかな?とも思うけど。
ニューネリーでも魔獣をぶち抜いたって武官さんが興奮しながら話してくれたし、若様なら余裕なのかも。
というか、俺もいずれは魔獣の相手するんだよね。魔獣から大地を守るのが貴族の義務みたいなこと言われたし。
……魔法はちゃんと覚えておこうと心に決めました。
いやーそれにしてもガルフィス様元気だよなー歳は八十を過ぎてるそうだけどエネルギッシュだ。
俺の前世のじいさんとか同じ年の頃は爺さんらしい爺さんだったのに。
魔力持ちはいつまでもわかくて良いなー。
しばらくそんな風に気楽に過ごしていた。
そうしたら。
「シュピアゼイクがライシュリーフまで押し戻してきました!」
そんな凶報が飛び込んできたんだ。
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次話が最終話となります。