この世界でも成人になりました。
まぁ何歳から大人というわけでもないらしいんだけど、この辺りでは大体この年で大人扱いらしい。
始めてフィールドに入ってからは、ほとんど毎日と言っていいくらいフィールドに入っていた。
魔獣狩って、木を切って、家で加工して、その繰り返し。
単調なようだけど、殆ど娯楽のない世界だと、ちょっとしたことが楽しく思えるから不思議だね。
えーと、それからですが、結婚することになりました。
わーお。
前世ではなんだかんだで縁遠かったので緊張してます。
お相手は近所に住んでるカリーナちゃん。かわいい子です。
小さいころは挨拶するくらいで遊んだりしなかったんだけど、ちょうど十歳のころカリーナちゃんは家に手伝いに来てたんだ。
最初は特に何も思わなかったんだけど、俺も体は十歳。大人の中でばかり暮してきたから、同い年のカリーナちゃんとよく遊ぶようになった。
そうしているうちに段々と仲良くなって、俺からカリーナちゃんの親父さんに挨拶したら一発OK。
これは無粋な話だけど断られるとは思ってなかった。魔力持ちだしね。これはカリーナちゃんには秘密。
それと、最初はちょっと離れた村の従祖の娘との婚姻話があったらしい。
どうしても魔力持ちが欲しいとはいえ、ちょっとあからさまな感じが強くて、ご破算になった時はほっとした。
これは聴力強化の練習をしていたときに偶然知ってしまったので、こっちは俺の中では墓までもっていく秘密になっている。
さて、肝心の結婚式だけど、これは村の広場でやるそうだ。
新郎新婦が村人の前で、結婚しますと挨拶をしてそれで終わり。うーん、何ともシンプル。
後はお互いの家から酒と食べ物を持ち寄って、村人全員でどんちゃん騒ぎという流れになっている。
そして、これからまさに結婚式。
目の前にはカリーナちゃんが立っている。村娘ドレスって感じですごくかわいい。
かわいいってことは緊張するわけで、俺の心臓は大変なことになっている。魔力持ちでもこれはなんともならんね。
「カリーナ、これからよろしくおねがいします」
「バンさん。こちらこそ、よろしくお願いします」
そうして俺たちは結婚した。
最初こそ俺たちを祝福する声に満ちていたが、村人の興味はすぐに食事に移った。
今日のためにフィールドで木こりと魔獣狩りに精を出した甲斐があったってもんだな。
テーブルの上には普段見ないような豪勢な食事に酒が並んでいる。
材木を出荷したついでに街で買いこんできてもらったんだ。
一応の主役席にカリーナちゃんと並んで座り、お酒に食事にと楽しんだ。
やばいなんかこみ上げてくるものがあるな、幸せだ。
「おい、バン!あんまり飲みすぎるなよ!こっちが出来なくなるぞ!」
兄弟子が下腹部にグーの手を置き、親指だけピーン!と伸ばした。
やめてよー精神的に緊張させるのやめてーほんとにできなくなっちゃう。
カリーナちゃん顔真っ赤だし。
「俺、お酒強いから大丈夫だよ」
そう言って笑ってみたが明らかに言葉のチョイスを間違った気がする。
「……私も、大丈夫です……」
カリーナちゃんもっと顔赤くなっちゃったし。
でも実際にお酒に強いのはホントだ。強いというか全く酔っぱらわない。
魔力もちは病気に強いというのは聞いたことあったけど、お酒にも強いのはなんでだろ?
そんなこんなで時間は過ぎて、宴もたけなわ。
御馳走はあらかた食べつくされて、余ったものはお持ち帰りされていく。
酒樽もほとんど空だ。たぶん村の消費量の一カ月分くらいあったのにどこに入ったんだ?
そのせいか広場には酒に負けた村人も転がってる。
兄弟子も転がっている、ざまぁ。
転がっている人たちは放っておいて、俺たちは自分たちの家へ帰ることにする。
自分で建てた、俺たちの家だ。
前世では結局自分の家を作る機会がなかったもので感慨深いね。
カリーナちゃんの手を引いてとぼとぼと新居へ向かう。
薄暗くなった空に満天の星が浮かんでる。ムードが無いことを言うけど空は星だらけだ。
この世界が独特なのか知らないけど毎日毎日星が変わってへんてこな夜空なんだ。
そんなことを考えながら歩いていたらもう新居に到着してしまった。
いやーどうしようなんて言えばいいんだこれ。
ええい!ままよ!と俺は言葉を絞り出した。
「ここが僕たちの家だよ」
「はい」
僕たちは言葉少なに、顔を赤くして新居へ入ったのだった。